あの頃
(全39篇)
あの頃


あの頃、
すべてはローアンバーに染まっていた
空も
街も
人の顔も
すべてが陰鬱なローアンバーの色をしていた

疎ましかった
逃れたかった
あの苦しみから
あのローアンバーの街から

雑誌やテレビで見る
他の町の空気を羨み
いつもあの街を抜け出すことばかりを考えていた
あの街以外なら何処でもよかった

北なら北の
南なら南の
都会なら都会の
田舎なら田舎の
何かしらのメリハリがある

だが、あの街にはそんなものはなかった
北の寒さも
南の暖かさも
都会のきらびやかさも
田舎ののどかさも

あの頃、
すべては澱んでいた
映るもの、そのすべてが
ローアンバーのヴェールに包まれ
人も、空気も、私の心も
何もかもが澱んでいた
あの頃/その1(21篇)
あの頃/その2(18篇)
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