ズブさんの
アイデア天体
写真館

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解説 〜富士山とこぐま座〜

※  この解説を読む前に、「天体写真を見るための基礎知識」を読むことをお勧めします。

このホームページの「天文基礎講座?」の「天体写真を見るための基礎知識」で、

地上風景もちゃんと写っていて、星も点に写っている写真もあります。これらの多くは、高感度のフィルムを使っています。高感度のフィルムによって、短い露出時間で多くの星を写しているのです。しかし、高感度のフィルムは感度が良い代わりに画質が犠牲になっています。また、短いと言っても10秒〜2分程度の露出時間をかけているので、点に写っているようでも、よく見ると少しだけ星の軌跡が伸びていることが多いのです。

と書きました。しかし、それに反するような写真を、ある工夫によって撮ってみました。この写真は、 "地上風景もちゃんと写っていて、星も点に写り、それでいて画質の良さや写る星数なども極力犠牲にしない写真" を目指したものです。

「星も地上風景も "止まっている" 写真を、少しでも良い画質で撮りたい」という考えから思いついた写真です。天文年鑑などで天体写真に関する資料を見ると、「固定撮影で星を点像に写せる露出時間」というものが載っています。これは、星の写真を固定撮影で撮った場合に、日周運動による星の軌跡が気にならないようにするにはこの時間以下の短時間露光であればよい、というものです。しかし、なんとかこの時間よりも長く露光をかけられないものかと考えました。そして思いついたのが、赤道儀の回転を遅くして撮影するという方法です。例えば、赤道儀の回転速度を通常の半分にすれば、星も地上風景も、軌跡が気になる露出時間を倍に伸ばすことができます。
  実際には、風景の方がブレが気になりにくい点を考慮して、恒星時駆動の65%程度の回転にしました。

このような方法を思いついたとしても、露出時間をいくらでも長くできるわけではありません。そこで、実際の撮影ではいろいろな要素のバランスを考えました。高感度フィルムを使うと画質が犠牲になってしまいますが、フィルムの感度を下げると写る星数が減ってしまいます。明るいF値で撮影すると収差が目立って星の像が悪くなります。露光時間を延ばすと星の軌跡や地上風景の "流れ" が気になります。これらのバランスが取れているポイント(妥協点とも言えますが)をさぐるためにも、さまざまな条件を変えてたくさん撮影しました。E200の増感特性の良さもあって、当初期待していたより良い写りの写真が得られました。

さらにこの写真は、「せっかく星も風景も止まって写るのなら、見た目に近い雰囲気を出したい」という考えもあって、星を“にじませる”フィルターを使いました。明るい星をにじませることにより、星座を目立たせたのです。今回使ったのは、コッキンというメーカーのディフュージョンフィルターです。