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放送大学 教養学部
社会と産業コース

都市の持続的発展を規定する要因の分析
人口動態──自然増減と社会増減


都市の人口動態


 都市の持続的発展について,まずはその人口動態について確認しておきたい.下に示したのは,日本全国における自然増減の推移である.出生数から死亡数を引いた数が,自然増ないし自然減の数になる.日本の場合,2005年以降,自然減となり,人口減少社会に入っている.これに社会増減のデータも加えて,都市ごとに分析を行っていった.以下にその結果を示していく.


 まず,「拡大都市」の例として,東京都のデータを示しておく.自然増減については全国と同様の推移を示しているが,社会増減については,1985〜1995年のバブル期には転出が転入を上回り,それ以降はふたたび転入が多い社会増の傾向を示している.近年若干衰えているとはいえ,社会増が継続的な人口増を支えていることがわかる.


 これにたいして,「縮小都市」の例として沼津市のデータを示すと,以下のようになる.沼津市の場合,自然増減については全国と同様の推移を示しているが,つねに転出数が転入数を上回っているので,継続的に人口は縮小している


 次に「持続都市」の例として,京都市と高松市のデータを示しておく.確認できた年度が少ないこともあるが,自然増減も社会増減も非常に少ないことがわかる.


 さらに,非常に特徴的なのが,主に大都市近郊の郊外型都市に多い「停滞転化都市」である.典型的な推移を示している上尾市のデータを示しておく.バブル崩壊以前の1995年までは転入数が大きく上回り,人口が増加していた.その後の社会増の鈍化が人口の停滞をもたらしているが,自然増が2005年以降も維持されている点に,大都市近郊の人口再生産都市であったことがよく表れている.




都市ごとの人口動態が示す知見


 以上の分析結果から次のようなことがわかる.全国の都市の長期的な人口推移にもとづき,1.拡大都市,2.持続都市,3.停滞転化都市,4.縮小転化都市,5.縮小都市の5つの類型が得られたが,それぞれの人口動態について確認した結果,上で示したように,社会増によって人口が拡大している都市,社会減によって人口が縮小している都市,以前の社会増によって自然増を維持しつつも,人口が停滞してきている郊外都市の3つのゾーンが区分できる.これら3つのゾーンの合間に,社会増減も自然増減も少なく,人口を維持している都市が点在しているという,全国的な構図となっている.

 このような都市を中心にみた全国的な人口配置の実態は,三大都市圏をリニアで結んだ「スーパー・メガリージョン」によってグローバルな発展を牽引し,その他の地域は「コンパクト=ネットワーク」によって都市機能を集約し,地方創生によって人口再生産を実現するという政府の方針に,一見合致しているようにも見える.また,持続都市は地方中核都市として期待できるようにも思える.

 しかしながら,これまで人口の再生産に貢献してきた郊外都市も,人口が停滞してきており,やがて自然減に転換する可能性が高い.「スーパー・メガリージョン」として期待される大都市地域が,その近郊にまで人口を湧出させるだけの活力を維持できなくなっているのである.他方,持続都市も人口を維持しているのが精一杯というところだろう.

 次に,このような人口の移動が,どのようなタイミングで起こっているかを確認してみたい.

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