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British Rock or Psyche Pop etc...
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PORTRAIT PORTRAIT / THE WALKER BROTHERS

 1966年発表された2枚目のオリジナルアルバム。ヒット曲「THE SUN AIN'T GONNA SHINE ANYMORE」などシングル曲やJOHN WALKERのソロEPの曲など大量のボーナス・トラックを含んだお徳盤。

 アメリカ出身3人組だし、選曲やアレンジ、歌い方はまるでタキシード着てもみあげの伸びた大袈裟に歌うマダム向けスタンダード歌手のようだが、SCOTT WALKERが歌うと途端にヨーロピアンでゴシックで漆黒な美意識も感じさせます。SOFT ROCKのページに置こうかと悩みましたが、その後ジャック・ブレルの世界に行ったり、80年代UKのミュージシャンにまで影響を与えたり、との事から、やはりこちらにしました。

 時折ジャジーなアレンジを混ぜつつ、フィル・スペクター風の重厚なサウンドが展開されているが、SCOTT WALKERの低い声とは実に相性が良い。「HURTING EACH OTHER」「LIVING ABOVE YOUR HEAD」など。個人的にこの声には、シャープ・ファイブ時代の安岡力也を思いだしてしまいました。

 再結成ツアーやそのライブアルバムを出させる程に当時日本で人気があったが、「ミュージック・ライフ」誌での扱いは冷たかったとか、それは彼等がチビだったため、当時の編集長(女性)の好みにあわなかったから、との噂あり。(2004/01/18)



WALRUS WALRUS

 1970年にDERAMレーベルから出た彼ら唯一のアルバム。昔からジャケが気になっていた一枚でしたが、紙ジャケ化にあわせて?、安いプラケース輸入盤を購入。ジャケのイラストはあのMELLOW CANDLEのと同じ人によるものとのこと。

 楽器編成から、よく英国産ブラス・ロックの一つに数えられ、BS&Tをまねた様にTRAFFICの「COLOURED RAIN」を取り上げてますが、ハード・ロックおよびプログレ風味が濃厚。搾り出すようなボーカルやハモンド、歪んだギターなどはハード・ロック要素。うねりのあるフレーズを連発する手数の多いベースは見事。プロデュースが同じDAVID HITCOCKのためか、メドレー曲のアレンジはCARAVANやGENESISの組曲のよう。先の「COLOURED RAIN」のみはジャズ・ロックなアプローチ、等と、いくつかの切り口で聴きこめる一枚。(2009/03/01)



WAYNE ONE + BONUS TRACKS WAYNE ONE + BONUS TRACKS / WAYNE FONTANA

 WAYNE FONTANA & THE MINDBENDERSから独立後に1966年発表したソロ。これは2004年にBGOからでたリイシューで、シングル曲22曲入りのボーナスディスク付。

 アルバム本編は、いきなりジョージ・ガーシュインの作品から始まるし、バカラック作品やライチャス・ブラザーズ風楽曲も。ビッグ・バンド風の演奏、ゴージャスで厚いアレンジメントを配した、当時の保守王道的な堂々たるポピュラー・アルバム、といった印象です。ロック色は希薄ですがあえて言えば、コテコテなバックの演奏と、彼の下手ではないが完全に歌いきっているわけでもない歌唱との微妙な落差と組み合わせが、(強いて言えば)ロックぽいかもしれません。

 ボーナスディスクの方ですが、本編より収録時間が倍以上あったりします。「WAYNE ONE」収録曲を除きシングルAB面の曲を発表順に並べてますが、これだけでも単独CDとして出せたと思うほどお得感があります。本編アルバムのアウトテイクのような「GOODBYE BLUEBIRD」から始まりますが、まずはGRAHAM GOULDMANが書き下ろした「PAMELA PAMELA」「THE IMPOSSIBLE YEARS」がやはり耳を引く。BEATLESの「HERE, THERE AND EVERYWHERE」に似た「24 SYCAMORE」、GRAHAM GOULDMAN作品にも似た「WE ALL LOVE THE HUMAN RACE」、構成に凝った壮大に盛り上がる「THE WORDS OF BARTHOLOMEW」あたりが佳曲。

 ボーナスディスクの最後の1/3ほどはソフト・ロック作品集としても聴けます。それまでよりも軽快な曲が多くなり、「SAY GOODBYE TO YESTERDAY」はCARTER=LEWIS作品だし、「NEVER AN EVERYDAY THING」「WE'RE BUILDING A LOVE」はCOOK=GREENAWAY風、「GIVE ME JUST A LITTLE MORE TIME」はTONY MACAULAY風。その中ではコミカルな部分とマイナーな部分が入り混じる「CHARLIE CASS」やRANDY NEWMANの「DAYTON OHIO 1903」が異色。(2005/02/13)



LOOKING BACK LOOKING BACK - THE PYE ANTHOLOGY / WEST COAST CONSORTIUM

 CONSORTIMとして「ALL THE LOVE IN THE WORLD」の英ヒットを持つグループ。RIPPLESシリーズなどのPYE音源コンピ盤の常連でもある彼等、待望の単独CD化。アルバムを出さなかったグループなので、ここでまとめて聴けるようになったのも便利。

 収録されたのはWEST COAST CONSORTIUMのシングル2枚分とROBBIE名義で出したシングル1枚分とCONSORTIUMになってからのシングル5枚分に1968年頃のデモ11曲を収めたもの。PYEだけでなくTRENDというレーベルから出た最初のシングル曲まで収めている。TRENDからの2枚目にして最終シングル「ANNABELLA / TELL ME MY FRIEND」が未収録なのは残念。

 WEST COAST CONSORTIUMの最初のシングル、「SOME OTHER SOMEDAY」「LOOKING BACK」はともにフォーク・ロックの影もありながら、純朴ながらもメロトロンがフューチャーされているのが印象的。1967年前半らしい音です。「INDIGO SPRING」はROBBIE名義のシングル曲だが、ROBBIEとはリード・シンガーのファースト・ネーム。JEFFERSONやKEITHのようなフラワーなポップ・シンガー路線をねらったのか。WEST COAST CONSORTIMに戻っての「COLOUR SERGEANT LILLYWHITE」は、いかにもサイケ・ポップらしいタイトルで、フランジャーだかフェイザーがかかったボーカルはいい雰囲気だが、曲の出来はいまいち。

 CONSORTIUMになってからはサイケ色は後退し、コーラスを生かしたハーモニー・ポップ。GEOFFREY SIMPSONというメンバーによる作曲が中心になり、質の高い楽曲を連発する。同じPYEのTONY HATCHほどの技巧は無いけれど、TONY MACAULAYの楽曲よりも歯切れ良さと瑞々しさを感じます。

 ヒットした「ALL THE LOVE IN THE WORLD」での泣きのメロディーは、彼等の全楽曲を聞くと異色とも思える。「WHEN THE DAY BREAKS」「THE DAY THE TRAIN NEVER COME」あたりはBEACH BOYSの影響も感じる。前者のコーダ部分のアレンジは「CALIFORNIA GIRLS」のようだし、後者は「GOOD VIBRATION」「HEROES AND VILLIANS」あたりと曲想が似ている。「BEGGAR MAN」「CYNTHIA SERENITY」はTONY MACAULAY的でもあり、最もソフト・ロック的。

 「I DON'T WANT HER ANYMORE」は「WHEN THE DAY BREAKS」路線。そのB面だった「THE HOUSE UPON HILL」は完成度では頂点とも思えます。重ねすぎたせいか、音質がいまいちだけど、ひんやりと麗しいメロディーとコーラス、ストリングス中心ながら「PET SOUND」をも思わせる凝ったアレンジ。TRENDからの「MELANIE CRIES ALONE」はややAORがかっているものの以前と同路線だが、「COPPER COLOURED YEARS」はまるで哀愁のカレッジ・フォークというような曲で意外。

 11曲入っているデモはすべてGEOFFREY SIMPSONの作。まだWEST COAST CONSORTIUMだった時期のもののようで、本CDのアーティスト表記がCONSORTIUMではないのも、そのせいか。メロトロンが響く「AMANDA JANE」「ONCE UPON A TIME」、後にシングル曲に使用される「ONE DAY THE TRAIN NEVER COME」あたりが印象的。「TO PLEASE LOUISE」「CINDY IN LOVE」「WILLOW WOOD」「SOLDIERS IN THE RAIN」あたりはアレンジやミキシングを練れば良くなったであろう曲。(2003/09/07)



MR. UMBRELLA MAN MR. UMBRELLA MAN / WEST COAST CONSORTIUM

 ハーモニー・ポップ寄りながらもサイケ・ポップ界の重要グループ。a collection of demos 1967-1969と副題されたデモ集。5曲ほど2003年に出た「LOOKING BACK」とダブるが、全27曲78分をたっぷり収録。名義はWEST COAST CONSORTIUMとなっていますがCONSORTIUM改名後の録音もあるようです。

 ベーシストのJOHN BARKERの実家で録ったという、すべてGEOFF SIMPSON作による曲。デモながら、彼らお得意のFOUR SEASONSばりのコーラスがふんだんに入り、時にメロトロンも使っており、音的な不足感はさほどありません。ホームデモということもあり、BEACH BOYSの「SMILEY SMILE」「FRIENDS」みたいな曲も幾つかあります。

 その後シングルになった曲も多く収録されていますが、レコードのバージョンよりもオブスキュアでメランコリックな感触が、サイケ・ポップ好事家にはアピールになっています。もちろん、先に「LOOKING BACK」収録曲を聴いて、気に入った人が聴くべき作品集ではあります。

 ライナーを見ると、ここにも収録されていないデモ曲があり、少々気になります。(2008/05/05)



LOVE IS... LOVE IS... / WESTWIND

 青いジャケットが印象的な、男2人女1人のトリオによる唯一のアルバム。1970年の作品。蒐集家好みの稀覯盤のひとつでしたが、このたびCD化されました。

 実物を聴いてみると驚くほどオーソドックスで品の良いフォーク。トラッド臭さ、アシッドさや泥臭さは無し。エレキ楽器も使用していない模様。大げさなアレンジもなく、曲によってオーボエとかストリングス、ホーンとかが入ってるが控えめ。主役はあくまでもアコギと3人の歌という純フォーク作品。

 ついでながら曲名も「GOODBYE BUTTERFLY」「SUN ACROSS THE SNOW」「HOW MANY STARS」「FISHERMAN SONG」「ROSEMARY」「HARBOUR LIGHTS」などとイメージをかき立てるタイトルです。

 聴きどころは、物憂げな2曲目「SLEEPY CITY」。叙情的で美しい6曲目「ROBIN HILL」。珍しくアップテンポな7曲目「GOODTIMES」。ミュージックホール調なメロディーを持つ9曲目「SWEENEY TODD」。室内楽的なバックの最後の曲らしいドラマチックな12曲目「HOME IS WHERE MY HEART IS」。

 また、3曲目「LOVE IS A FUNNY SORT OF THING」は「シャボン玉の恋」という邦題で当時日本盤シングルも出ていたというのが驚き。とにかく上品で暖くて、それなりにイギリス的な陰影を感じさせるフォークアルバム。(2001/07/22)



WIL MALONE WIL MALONE

 ORANGE BICYCLEのKey担当が1970年に発表した唯一のソロ・アルバム。サイケ・ポップの世界では、MORGAN BLUE TOWNスタジオ作品でよく名が出てくる重要人物であり、その後プロデューサー/アレンジャーとしてIRON MAIDENの1STをプロデュースしたり、THE VERVEのアレンジを担当するなど地道に長く英ロック界を支える1人。

 このアルバムはサイケ・ポップと同種のアレンジによる、ナイーヴなSSW作品という印象です。WIL MALONEの心情吐露するような、しゃがれ声のボーカルを、バンド・サウンドとは無縁な、優雅な室内楽やアコギや柔らかなピアノが何とも優しく包み込んでいる。アルバム中に傑出した曲や、起伏がさほど無いけれども、その代わり全編色調が「英国風」に見事に統一された作品群。この音空間に浸りこめる人にはドラッグのようなアルバムかもしれません。

 楽曲単位では、NICKY HOPKINSばりのリリカルなピアノが印象的な「I COULD WRITE A BOOK」、ANGEL PAVEMENTの「GREEN MELLO HILL」と同じような冒頭逆回転風ノイズがある「LOVE IN THE AFTERNOON」が印象的です。また、アルバム終盤、特に繊細な「ONE MORE FLIGHT TO PARKER」〜珍しくベースと遠くにドラムが聴こえる「AT THE SILVER SLIPPER」〜ピアノ弾き語りによる「HOW ABOUT THEM」でおしまい、という流れも良い。(2005/12/04)



THE WHO SELL OUT THE WHO SELL OUT / THE WHO

 1967年末に発表された彼らのサードであり、「TOMMY」のひとつ前に当たるアルバム。架空のラジオ局ジングルが挿入されたり、曲間が無かったりと、コンセプト風な作り。まるでKINKSのように、ユルいコンセプトアルバムながら聴きこめば愛聴盤になるようなクオリティがあると思います。個人的にはジングルが入る辺りは、コンピ盤シリーズ「CIRCUS DAYS」を思い出しました。

 ただ、有名曲は「I CAN SEE FOR MILES」ぐらいで、次作「TOMMY」の踊り場的な作品と取られるのか、世評はあまり高くないようです。確かに1967年後半に制作された作品の割には、サイケ的なアレンジがあまり感じられないし、彼らにしては地味とも思える内省的な楽曲が多い。

 そんな中では、1曲目「ARMENIA CITY IN THE SKY」は彼らにしては極めて珍しい、カバーでもオリジナルでもない外部ライターの作品。この曲だけは逆回転のボリューム奏法?らしきものが入る派手めな曲。また、アルバム最終曲「RAEL 1」のような「TOMMY」の前兆を探す楽しみがあるのが、このアルバムの特徴。(2006/07/23)



FUNNYSAD MUSIC FUNNYSAD MUSIC / THE WILSON MALONE VOICEBAND

 ORANGE BICYCLEのWIL MALONE(ここではWILSON MALONEとなってます)がTHE WILSON MALONE VOICEBAND名義で1968年に発表したというイージー・リスニング系のアルバム。モーガン・スタジオで録音され、本家モーガン・レーベルから出たとのこと。2006年に紙ジャケCD化されましたが、そのリイシュー会社のアナウンスがあるまで、こんなアルバムが存在すること自体知りませんでした。

 ブラス系、もしくはストリングス系の主旋律に、BEACH BOYS風ともいえなくもないコーラス・ハーモニーが乗っかる。曲構成は、オリジナルが7曲と過半数を占めますが、まあありきたりなムード音楽風、としか私には聴こえませんでした。タイトル通り、FUNNYSADな曲調が多いとは思いますが。

 それよりも有名アーティストのカバーが5曲あり、こちらのほうがアレンジに遊びを感じられて、聴いていて面白い。BEACH BOYSの初期の「FARMER'S DAUGHTER」は意外でしたが、あとはBEATLESの「PENNY LANE」、HERMAN'S HERMITS(というよりGRAHAM GOULDMAN作)の「NO MILK TODAY」、JEFF BECKがヒットさせた「HI-HO SILVER LIGHTNING」、BYRDSやMOVEもとりあげたGOFFIN=KING作の「GOING BACK」というサイケ・ポップな選曲で、どうせならば収録曲をすべてこの手のカバーにしてWIL MALONEのアレンジ術を聴きたかった。とも思ってしまいます。

 本盤はオリジナルジャケット仕様ですが、裏ジャケにある当時のアルバム広告「Ray Davies THE IN-KEEPERS MR109P」というのが気になります。KINKSのRAY DAVIESと何か関連があるのでしょうか。(2006/05/07)



THE STORY 1963-1968 THE STORY 1963-1968 / WIMPLE WINCH

 公式には1966年に3枚のシングルを出したのみながら、一部で評価の高い「伝説的」なグループ。海外のサイトTHE TAPESTRY OF DELIGHTSでも「undoubtedly one of Britain's finest freakbeat/psychedelic outfits」と評されてます。これは1992年にBAM-CARUSOから出たCD、のコピー盤(ゆえにCD−R...)です。

 全28曲の収録曲中、最初の12曲は前身のJUST FOUR MEN時代の楽曲。計4曲のシングル曲以外は未発表曲だが、いずれもマージー・ビートスタイル。13曲目からがWIMPLE WINCH名義で、JUST FOUR MEN時代から一転、狂熱のフリーク・ビートの曲が続く。まずは「ATOMOSPHERES」、ファジーなギターと絶叫ボーカルが突進する曲だが、途中とぼけたBEACH BOYS風のファルセット・コーラスをフィーチャーしたパートがあるという落差が妙味。このファルセットは以降の曲でも時折出てくる。もう一つの絶品が「SAVE MY SOUL」で、畳み掛けるリフ部分が異常な盛り上がりを見せる。「WHAT'S BEEN DOWN」「I REALLY LOVE YOU」もパンキッシュな絶叫に力まかせなドラム、うねるベースがカッコいい。

 未発表曲群ではコミカルなシャッフル調「MARMALADE HAIR」、前述のとぼけたファルセットが活躍するサイケ・ポップ調な「LOLLIPOP MINDS」「BLUEBELL WOOD」が突き放したようなクールな感覚があり、印象的。その他の曲ではフリーク・ビート調から一転、シリアスなメロディーにやや土臭いサウンドの曲が多い。(2004/10/17)



TALES FROM THE SINKING SHIP TALES FROM THE SINKING SHIP / WIMPLE WINCH

 一部で評価の高い伝説的なグループ。狂乱のフリーク・ビートがあれば、とぼけてスカしたようなサイケ・ポップ風楽曲もあり、公式リリースされたのは3枚のシングルのみという泡沫ながら、愛嬌も感じさせる彼ら。これはRPMから2009年に出たCDで、 すぐ上にある1992年に出たBAM-CARUSO盤 が市場から消えて久しいので、待望の再CD化。本盤のタイトルにあるSINKING SHIPは、彼らが当時活動の拠点にしていたクラブだとのこと。

 ライナーには詳細な解説、メンバーのツリー図、ディスコグラフィー、オフショットの写真など丁寧な仕事ぶり。これで彼らを知る人が多少なりとも増えてくれるのは非常に意義のあることと思いますが、BAM-CARUSO盤(のコピー)を聴いていた私にしてみると、いくつか不満な点もあります。

 今回発掘された曲は前身の、だが凡庸なマージー・ビートにしか聴こえないFOUR JUST MEN/JUST FOUR MEN時代のものであること。その割にはFOUR JUST MEN/JUST FOUR MENの公式音源が未収録なこと。まあいいんですけど、アーカイヴという意味では収録してほしいところです。

 また、WIMPLE WINCH名義での新たな発掘音源は収録されてませんが、ライナーによると「ATMOSPHERES」と同時に「INVISIBLE MAN」「A.D.」「OOH! AAH! EEH!」という曲を録音したとのこと。曲名だけでも十分にそそられます。また「ATMOSPHERES」もオリジナルテイクはもっと長かったとのこと。彼らがフリーク・ビート・グループだった時期でもあり、「SAVE MY SOUL」ではありませんが、ここに収録されていない曲を渇望させる、罪作りなライナーでもあります。(2009/03/08)



LUCKY PLANET "LUCKY PLANET" / THE WORLD

 元BONZO DOG BANDのNEIL INNESが中心となった4人組、1970年発表の唯一のアルバムがCD化。本盤のアナログ盤はかなり高価だったそうですが、ドラムのIAN WALLACEがこのあとKING CRIMSONに入ったこともあって、プログレ・マニアの蒐集の対象でもあったそうです。

 そんな前知識があると、音の方はプログレぽくもある諧謔的ひねくれポップかと思ってしまいます。だが聴いてみると、やや泥臭い演奏に叙情さを感じるメロディーにCSN&Y風のコーラスといった意外やダウン・トゥ・ジ・アースな内容。とはいえ、それでもイギリスらしい端正さを感じるし、NEIL INNESだけにありきたりではない曲展開もある。歌詞の方はよくわからないですが。1曲目「NOT THE FIRST TIME」のサビでの盛り上がりが良い。ボーナストラックにつけられたシングル曲「ANGELINA」も貴重。しかし、KING CRIMSON絡みで高価なアナログ盤を買ってた人はこの音聴いてどう思ったでしょう。(2002/11/02)



THE WORLD OF OZ THE WORLD OF OZ

 サイケ・ポップの傑作として斯界では名高い作品。怪しげな韓国盤CDや豪盤CDは既に出てましたが、今回は紙ジャケ日本盤CDが登場。待望の正式CD化と言っていいかもしれません。ただ、この日本盤CDには豪盤にはあったボーナス・トラック(シングル・バージョン)が収録されていないのが残念。

 「オズの魔法使」をサウンド化したこのアルバムと同名のグループ、メンバーのパーソナルはありますが、クリストファー・ロビンといういかにもの仮名もあるし、プロデューサー、エンジニア、ミュージック・コンダクターのチームによるプロジェクト、というのが実態だったようです。(1998年に出たオムニバス盤THE PSYCHEDELIC SCENEでは、メンバーの写真が載ってましたが。)

 さて、期待をして聴いてみると、「THE MUFFIN MAN」ではじまるこの作品、朗々とした歌い方が時に気になりますが、アンダーグラウンドやR&Bの影響など皆無な、童心を感じさせる楽曲ばかり。子供向けミュージカルのサウンドトラックのようです。やや不穏なストリングスにパワフルな曲展開の5曲目「THE HUM-GUM TREE」やアシッドぽい11曲目「LIKE A TEAR」もアルバムの調和を乱すことなく、アクセントになっています。

 メロディー自体はWHITE PLANESあたりにも似たソフト・ロック風。だが、通常のポップスに被さるストリングス類に比べて、シンフォニックなオーケストラレーションがサイケ・ポップな印象を与えています。ただ、サイケデリックというよりはファンタジック色が濃いので、本作の場合はポップ・サイケ(POP-SIKE)という表現の方が適切かもしれません。(2005/01/23)