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British Rock or Psyche Pop etc...
- Various Artists -


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ALPHABEAT ALPHABEAT / VARIOUS ARTISTS

 TOP SOUNDSというレーベルから2005年に出たコンピ。ほとんど無名な収録アーティストもさることながら、音源もアセテート盤や放送用のものなど、レアものを集めた編集盤。ジャケもいい感じだし、ライナーも充実で、「上級者」からはいい仕事と評価されそうなコンピ。LPも出ているようですが、CDは750枚限定とのこと。私が持っているもののシリアルナンバーは343でした。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。「POP, PSYCH AND PROG ROCK 1967-1970」という副題で、一部サイケ・ポップ風もありますが、ジミ・ヘンの曲で始まりクリームの曲で終わることからもわかる様に、ブルース・ロックやハード・ロック色が濃厚。ただ、ドロドロしたところは少なく、聴きやすい曲が多い。



SHAPES & SOUNDS SHAPES & SOUNDS - ORANGE & RED BEAMS FROM THE BBC ARCHIVES 1967-1969 / VARIOUS ARTISTS

 2005年に上級者向けと言えるコンピ「ALPHABEAT」を出したTOP SOUNDSというレーベルから第2弾コンピ。サイケ・ポップ関連グループがBBC放送のためにレコーディングされた音源をアーカイブしたもの。

 収録曲はどれもが放送用の音源とのことですが、バランスやミックスもしっかりしており、レコード用のバージョンかと一瞬思うほどです。また、予算の関係のためかホーンやストリングス類が入らない分、バンド本来の演奏を楽しむことが出来ます。曲間に入るDJの声も雰囲気を楽しむには程よい演出かもしれません。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか記載。



SHAPES & SOUNDS VOLUME 2 SHAPES & SOUNDS VOLUME 2 - SHADE OF DEEPEST PURPLE FROM THE BBC ARCHIVES 1967-1971 / VARIOUS ARTISTS

 TOP SOUNDSレーベルから第3弾コンピにして、サイケ・ポップ関連グループのBBC放送音源第2集。第1集とはアーティストのダブりがなく、今後の発掘にも期待したいところです。

 以下、全収録曲(インタビューのトラックを除く)とコメントをいくつか記載。



CIRCUS DAYS VOL1&2 POP-SIKE 1966-1970 CIRCUS DAYS VOL1&2 POP-SIKE 1966-1970 / VARIOUS ARTISTS

 VOICEPRINTがディストリビュートしている名オムニバス・シリーズの1巻と2巻をCD化したもの。サイケ・ポップ関係のオムニバスシリーズで最も玉石混淆が激しい(当たりとハズレの差が大きい)のが、このCIRCUS DAYS。その一方レア度も極めて高く、アセテート盤から起こした曲など、どうやって入手したのかほんと不思議です。もともと「STRANGE THINGS ARE HAPPENINNG」という英音楽雑誌が(付録で?)出していたのが最初だったようです。それをBAM CARUSOってところがCD化して、VOICEPRINTを通じて販売しているとのこと。

 以下、気になった曲のみ羅列します。



CIRCUS DAYS VOL3 PSYCHEDELIA 1966-1970 CIRCUS DAYS VOL3 PSYCHEDELIA 1966-1970 / VARIOUS ARTISTS

 VOICEPRINTがディストリビュートしているオムニバスのシリーズ3巻目。この3巻目だけ買い逃していたのですが、とある方のご厚意で入手する事が出来ました。個人的には1&2巻より好みの曲が多くて得した気分です。

 以下、気になった曲のみ羅列します。



CIRCUS DAYS VOL4&5 UK PSYCHEDELIA 1967-1971 CIRCUS DAYS VOL4&5 UK PSYCHEDELIA 1967-1971/VARIOUS ARTISTS

 VOICEPRINTがディストリビュートしているオムニバスのシリーズもの。VOL.6までは見たことがあります。収録されているのはほぼすべて無名のグループ。それだけに掘り出し物も見つかるのが嬉しいとこです。

 1曲めがいきなりZEPPELINもどきなのが笑ってしまいます。2曲めもブギー調。3曲め以降はポップな曲が続きます。

 サイケ臭いというよりは、フラワー・ポップ、ハッピー・ポップな曲が多く収められているように感じます。例えば2曲収録されているPETER&THE WOLVES。まるでIDLE RACEのファーストを思わせる、ふにゃけておとぼけてポップな楽曲が愉しい。その他にも、7曲めBROKEN TOYSの「BROKEN TOYS」、13曲めTHE CORTINASの「PHOEBES FLOWER SHOP」、まるでA TEENAGE OPERAな19曲めCLOVERの「ICE CREAM MAN」、しっとりとした23曲めDAVID COPPERFIELD STYLEの「I'VE BEEN WRONG,I'VE BEEN RIGHT」、ラスト25曲めBLUE YOGURTの「LYDIA」、これらはどれも乾いた曲調。

 その一方で少しだけ湿った泣きのメロディーで、弦か管楽器がついている楽曲もいくつか見うけられます。例えば5曲めJUAN&JUNIORの「TO GIRLS」。12曲めPETER JANESの「GO HOME VILA」は室内楽とマーチバンドが合体したような演奏が当時のイギリスをしのばせます。14曲めTUESDAY CHILDRENの「SHE」、リフが頭にこびりついてしまう21曲めTHRESHOLD OF PLEASUREの「RAIN,RAIN,RAIN」も同系統。

 そのほかに、個人的に気に入ったのをあげるとまず、9曲めTEMPLE ROWの「KINGS&QUEEN」。MOODY BLUESの曲ですが、多分発表はこちらが先のはず。10曲めJON ISHERWOODの「APPLE PIE」はミュージックホールソングっぽいイギリス臭い曲。アシッドな出だしからジャズぽくなりやがて印象的なサビになる16曲めTOMORROW'S THOUGHTSの「NIGHT IS LIKE DAY」、この曲はBEATLESの「BABY YOU'RE RICH MAN」を思わせます。

 リンクにあるオレンジさんの「POP-SIKE」でも本盤を詳細にレビューしているので是非参照してください。(2000/04/02)



CIRCUS DAYS VOL6 UK PSYCHEDELIA 1966-1972 CIRCUS DAYS VOL6 UK PSYCHEDELIA 1966-1972/VARIOUS ARTISTS

 VOICEPRINTがディストリビュートしているオムニバスのシリーズものの6巻目。VOL4&5ほど聴きどころは多くないのですが、佳曲がところどころに転がっているので捨てきれないとこです。

 その佳曲を拾っていきましょう。まず1曲めCLOVERの「DREAM DREAM DREAM」、同じシリーズのVOL1&2やVOL4&5にも登場するグループですが、そちらに収録されている「ICE CREAM MAN」に比べるとこの曲は録音年代が大分後のような印象です。

 2曲めTHE SWEETSHOPの「BAREFOOT & TIPTOE」、「A TEENAGE OPERA/ORIGINAL SOUNDTRACK RECORDING」にも収録されているMARK WIRTZ関連作品ですが、このコンピの中では他と抜きんでてあまりにも完成度が高すぎて、他の曲がかすんでしまうぐらいです。

 4曲めCECIL McCARTNEYの「LIQUID BLUE」、チェンバロに語り風ボーカルのこの曲はハイドパークやらPINK FLOYDなどの固有名詞が出てきて、イギリスのサマー・オブ・ラヴを懐かしんでいるようです。5曲めPATTERN PEOPLEの「TAKE A WALK IN THE SUN」は間奏の音が割れたオルガンが良い。10曲めPRICE & SHERIDANの「TRACY SMITH」、わずか2分程度ながら室内楽なストリングスとフルートが盛り立てるせつない曲。13曲めQUEEN FLORA'S RECOLLECTIONSの「RED BRICK HOUSE」は子供コーラスが「A TEENAGE OPERA」風。

 後半はバラード風の内省的な曲がよく出てきます。15曲めLEZE MAJESTYの「REGENCY GARDEN」はもったいぶったイントロと大泣きなメロディーがなんとも大袈裟。16曲めSPARROWの「DREAM SONG」女性ボーカルによる湿っぽい曲。18曲めTHE IDLE HANDSの「REMEMBER」もその傾向。21曲めTHE FACTORYの「RED CHALK HILL」は弾き語り風でこれも内省的だが、ジョン・レノンのような声質でボブ・ディラン風に歌うボーカルがなかなか魅力。これを歌っているのはPETER & THE WOLVESのJOHN PANTLEYだといわれているそうです。

 23曲目そのPETER & THE WOLVESの「SMOKEY WOOD」、ピアノで導かれるイントロで同じシリーズのVOL4&5収録曲のようにおとぼけな曲かと思いきや意外にもちょっとおセンチなバラード。

 未発表曲あり、デモもありと、どこから音源を調達したのか不思議なこのコンピシリーズ。貴重ではありますが、発表年度とかグループのバイオとかの情報が欲しいところです。(2000/04/16)



FADING YELLOW FADING YELLOW / VARIOUS ARTISTS

 FLOWER MACHINE RECORDSというところから出ている、TIMELESS POP-SIKE & OTHER DELIGHTS 1965-1969と副題のついたオムニバス盤。1995年にこれのLP盤が出ていて、曲目は少ないのだろうけど、330枚しかない限定盤だったらしい。これはCDですが、やはり1000枚しかない限定盤と謳っている。またこれの第2集、第3集のCDもあるが、それはUSのグループばかりとのこと。

 収録曲は、サイケ度はソフトめでドリーミーないい曲ばかりで、まだまだ世の中には埋もれてる傑作があるんだなとわかります。限定盤にするのはもったいない。もちろんマスターからでなく盤起しで収録したのでしょうが、痩せた音質で高音が強調されてます。でも何となく、まともな音質よりこの方がこれらの楽曲にはあっているような気もします。「CIRCUS DAYS」のシリーズにも言えるのですが、いかにも埋もれていたものを聞いているとだなと感じるし、楽曲に神秘的な印象も与えていると思います。思いすぎかもしれませんが。

 以下、気になった曲を羅列します。



FADING YELLOW VOLUME 4 FADING YELLOW VOLUME 4 / VARIOUS ARTISTS

 FLOWER MACHINE RECORDSからのオムニバスシリーズ第4集。第2,3集はUSものでしたが、"LIGHT,SMACK,DAB"-UK 60'S POP SIKE AND OTHER DELIGHTS...という副題からも判るようにUKもの。今回もやはり1000枚の限定盤としている。第1集の収録曲に比べて、さすがに楽曲のグレードはやや落ちるがそれでも柑橘系メロディーの佳作は多いし、音質が良くなっているように感じます。

 収録曲はシングルB面だった曲も多いですが、これは当時アップテンポの曲をA面に、センチなバラードをB面にするのが戦略的に流行っていたと、どこかで聞いた気がしますが、そのせいでしょうか。

 以下、気になった曲を羅列します。



FADING YELLOW VOLUME 5 FADING YELLOW VOLUME 5 / VARIOUS ARTISTS

 第4集と同時発売だったFLOWER MACHINE RECORDSからのオムニバスシリーズ第5集、やはり1000枚の限定盤。この第5集は1970-1973年にかけての、70年代初頭もの。分離の良いきれいすぎる音だったり、たおやかに歌い上げていたり、安っぽいアナログ・シンセがたなびいてきたり、といった70年代ポップス調ばかりだったらどうしようかと思ったのですが、あからさまに70年代な曲は殆どなかったので個人的には安堵しUPしました。サイケ・ポップの残り香を充分に楽しめます。

 以下、気になった曲を羅列します。



FADING YELLOW VOLUME 8 FADING YELLOW VOLUME 8 / VARIOUS ARTISTS

 FLOWER MACHINE RECORDSからの名物オムニバスシリーズ第8集(第9集と同時発売)。「HYMN FOR TODAY」と副題がついた本盤は、70年代初頭中心の、優雅かつ室内楽的なストリングスが印象的な、夢見心地ながらシリアスでもあるフォーキーな楽曲集、といったところか。見事なほど統一感のある曲を集めて良い雰囲気を作ってます。派手なコマーシャルさやバブルガムのような浮ついたとこは皆無。

 ジャケットには「TIMELESS UK 69-75 LP DELIGHT」とも銘打たれてますが、さすがに本盤では「POP-SIKE」という表記は似合わないのか、されていません。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



FADING YELLOW VOLUME 9 FADING YELLOW VOLUME 9 / VARIOUS ARTISTS

 TIMELESS UK POP-SIKE & OTHER DELIGHTと銘打たれた、FLOWER MACHINE RECORDSからの名物オムニバスシリーズ第9集(第8集も同時発売)。6,7集がUS物だったので、UK物では4年ぶりになります。例によって1000枚限定とのことですが、私が購入したものにはシリアル番号はありませんでした。

 副題は「THE OTHER SIDE OF LIFE」、更にはブックレット裏のカタログには本盤は「DIGS DEEP INTO THE UK 45 SOIL」となっており、地層に埋もれていたシングル曲からピックアップしたとのことです。

 さすがにここまで巻を重ねると、当初の頃のような曲のクオリティは望むべくもありません。収録曲はシングル曲だけあってどれもコマーシャルさは持っているのですが、売れずに今まで埋もれていたのも「さもありなん」な、儚げな曲ばかりです。でもそれが霧がかったような、オブスキュアな雰囲気を濃厚に振りまいており、私のような好事家には何とも堪りません。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



THE FANTASTIC STORY OF MARK WIRTZ AND THE TEENAGE OPERA THE FANTASTIC STORY OF MARK WIRTZ AND THE TEENAGE OPERA / VARIOUS ARTISTS

 GEORGE MARTINのボックスに向こうを張ったのか、その職場仲間でもあるMARK "A TEENAGE OPERA" WIRTZのCD2枚組アンソロジー。あくまでも「A TEENAGE OPERA時期」を中心に据えている構成ですが、全体的には1964〜1972までのポピュラーミュージックの流れも感じます。TOMORROWやそのドラマーTWINK達の別プロジェクトAQUARIAN AGEはこの流れの中では異色。

 DISC ONEでは、HERE COMES THE GIRLSシリーズに入っていそうな曲(ほんとに入ってるかも知れませんが)があったり、STEVE HOWEがアルバイト感覚で弾いている曲もあるガレージ/モッズなインストのコーナーもありますが、PET SOUNDSの曲のカバー「I'M WAITING FOR THE DAY」や「I DIDN'T LOVE HIM ANYWAY」あたりから"A TEENAGE OPERA"の世界。「EXCERPT FROM "A TEENAGE OPERA"」が成功した勢いを持ち込んだ、過剰ともいえる「SAM」や「WEATHER MAN」あたりが最大の盛り上がり。この軽くて高揚した、このCDのタイトル通りのファンタジックな音世界は古さを感じません。BEATLESが歴史に残る傑作を作っていたすぐ脇で、MARK WIRTZはこれら同じように素晴らしい作品を生みだしていたのですね。その両方を手がけていたエンジニアGEOFF EMERICKの功績も大きいと思います。

 DISC TWOではポップながらも音が重くなったように感じます。その中ではTHE SWEETSHOP名義の「BAREFOOT & TIPTOE」がやはり一番の出来。KRIS LIFE名義の「IMAGINATION」も"A TEENAGE OPERA"みたいな構成だけど、このあまりにも重厚な音は"A TEENAGE OPERA"ファンには辛いと思います。それ以降は70年代ポップ風の曲も目立つ。作者にはNORMAN SMITHも名を重ねる、MARK WIRTZ名義の「MRS RAVEN」や、PHILWIT & PEGASUSの「MY WHAT A LONELY DAY IT'S BEEN」、MARK WIRTZ名義の「THE SONG I SING」「SWAN(BALLERINA)」あたりはなんとなくBEATLESぽい。というか、具体的にBEATLESのあの曲に似ているというよりも、音の質感がBEATLESぽいと言われている作風に似ている。

 CD TWOの最終曲「CHUG-A-LUG STORY」はこれのみ1996年の録音。CD ONEの最終曲で3拍子の「THE SAD STORY OF SIMON THE BUGLE」にボーカルをつけたものですが、締めくくりにピッタリです。

 CD ONEの最後に聞こえるラジオドラマ(?)は何なんでしょうか。作りかけだった"A TEENAGE OPERA"だったりして。(2001/10/21)



THE GIRLS' SCENE THE GIRLS' SCENE/VARIOUS ARTISTS

 DECCA/DERAM音源による編集盤シリーズのガールポップ編。60年代中期のレイジーサンデーアフタヌーンに、ロンドンで歌謡番組を観ているような気分にさせる一枚。

 ブリティッシュビートな曲もありますが、スペクターサウンドもどきやモータウン風やバカラック調など、当時の米ポピュラーミュージックのエッセンスをかっぱらった如き楽曲群をふんだんに聞くことが出来ます。出だしの1曲目からして、もろCRYSTALSの「DA DOO RON RON」。もう1つ同曲のパクリがあって、そちらはなんとJAGGAR/RICHARDの作品。

 ブリティッシュビートな曲では、BEATLESとツアーした事もあるというLOUISE CORDETの「TWO LOVERS」やDONOVANのペンによるDANA GILLESPIEの「YOU JUST GOTTA KNOW MY MIND」が聴き物。GOFFIN/KING作品ながらもTRULY SMITHの「THE BOY FROM CHELSEA」はロンドンの雨にぬれたレンガ道を思わせる佳作。そのほか、幼さが残るOLIVIA NEWTON-JOHNの「TILL YOU SAY YOU'LL BE MINE」も珍しい。

 個人的に最大の収穫は、幻のフォークシンガー、VASHTIのごく初期のシングル曲「SOME THINGS JUST STICK IN YOUR MIND」。元々はMARIANNE FAITHFULのためのJAGGAR/RICHARD作品ですが、彼女の震えるような美声は際立っています。彼女はTWICE AS MUCHの「COLDEST NIGHT OF THE YEAR」や映画「TONITE LET'S ALL MAKE LOVE IN LONDON」のサントラ盤でもその素晴らしい声を披露しています。こんな才能を持ったシンガーなのに、ANDREW OLDHAMに飼い殺し同然にされたのは残念でなりません。

 個々のアーティストのプロフィールを詳細に述べたライナーノーツが嬉しい。ANDREW OLDHAM関連のアーティストが別枠になっているのも良い。(1999/10/31)



A GLASS MENAGERIE A GLASS MENAGERIE / VARIOUS ARTISTS

 「POP, PSYCH, PYE COLLECTABLES 1967-1969」と副題のついたRPMからのコンピ盤。散々掘り尽くされたPYE音源ですが、地味ながら佳曲もちらほらあります。また、シングルAB面曲を続けて収録というのが、新機軸というところでしょうか。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



THE GREAT BRITISH PSYCHEDELIC TRIP VOL 1 1966-1969 THE GREAT BRITISH PSYCHEDELIC TRIP VOL 1 1966-1969 / VARIOUS ARTISTS

 SEE FOR MILESの名コンピシリーズの第1集。これと第2集は主にDECCA,DERAMレーベル音源で、完結となった第3週はEMI音源。この第1集は、LP時代はもともとTHE BRITISH PSYCHEDELIC TRIPというタイトルで第4集まであったうちの、その第1集と第3集から選曲されています。LP収録曲のうち何曲かオミットされているのは残念。

 発売は1988年ですので、現在は中古レコード屋でしか見かけませんし、単体でCD化されたアーティストやその後のコンピ盤で聴ける曲もありますが、良い曲ばかりなので見かけたら是非購入をお勧めします。

 全収録曲と簡単なコメントをいくつか書いておきます。17曲目まではLP第1集からで、もちろんサイケ・ポップ中心ですが、アシッドやブルージーだったりガレージ風の曲も結構多い。18曲目以降はLP第3集からで、ハーモニー・ポップ風の曲が多くなります。



THE GREAT BRITISH PSYCHEDELIC TRIP VOL 2 1965-1970 THE GREAT BRITISH PSYCHEDELIC TRIP VOL 2 1965-1970 / VARIOUS ARTISTS

 SEE FOR MILESの名コンピシリーズの第2集。第1集と同様DECCA,DERAMレーベル音源。LP(THE BRITISH PSYCHEDELIC TRIPというタイトル)での第4集全曲に、LP第3集からCD第1集に収録されなかった曲から選曲されています。

 この第2集はサイケ・ポップというよりはコーラスが充実したソフト・ロック/ハーモニー・ポップ的な楽曲が多く、その一方R&B/ソウルをベースにホーンなど派手なアレンジを施した一群もあったり、このシリーズの中ではアシッド色やドラッグのイメージが少なく、コマーシャルな印象です。

 以下、全収録曲と簡単なコメントを。



THE GREAT BRITISH PSYCHEDELIC TRIP VOL 3 1965-1970 THE GREAT BRITISH PSYCHEDELIC TRIP VOL 3 1965-1970 / VARIOUS ARTISTS

 SEE FOR MILESの名コンピシリーズの第3集。もともとTHE BRITISH PSYCHEDELIC TRIPというタイトルでLPで第4集まであり、それをCDではTHE GREAT BRITISH PSYCHEDELIC TRIPという題にして第3集でとりあえず完結しています。LPでは第1集、第3集、第4集が主にDECCA,DERAMレーベル音源で、それがCDでは第1集、第2集にコンパイルされてます。そしてLPでは第2集だったEMI音源をCDでは4曲プラスして、ここでとりあげている第3集にとして発表されています。

 さすがにBEATLES(カバーはありますが)やPINK FLOYDはないもの、PRETTY THINGS,YARDBIRDSなどこのシリーズにしてはビックネームも収録されてます。またこの手の音が好きな人にとっては有名曲が並んでいますが、ポップな曲とアシッドな曲をほどよく混在した本作品は初心者には最適な入門盤かもしれません。

 出だしはTOMORROWの「MY WHITE BICYCLE」、2曲目はIDLE RACEの「SKELTON AND ROUNDABOUT」と、いきなり代表曲が目白押し。3曲目はDAVE EDMUNDSがいたLOVE SCULPTUREの「IN THE LAND OF THE FEW」特にサイケじゃないけど、実にカッコいい曲。4曲目SIMON DUPREE & THE BIG SOUNDの「KITES」はメロトロン好きにはたまらない一曲。5曲目LOCOMOTIVEの「MR. ARMAGEDDAN」はソフトロック寄りの人には鬼門だろうけど、ねっちこいボーカル、うねるベースにハモンド、絡みつくホーンが癖になる曲。

 6曲目、後のDAVID BOWIE、DAVY JONES & THE LOWER THIRDの「YOU'VE GOT A HABIT OF LEAVING」のみ1965年の作品で、1966年の作品がないためか、ブリティッシュビートなこの曲が浮いて聞こえます。

 7曲目、KEITH WESTの「EXCERPT FROM "A TEENAGE OPERA"」はまさにプロデューサーMARK WIRTZの、いやサイケ・ポップの代表作のひとつ。続く8曲目、KIPPINGTON LODGEの「RUMOURS」も同じくMARK WIRTZプロデュース。BRINSLEY SCHWARZの前身としても知られますが、これは胸を突くポップチューン。また、15曲目と16曲目でやはりMARK WIRTZプロデュースによるKIPPINGTON LODGEとKEITH WESTの、ちょっとジャズ風な曲が続く。9曲目LEMON TREEの「IT'S SO NICE COME TO HOME」はANDY FAIRWEATHER-LOWのプロデュース。ブラスバンド風のバックが楽しい。

 BEATLESのカバーが、18曲目TOMORROWの「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」と20曲目THE GODSの「HEY BULLDOG」の2曲ありますが、同じ時代、そしておそらくは同じスタジオ、共通するスタッフによって作られたカバーは雰囲気あります。

 LP時代は20曲だったので、21曲めからはCDの”ボーナストラック”。躍動感あるLEMON TREEの「WILLIAM CHALKER'S TIME MACHINE」に続いてYARDBIRDが2曲収録されてますが、やはりボーカルが弱いですね。最後の24曲目はLOVE SCULPTUREの「SABRE DANCE」(剣の舞)。〆にふさわしい痛快なインスト。(2001/07/08)



GROOVY POP SELECTION<RED EDIT>&<BLUE EDIT> GROOVY POP SELECTION(RED EDIT)/VARIOUS ARTISTS
GROOVY POP SELECTION(BLUE EDIT)/VARIOUS ARTISTS

 IMMEDIATEレコード音源を中心としたコンピュレイション盤シリーズ。1995年に発売されたものですが、「シブヤ系リスナー御用達コンピレーション!!」という帯のコピーが恥ずかしい。曲のクレジットと英語詞のみで解説なしという大手レコード会社発売とは思えない不親切さ。作詞作曲者名が「Copyright Controlled」の曲が多く、ちゃんと調べたのかよ、と思ってしまいます。

 とは言っても、当時はここに収められているTWICE AS MUCHやBILLY NICHOLSやTONY RIVERSは、まだ単発物として再発されてなかったので、貴重な音源でした。SMALL FACES,MOVE,TURTLES,ZOMBIESといった有名どころも多いですが、60年代後期イギリスの、頼りなげなアーティスト達が割と多く収録されてます。

 その一方で、P.P.ARNOLDやCHRIS FARLOWE,VAL LENTONといったブリティッシュな佇まいのR&Bも魅力的です。特にP.P.ARNOLDはROD STEWARTとのデュエット曲「COME HOME BABY」、躍動的なRONNETSのカバー「BORN TO BE TOGETHER」、感動的な「KAFUTA ONE〜GOD ONLY KNOWS」等、彼女が残した音源からおいしい所が収められてます。

 WHOの曲をかっこ良くきめているFLEUR DE LYS(ゴードン・ハスケルがいたそうです)、ZOMBIESの「SHE'S NOT THERE」と続きで聴くとかっこいいAPOSTOLIC INTERVENTIONの「MADAME GARCIA」、MARQUIS OF KENSINGTONのスカした「REVERSE TRUSH」も良い。(1999/04/11)



GULLIVER'S TRAVELS GULLIVER'S TRAVELS

 1969年にIMMEDIATE傘下のINSTANTから発売されたアルバム。1968〜1969年にかけて上演されたMIKE D'ABO主演による同名ミュージカルにインスパイアされて(?)発表されたという珍盤。もちろん原作はスウィフト作のあの著名な作品。しかし発売直後にLOVIN' SPOONFULの曲を無断使用したことで回収されてしまったという曰く付きの一枚。ライナーによると、MIKE D'ABOも出ていたことを知らなかったとか。アナログ盤は高価。

 今回ジャケットを変えてボーナストラックを加えてのCD化ですが、このジャケットのイラストは「TEENAGE OPERA」と同じ作者によるものと見られる。地味なオリジナルジャケットをイラストに変えたという意味では同じIMMEDIATEの「TONITE LET'S ALL MAKE LOVE IN LONDON」と同じ手法。

 内容は全編コラージュ風で、件のLOVIN' SPOONFULの曲断片はいきなり冒頭に出てきます。まともな音楽作品でないが、好意的に受け止めればなんとなく当時の雰囲気を感じることは出来ます。このミュージカルが上演されていた当時のシアターの前で、雑踏のどこかから漏れてくる音を聴いてるような感じでしょうか。BOB KERR'S WHOOPEE BANDによるSMALL FACESのカバー「AFTERGLOW」もダサいがしみじみイギリス臭くて良い。アルバム本編は30分にも満たない短さで、飽きる前に終わるのもいい。

 ボーナストラックは、アルバムとは別に発売されたMIKE D'ABOのソロシングル「(SEE THE LITTLE PEOPLE) GULLIVER TRAVELS」とそのB面曲、さらに彼の未発表曲「IN THE BEGINNING」。いかにも穴埋め的なB面曲以外は、どちらもMIKE D'ABOらしい佳曲。特に荘厳な「IN THE BEGINNING」はめっけものです。(2002/04/14)



HOT SMOKE & SASSAFRAS PSYCHEDELIC PSTONES VOL.1 HOT SMOKE & SASSAFRAS PSYCHEDELIC PSTONES VOL.1 / VARIOUS ARTISTS

 PSYCHEDELIC PSTONESという新コンピュレイション盤。PYEとその傘下のPICCADILLY音源ですが、同じPYE音源で1994年に日本盤も出た名コンピ盤「PAISLEY POP PYE PSYCH & OTHER COLOURS 1966-1969」とは収録曲が5曲ほど重なる。(3曲目SCRUGGの「LAVENDER POPCORN」、9曲目THE BYSTANDERSの「CAVE OF CLEAR LIGHT」、13曲目ANANの「I WONDER WHERE MY SISTER'S GONE」、19曲目GENTLE INFLUENCEの「CAPTAIN REALE」、20曲目THE ONYXの「TAMARIS KHAN」)。

 同じPYE音源を使用したもうひとつのコンピ盤、RIPPLESシリーズがハーモニー・ポップ/ソフトロック寄りとすると、こちらは1969年前後の作品が多いせいか、プレ・プログレ/プレ・ハードロック寄り。メロディアスではないが、気合いの入った疾走感ある演奏が多い。まず1曲目THE MOOCHEの「HOT SMOKE & SASSAFRAS」からして既にハード・ロック。間奏はテンポを変えてジャズ風。1969年にしては先進的だったかも。

 6曲目STATUS QUOの「MR. MIND DETECTOR」はBEATLESの「I AM THE WALRUS」「A DAY IN THE LIFE」を思わせるストリングス付きのドラマチックな曲。ラストの24曲目「YOU'RE JUST WHAT I WAS LOOKING FOR TODAY」もGOFFIN=KING作品をストリングス付で華麗に仕上げている。また、8曲目、DEEP PURLEのメンバーがいたことで知られるEPISODE SIXの「I CAN SEE THROUGH YOU」もドラマチックな曲。16曲目NEO MAYAの「I WON'T HURT YOU」はそのEPISODE SIXのギタリストの変名による曲。間奏では40人編成のオーケストラが聞ける。これはRIPPLESシリーズでも収録されてましたね。

 特に中盤以降はハードだったりワイルドだったり湿っぽくもドラマチックだったりする曲が多い中、2曲目THE TURNSTYLEの「RIDING A WAVE」は本盤の中ではキャッチー。続く3曲目SCRUGGの「LAVENDER POPCORN」もフォークロックがベースなので一息つけます。また、5曲目ORANGE MACHINEの「DR. CRIPPEN'S WAITING ROOM」はTOMMOROW風の曲。もともと彼らはTOMORROWの曲「THREE JOLLY LITTLE DWARFS」でデビューし、地元アイルランドではTOP20入りしたとか。ステージでは「MY WHITE BICYCLE」も取り上げていたというから、まさにTOMORROWのフォロワー。22曲目THE SORROWSの「PINK,PURPLE,YELLOW,RED」も本コンピ盤の中では、大げさにならずカチっとまとまった演奏。

 4曲目で大御所KINKSの「LAZY OLD SUN」が収録されてますが、彼らなりにスケールの大きいこの曲を選んだのは妙に納得。23曲目でDAVE DAVIESのソロ「CREEPING JEAN」が入っているのは意図がよくわからないけど。

 VOL.1と銘打ってあるので、第二巻以降も注目したいシリーズです。(2001/07/08)



HAUNTED PSYCHEDELIC PSTONES II HAUNTED PSYCHEDELIC PSTONES II / VARIOUS ARTISTS

 PYEとその傘下のPICCADILLY音源によるPSYCHEDELIC PSTONESというコンピュレイション盤シリーズ第2集。第1集「HOT SMOKE & SASSAFRAS」ではプレ・プログレ/プレ・ハードロック寄りの選曲だったが、今回はサイケ・ポップな曲が多め。ハーモニーポップ/ソフト・ロック体質のグループがサイケなことにも手を出してみました風な曲も目立つ。この第2集が出ていたのに気づかず、某サイトでこれを知り慌てて入手した次第。

 以下、気になった曲を羅列します。



HOUSE OF MANY WINDOWS PSYCHEDELIC PSTONES III HOUSE OF MANY WINDOWS PSYCHEDELIC PSTONES III / VARIOUS ARTISTS

 コンピュレイション盤シリーズPSYCHEDELIC PSTONESの第3集はMORGAN BLUE TOWNレーベル集。ポップだけどアンダーグラウンドさも漂うという、まだら模様な楽曲が堪能できます。看板アーティスト(比較的マイナーでない、という意味ですが)のSMOKEやANGEL PAVEMENTの代表曲が収められていませんが、有名曲(?)はあえて外したのか、それともMORGAN BLUE TOWN編パート2のため温存したのか、少し気になります。また、このPSYCHEDELIC PSTONESシリーズ、CDタイトルはすべてHで始まってますが偶然でしょうか。どうでもいいことですがこれも気になります。



UNDER THE SILENT TREE PSYCHEDELIC PSTONES IV UNDER THE SILENT TREE PSYCHEDELIC PSTONES IV / VARIOUS ARTISTS

 コンピュレイション盤シリーズPSYCHEDELIC PSTONESの第4集は1970〜1973年の作品集。PYEレーベル音源が多いですが、それ以外のレーベルの曲も混じっています。年代的に必然なのでしょうが、サイケというより、プログレ/ハード・ロックな感触の曲が多い。プログレやハード・ロック関係の書物で見かけるようなアーティストの名もちらほら見えます。このコンピ盤シリーズに先があるのか、気になるところです。



INSTANT KARMA INSTANT KARMA /VARIOUS ARTISTS

 SANCTUARYレコードから出たIMMEDIATE傘下のINSTANTおよびREVOLUTIONレーベルの編集盤。短命に終わったIMMEDIATEの更にその傘下レーベルだけにレアな音源が多く、ここでまとまって聴けるのは嬉しい限りです。

 構成は、INSTANTの5枚しかないシングルAB面曲に、REVOLUTIONレーベルから出た2枚(これだけなのか?)のシングルAB面曲、INSTANTから出たドキュメンタリーのサントラ「TONITE LET'S ALL MAKE LOVE IN LONDON」、同名ミュージカルにインスパイアされた(?)編集盤「GULLIVER'S TRAVELS」、INSTANT最後のリリースとなったSAMSONというグループの「ARE YOU SAMSON?」からの選曲、そして2曲の未発表バージョン。

 なよなよとしたOUTER LIMITSの「GREAT TRAIN ROBBERY」から始まり、4曲目THE EXCELSIOR SPRINGの「IT」はB面曲ながら、なかなかイイ雰囲気のサイケ・ポップ。7曲目「ANY OLD TIME」はFOUNDATIONSのカバーだが、そのFOUNDATIONSより華やかな仕上がり。9曲目TWINKLEの「MICKEY」は出だしはP.P.ARNOLDを思わせるR&B路線だが、途中はTONY MACAULAY風になる。彼女はMODSのライバルROCKER族のアイドルだったとかで、「TERRY」というヒット曲を持っているそうです。当時のガールシンガーにしては珍しく曲を自作していて、しかも先の「TERRY」は16才のときに書いたという早熟ぶり。「MICKEY」あたりはいかにもシングル用に書いた印象だが、10曲目「DARBY & JOHN」や23曲目「SOLDIER'S DREAM」は彼女の個性を感じさせる独特な曲です。

 REVOLUTIONレーベルの4曲はIMMEDIATEのカーボンコピー風なINSTANTレーベルの曲とは異なり、1968年のとある夜、ふと入ったロンドンのエスニックなクラブでそこの専属バンドを聴いているような気分にさせてくれます。その中で、ヨーデル風なボーカルにゆるいレゲエのリズム、そこにメロトロンが被さる11曲目「SITTING IN THE PARK」は変。BEATLESのあの有名曲のネタになったという13〜14曲目のJIMMY SCOTT「OB-LA-DI OB-LADA STORY」はなかなかかっこいいスカ。その直後になよっとしたTWICE AS MUCHの曲が続き、この落差が(なんとなく)当時の混沌とした状況を思わせてくれます。

 個人的にこの編集盤のハイライトは16曲目VASHTIの「WINTER IS BLUE」。「TONITE LET'S ALL MAKE LOVE IN LONDON」ではANDREW LOOG OLDHAMのMCで分断されていたが、ここではその完奏版が収録されている。20曲目SAMSONの「TRAFFIC」はいかにも1969年らしいプレ・ハードロックな音。(2002/08/25)



KINKY KOVERS KINKY KOVERS / VARIOUS ARTISTS

 レイ・ディヴィス・ソングブック・フロム・パイと題された、パイ音源のINKSカバー集(書き下ろし含む)。

 10年前に出たものなので、その後別のコンピ盤に収録された曲もあり当時ほどの価値はないですが、まとめて聴けるのは便利。ライナーを読むと、ここに収録できなかったという曲を無性に聴きたくなりますが。

 サイケ・ポップとして聴けるのは多くないのですが、PYE時代のKINKS周辺にあった有象無象の風景が垣間見れるようなCDです。ライナーノーツにあるようにCDラックのKINKSコーナーの端にひっそりと置いておきたい一枚。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか記載。



LOVE, PEACE & POETRY BRITISH PSYCHEDELIC MUSIC LOVE, PEACE & POETRY BRITISH PSYCHEDELIC MUSIC / VARIOUS ARTISTS

 モデルぽい女性がジャケを飾る、ドイツQDKレーベルのサイケデリック世界の旅シリーズの英国編。タイトルに反して、フラワーなサイケ・ポップ曲は殆ど無い。収録曲の2/3は70年代以降の曲のためか、割と聴きやすいながらもアンダーグラウンドな香りもするギター・オリエンティッドな曲が多い。気に入った曲だけ紹介します。



MAYBE SOMEONE IS DIGGING UNDERGROUND THE SONGS OF THE BEE GEES MAYBE SOMEONE IS DIGGING UNDERGROUND THE SONGS OF THE BEE GEES / VARIOUS ARTISTS

 CATSLE(SANCTUARY)から出ているカバー・ソング集シリーズのBEE GEES版。BEE GEESの初期作品(「HORIZONTAL」ぐらいまで)かつイギリスで1967-1970年までに発表されたものがほとんどのため、サイケ・ポップのコンピ盤としても充分聴ける内容になってます。

 以下、全収録曲と簡単なコメントを。



MIKE HURST PRODUCERS ARCHIVES VOLUME 1 MIKE HURST PRODUCERS ARCHIVES VOLUME 1 / VARIOUS ARTISTS

 CAT STEVENS,MANFRED MANN,P.P.ARNOLD,MOVEなどを手がけたプロデューサーの作品集。WARM SOUNDやNEIL MACARTHUR(COLIN BLUNSTONEの変名)も彼がプロデュースだったのですね。彼もスゥインギング・ロンドンの立役者の一人と言えるのでしょうか。楽曲は1966年から1984年までに亘っており、SAMANTHA FOXまで手がけてますが、ここでは60年代ものに限って聴くことにします。



MIKE HURST PRODUCERS ARCHIVES VOLUME 2 MIKE HURST PRODUCERS ARCHIVES VOLUME 2 / VARIOUS ARTISTS

 CAT STEVENS,MANFRED MANN,P.P.ARNOLD,MOVEなどを手がけたプロデューサー作品集のボリューム2。2004年に出たものですが、60年代ものが少ないので見送ってました。が、5年もたって(忘れたころに)2009年に60年代音源中心の第3集が出たので、ついでに購入。MIKE HURSTソロ名義とBARRY ST. JOHNの音源は貴重。

 ここでは触れませんが、期待せずに聴いた70-80年代の曲も意外と面白い。コマーシャルに映える、快活で華やかなロック・ナンバーを、時流に沿いつつ職人的に作るのが得意な人なのですね。

 以下、収録曲のうち60年代のものについて記載。



MIKE HURST PRODUCERS ARCHIVES VOLUME 3 MIKE HURST PRODUCERS ARCHIVES VOLUME 3 / VARIOUS ARTISTS

 CAT STEVENS,MANFRED MANN,P.P.ARNOLD,MOVEなどを手がけたプロデューサー作品集のボリューム3。2004年に出た第2集から5年もたってから発表。今回は60年代音源中心でハーモニー・ポップ系の楽曲が多く、貴重な発掘音源もあるのが嬉しい。IMMEDIATE関連で新たな事実や疑問も出てきたのも意外な収穫でした。ただしジャケットは最低のセンス。

 以下、収録曲のうち60年代のものについて記載。



MY FIRST DAY WITHOUT YOU - NEW RUBBLE VOLUME 1 MY FIRST DAY WITHOUT YOU - NEW RUBBLE VOLUME 1 / VARIOUS ARTISTS

 PAST&PRESENTレーベルから出たNEW RUBBLEシリーズの第一巻。RUBBLEシリーズでは良い仕事をしてくれたので期待ひとしおです。ジャケットがコンセプト不明ながらおざなりではないのはいいのですが、ライナーがテキストだけなのは残念。

 この1巻では1963〜1966年の曲を集めてますが、65年と66年が中心。これまでのコンピでも名が出てこなかったオブスキュア(無名)なグループが多いようです。時期的にサイケ・ポップ色はまだなのは仕方ないところですが、全般的にR&Bやモッズ色もかなり希薄。けして熱くならない、適度なビートとコーラスがある中庸さがあり、一番近いのはマージービートかと思います。64〜65年あたりのBEATLESぽくもあるし、時として、日本のGSとの類似性も感じます。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



SPEAKING MY MIND - NEW RUBBLE VOLUME 2 SPEAKING MY MIND - NEW RUBBLE VOLUME 2 / VARIOUS ARTISTS

 PAST&PRESENTレーベルから出たNEW RUBBLEシリーズの第二巻。ジャケットが相変わらずコンセプト不明でシュール。

 この2巻では1969〜1974年の曲を集めてますが、69年と70年の曲が多い。内容は、サイケ・ポップからかなり遠い(時代が経った?)アンダーグラウンドなハード・ロック作品集。ギターは歪み、ハモンドは唸り、ボーカルはイアン・ギランばりに熱唱する、という大味な曲が目立つ。プログレ関係の書物で見かける、稀覯盤として紹介されているグループ(RAW MATERIALやWALRUSなど)なども散見されます。

 個人的には、3巻以降も予定されているのでそちらに期待、ですね。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



WATCH YOUR STEP - NEW RUBBLE VOLUME 3 WATCH YOUR STEP - NEW RUBBLE VOLUME 3 / VARIOUS ARTISTS

 PAST&PRESENTレーベルから出たNEW RUBBLEシリーズの第3巻。「20 SUPERB SLABS OF PRIMAL」という副題。またもシュールなジャケットですが、中身はジャケに似合わない、すべて1964〜1966年に発表されたブリティッシュ・ビート集。これの第1巻がマージー・ビート特集だとすると、本盤はそれよりぐっとブルース/R&B寄りな、黒っぽい曲を集めた印象。ただし、MODSものとも少し違うかとは思います。有名曲のカバーも幾つかある。

 以下、どの曲も熱い演奏ですが、サイケ・ポップとは遠い内容なので全収録曲のみ表記します。



UTOPIA DAYDREAM - NEW RUBBLE VOLUME 4 UTOPIA DAYDREAM - NEW RUBBLE VOLUME 4 / VARIOUS ARTISTS

 PAST&PRESENTレーベルから出たNEW RUBBLEシリーズの第4巻。「A COLLECTION OF LOST POP GEMS FROM THE '60'S」という副題。4作目にして(個人的には)待望のサイケ・ポップのコンピといえるもの。ビート・ナンバー風の曲も幾つかあり、終盤はハーモニー・ポップ寄りの作品が多いですが、無名グループばかりか、この種のコンピ盤では「初出」の曲ばかり。かつ、出来の良い曲も多い。さらに収録曲を発表年度が1967〜1969年の作品ですべて固めたのも見事。ジャケも本盤に限っては、内容とイメージが合っている。GOOD JOBと言ってあげたい。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



SCRATCH MY BACK - NEW RUBBLE VOLUME 5 SCRATCH MY BACK - NEW RUBBLE VOLUME 5 / VARIOUS ARTISTS

 PAST&PRESENTレーベルプレゼンツのNEW RUBBLEシリーズ第5巻は、言ってみれば「ガール・イン・ザ・ガレージ」。1964〜1966年の作品が大半ですが、ガレージ/フリークビートな曲調にパンキッシュでもある女性ボーカルが乗っかる曲ばかり。どれもハイ・テンションかつ迫力ある音圧で圧倒されます。バラードものを挟むこともなく一気に17曲を突っ走りますが、43分というこの手のコンピにしては短い収録時間は程良いのかもしれません。閑話休題、本コンピのタイトルの意味は「魚心あれば水心」だそうで。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



PAINTING THE TIME - NEW RUBBLE VOLUME 6 PAINTING THE TIME - NEW RUBBLE VOLUME 6 / VARIOUS ARTISTS

 NEW RUBBLEシリーズ第6巻のサブタイトルは「A collection of unheard '60s and '70s psychedelic rarities」。その副題の割には既出の曲も多めで、内容的にもサイケ・ポップ、ソフト・ロック/ハーモニー・ポップ、アシッドなどのどのタームにも中途半端な曲が多く、VOLUME 4ほど傑出した曲が少ないのは残念。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



94 BAKER STREET THE POP-PSYCH SOUNDS OF THE APPLE ERA 1967-1969 94 BAKER STREET THE POP-PSYCH SOUNDS OF THE APPLE ERA 1967-1969 / VARIOUS ARTISTS

 BEATLESが設立したアップルの音楽出版事業部門と契約を交わしたアーティストの作品を、未発表曲をふくめて収録したコンピ盤。うちアップルからレコードを出したのはIVEYS(後のBADFINGER)のみ。現在の契約の関係か、GALLAGHER&LYLEやFIREは未収録。後にHIGH TIDEになるMISUNDERSTOODもジャケ裏の曲目表にはクレジットがあるが、問題あったのか実際には未収録。「THOSE WERE THE DAYS An Unofficial History of The Beatles Apple Organization 1967-2002」という書籍に連動したCDでもあるようだ。

 最初のアーティストはFOCAL POINT。実際には一枚のシングルをDERAMから出したのみ。そのA面でもある「LOVE YOU FOREVER」はメロトロンとマリンバの間奏が妙味。「SYCAMORE SID」はWHOの「I CAN'T EXPLAIN」風のリフが印象的だが、その他の曲では日本のGSに一脈通じるようなやや湿り気のある、なよっとした叙情が感じられる。「'CEPT ME」はサイケなギターリフとボーカルの音階がJOHN LENONのお気に召したとか。

 次はGRAPEFRUIT。これもなよっとしたソフト・サイケ。FOCAL POINTに比べるとメリハリの利いた音だ。TONY RIVERS&CASTAWAYS出身のメンバーが3名もいるし、TERRY MELCHERがプロデュースしているせいか。特筆すべきは「LULLABY」。PAUL McCARTNEYプロデュースだという別バージョンで、「AROUND GRAPEFRUIT」では整理されたアレンジだったが、こちらはまるでSYD BARRET在籍時のPINK FLOYDがバックを担当したような、よりLSD度が高いバージョンだ。

 3番目はWAYS AND MEANS。GRAPEFRUITのGEORGE AREXANDERが書いた「BREAKING UP A DREAM」のみ収録。GRAPEFRUITもレパートリーとしていたという性急ながらもキャッチーなコーラスもなかなかの佳作。

 4番目はIVEYS。デビュー曲となった「MAYBE TOMORROW」の別バージョン以外は未発表曲。TOM EVANS作の未発表曲「I'M TOO SHY」。「MAYBE TOMORROW」路線の「SHE CAME OUT OF THE COLD」。なかなかサイケでガレージな演奏の「TUBE TRAIN」「I'VE BEEN THERE ONCE BEFORE」。ライナーによるとこのコンピ盤を出したRPMからIVEYSの未発表曲集を出す計画もあるというが、一度はCD化された「MAYBE TOMORROW」も是非再発してほしい。

 5番目はPAINTBOX。これもGRAPEFRUITのGEORGE AREXANDERが絡んだプロジェクトだそうで、FOUNDATION風のポップ・ソウルな「GETTING READY FOR LOVE」のみ収録。最後はJOHN FITCH & ASSOCIATES。ねちっこいボーカルにハードなギター、ソウル〜ファンキー路線。アップルといえども、いろんなアーティストと契約していたことがわかります。(2004/02/01)



AN APPLE A DAY MORE POP PSYCH SOUNDS FROM THE APPLE ERA 1967-1969 AN APPLE A DAY MORE POP PSYCH SOUNDS FROM THE APPLE ERA 1967-1969 / VARIOUS ARTISTS

 BEATLESが設立したアップルの音楽出版事業部門(アップル・レーベルとは別部門)と契約を交わしたアーティストの作品集。2003年に出た「94 BAKER STREET...」に続く、まさかの第2集です。半分以上は未発表曲でデモ・バージョンも多く、音質的にはかなり厳しいです。が、内容的にはAPPLEというサイケ・ポップの金看板への期待を裏切りません。なよっとしたメロディアスで内省的な曲が多く、ぼんやりとした音像が、オブスキュア感を高めて、また雰囲気(何の?)を盛り上げてもくれます。

 以下、全収録曲とコメント。



TREACLE TOFFEE WORLD FURTHER ADVENTURES INTO THE POP PSYCH SOUNDS FROM THE APPLE ERA 1967-1969 TREACLE TOFFEE WORLD FURTHER ADVENTURES INTO THE POP PSYCH SOUNDS FROM THE APPLE ERA 1967-1969 / VARIOUS ARTISTS

 アップル音楽出版事業部門と契約したアーティストの作品集の第3弾にして最終作の模様。第1弾は2004年に出た 「94 BAKER STREET...」 、第2弾は2006年に出た 「AN APPLE A DAY MORE POP...」 。さすがに出がらし感がありますが、がんばって出してくれたのは感謝。ところで、第1弾で未収録になったMISUNDERSTOODは?

 以下、全収録曲とコメント。



OH! YOU PRETTY THINGS - THE SONGS OF DAVID BOWIE OH! YOU PRETTY THINGS - THE SONGS OF DAVID BOWIE / VARIOUS ARTISTS

 2006年にSANCTUARYから出ていたBOWIEの提供/カバー曲集。ソングライターとしてのBOWIEという、意表をついた企画盤になっているのが面白い。

 ほぼ録音順に収録されていますが、BOWIEの変遷とほぼシンクロした曲想になっているのがよく判ります。DERAMからのファーストを出してた時期〜大ブレイクしたグラム・ロック期〜ニューヨークに渡る頃のソウル・ファンク的なアプローチ、といった流れです。彼自身、職人的に曲を書き分けるタイプでは無いでしょうから当然かもしれません。

 このサイト的に興味深いのはやはり、最初の方の、SWINGING LONDON期では契約ソングライターでもあった彼の作品集。ミュージックホール的というか、大衆的なシアトリカルさというか、意図的にサイケやブルース、ハードロックといった当時のロック的な要素を排除したような曲が多い。ファーストアルバムでも判るとおり当時の彼のアーティスティックな志向通り。それを他人が歌うと途端にショービズ臭さやB級臭さが出てくるあたり、売れなくて苦闘していたであろう当時の彼の立ち位置が垣間見えます。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか記載。



PAISLEY POP PYE PSYCH PAISLEY POP PYE PSYCH & OTHER COLOURS 1966-1969 / VARIOUS ARTISTS

 1991年に英で発表され、1994年に日本盤が発売されていたコンピレーション。PYE音源であり、今となってはその後出た色んなコンピ、RIPPLESとかPSYCHEDELIC PSTONESシリーズなどで聴ける曲が多いのですが、出た頃は選曲の良さもあり夢中になって聴いていた覚えがあります。気取った原文ライナー(日本盤に訳文あり)も当時当地の情況が垣間見られ、一見の価値ありなので、見かけたら是非買ってあげてください。

 以下、収録曲全曲とコメントをいくつか。



PSYCHEDELIA AT ABBEY ROAD 1965 TO 1969 PSYCHEDELIA AT ABBEY ROAD 1965 TO 1969

 EMIレコード創立100周年記念に絡んだ、去年から続いているアビーロードスタジオのヒストリーシリーズのサイケデリック編。

 こういうコンピュレイションものの宿命ですが、1993年にSEE FOR MILESから出た「THE GREAT BRITISH PSYCHEDELIC TRIP VOL.3 1965-1970」(EMI編)とダブる曲が結構多い。TOMORROWの「MY WHITE BICYCLE」(この手の編集盤では定番か?)やGENTLE GIANTの前身SIMON DUPREE...の「KITES」、その変名グループのTHE MOLES、ハードロックの先駆けともいえるLOCOMOTIVE、URIAH HEEPのKEN HENSLEYがいたTHE GODSの曲なんかが重複しています。

 DONOVANから始まってHOLLIES,PRETTY THINGSなどの割とメジャーなグループの曲に混ざって、TOMORROWの未発表曲(BYRDSの曲だがBYRDSよりも決まっている)やTWINKが絡んだAQUARIAN AGEとかレアそうな曲も少々入ってるのがさすが本家が出した編集盤というべきか商売が上手いというべきか。当然、権利関係のためかBEATLESやPINK FLOYDといったアビーロードスタジオの予算獲得に貢献したであろうビックネームは収録されていません。

 その他に、今回はじめて聞いた中では、TOMMY以前のWHOにも似たTHE N'BETWEENS(SLADEの前身)や間奏のハープシコードが心地よいTHE FINGERS、異色にもJIMMY WEBの曲を取り上げたTHE NOCTURNES、後半ブルージーに盛り上がるTHE KOOBASなんかが楽しめます。

 本家が出しているから当然かも知れませんが、TOMORROWの「MY WHITE BICYCLE」とか、音質は以前の編集盤より良くなっていると思います。(1998/09/27)



INSANE TIMES INSANE TIMES / VARIOUS ARTISTS

 2007年にEMIから出たサイケ・コンピ。10年ほど前に出した 「PSYCHEDELIA AT ABBEY ROAD」 とアーティストは結構被るが、曲は意図してか別のものを選曲している模様(それでも3曲ほどダブってますが)。

 SYD BARRETの話し声(と言われている)で始まるKEVIN AYERSの「SONG FOR INSANE TIMES」で幕を開け、最後はそのSYD BARRETの「NO GOOD TRYING」で〆ている。そういえば、そのどちらにもSOFT MACHINEのメンバーが参加していますね。さらに言えば前述の「PSYCHEDELIA AT ABBEY ROAD」もトリはSYDでした。「PSYCHEDELIA AT ABBEY ROAD」のパート2と言っても良いかもしれません。

 他のコンピ盤で聴ける曲や単体でCD化されたアーティストも多いですが、EMI本体が出したこと、オブスキュアなアーティストも少しは入れていること、小さいですがブックレットに貴重そうな写真も若干あること、が本盤の存在意義でしょうか。

 CDでは全25曲で80分近いですが、NETからのダウンロードだと、さらに5曲プラスされています。NETでのボーナス・トラックというのは新機軸。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



THE PSYCHEDELIC SCENE THE PSYCHEDELIC SCENE/VARIOUS ARTISTS

 DECCA/DERAM音源による編集盤シリーズのサイケデリック編。MODSなグループが多くいたレーベルの為か、全体的にはおサイケというよりはガレージな印象。R&Bのカバーから始めたフォーピースバンドがサイケな装いをしてるような曲が多く、ハーモニーを売り物としてるグループは殆どいないので、サイケでもソフトロックぽいのは好きだけどノイジーなのは嫌いという人は避けたほうが良いと思います。

 収録曲は、アシッドな曲、ハードロックの原型のような曲、内省的でなよなよした曲、シングル向けな派手でポップな曲の大体4つのタイプに分かれます。

 アシッドな曲としてはBILL WYMANがプロデュースしたTHE END、WORLD OF OZ、KEITH SHIELDSあたりがいい出来。

 ハードロックの原型のような曲としては、JIMI HENDRIXやCREAMの影響を受けたと思しきTINTERN ABBEYやACCENTがあげられる。ボー・ディドリーなリズムに重いハモンドが響くCURIOSITY SHOPPEの「BABY I NEED YOU」もこのタイプか。

 3つめの内省的な曲としては、PATTOの前身にあたるTIMEBOXの曲が不思議な魅力を持ってます。曲中盤から切り込んでくるギターがカッコイイ。MOODY BLUESの曲は「サテンの夜」以前のシングルですが、彼らがメロトロンを最初に使った曲だと思います。THE FAIRYTALEの「GUESS I WAS DREAMING」や23RD TURNOFFの「MICHAELANGELO」、THE SOCIETIEの「BIRD HAS FLOWN」もいい出来

 4つめのシングル向けな曲としては、後の10CCのメンバーであるGRAHAM GOULDMANのペンによる「SAD AND LONELY」がまるでSTONESの「SYMPATHY FOR THE DEVIL」をファンキーにしたような趣きで面白い。ANDY FORREYの「DREAM WITH ME」は、TOMORROWの「MY WHITE BICYCLE」なみに音の位相が滅茶苦茶な曲。最後のWARM SOUNDのすっとぼけた曲も爽快。

 ライナーノーツのデザインがサイケで素晴らしい。写真も恐らく貴重なものばかりでしょう。TIMEBOXやWORLD OF OZのこれほど鮮明なポートレートは見たことがありません。(1999/09/05)



PSYCHEDELIC JUMBLE VOLUME ONE PSYCHEDELIC JUMBLE VOLUME ONE : WHAT'S THE RUSH, TIME MACHINE MAN? / VARIOUS ARTISTS

  「THE REV-OLA ROCK MACHINE TURN YOU ON」 で予告されていたオムニバス盤で、サイケ・ポップ界(のみ)で名を知られるアーティストの未発表曲集。発掘していただいたのは非常にありがたく、さすがREV-OLAレーベルですが、THE MAJORITYはシングル曲含め、まず単独CD化して欲しいところです。

 どの曲も音質が非常に悪いのは、雰囲気を出すためにあえて修復しなかったのか。VOLUME ONEと銘打ってますが、まだネタがあるのか。ともかく上級者向けな一枚。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



FAIRY TALES CAN COME TRUE FAIRY TALES CAN COME TRUE / VARIOUS ARTISTS

 PSYCHIC CIRCLEシリーズの第一弾はこちらのようです。UK POPSIKE FROM THE LATE 60'Sとも題されていますが、次の「WITH THE SUN IN MY EYES」に比べて、ハーモニー・ポップ/ソフト・ロック寄りのコマーシャルな曲が集められています。

 これといったキラー・チューンは無く、最初聞いたときは非常に地味な印象でしたが、何回か聴くと、どの曲もサイケ・ポップとしてそれなりに光るものを感じてきます。最初地味に思えたのは、どれも(売れなかったものの)コマーシャル志向でエグい曲が無いからでしょうか。初CD化の曲も多いことから、この手のコンピをさんざん聴いてきた「上級者」向けの一枚と言えるかとも思います。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



FAIRY CAKES FOR TEA FAIRY CAKES FOR TEA : FAIRYTALES CAN COME TRUE VOLUME 2 / VARIOUS ARTISTS

 20 PREVIOUSLY UNCOMPED POPSIKE GEMS 1966-71と副題のついたFAIRYTALES CAN COME TRUE第2幕。2007年のサイケ・ポップ界で大活躍したPSYCHIC CIRCLEシリーズからの一枚。今回もがんばって未CD化の佳曲を集めてきており、こちらの頭の下がるような熱意と誇りはライナーノーツからも充分伺えます。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



LET'S RIDE : FAIRYTALES CAN COME TRUE VOLUME 3 LET'S RIDE : FAIRYTALES CAN COME TRUE VOLUME 3 / VARIOUS ARTISTS

 20 POPSIKE EXCURSIONS FROM THE UK & EUROPEと副題がついた、FAIRYTALES CAN COME TRUEシリーズ第3弾。またしても20曲収録。今回はUNIT 4 + 2やTONY HAZZARDなどCD化済みの曲も含まれているため、PREVIOUSLY UNCOMPEDと銘打つことが出来ませんでしたが、それでもこれだけのクオリティの曲を集めてくるのはさすが。

 またタイトルに「らしからぬ」ROGER NICHOLSのソフト・ロック有名曲カバーを持ってきましたが、その曲に合っていると思えないファンタジックなイラストのジャケット。うちの妻がそれを見てぽつりと「アーサー・ラッカム」。有名な挿絵画家のようです。前2巻のジャケイラストも同じ人によるものかは確認取れませんでした。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか記載。



WE ALL LOVE THE HUMAN RACE : FAIRYTALES CAN COME TRUE VOLUME 4 WE ALL LOVE THE HUMAN RACE : FAIRYTALES CAN COME TRUE VOLUME 4 / VARIOUS ARTISTS

 20 PREVIOUSLY UNCOMPED TRACKS OF A POPSIKE NATUREと副題がついた、FAIRYTALES CAN COME TRUEシリーズ第4弾。20曲収録というのはもう縛りなのでしょうか。今回はPREVIOUSLY UNCOMPEDと銘打ってますが、表題曲はWAYNE FONTANAの単独CD盤に収録済。その他DAVE BERRYやPLASTIC PENNYなどこの手のコンピ盤に入れるには少々有名すぎる「大物」も若干いますし、発表年度のクレジットが無いのは残念ですが、サイケ・ポップのコンピ盤シリーズとしてほぼ唯一現存するだけに、頑張りに感謝です。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか記載。



WITH THE SUN IN MY EYES WITH THE SUN IN MY EYES / VARIOUS ARTISTS

 20 PSYCHEDELIC SPINS FROM THE UK & EUROPEとも題された、PSYCHIC CIRCLEというシリーズの最初のコンピとのこと。ポップながらビザールなストレインジな曲、サイケを引きずったプレ・ハードロックやプレ・プログレ風の曲、変なエフェクトが入る曲、ガレージ風のオルガンやファズ、シタールが活躍する曲などを集めた、という印象です。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



THE REV-OLA ROCK MACHINE TURN YOU ON THE REV-OLA ROCK MACHINE TURN YOU ON / VARIOUS ARTISTS

 REV-OLAレーベルのサンプラー盤といえるオムニバス盤。非常に安価でしたが、CD購入者のために未収録曲やこの先リリースされるオムニバス盤収録予定曲も入っているのは良心的。トレイ裏にCDのカタログがありますが、個人的には殆んど持っているのだったので苦笑しました。ついでに言えば、REV-OLAレーベルの親元であるCHERRY REDも、かつて安価なサンプラー盤(「PILLOWS & PRAYERS」)を出してましたが、私の世代的には忘れられないアルバムでした。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



SIXTIES YEARS VOLUME 5 SIXTIES YEARS VOLUME 5 / VARIOUS ARTISTS

 フランスのMAMプロダクションから出ている、FRENCH 60'S SP COLLECTIONと銘打たれたシリーズ。美麗なジャケでコレクターを誘惑するフランス盤シングル収録曲をあつめた編集盤。このCDのジャケにも収録曲のジャケがのってますが、もっと大きく写して欲しいとこです。これは五巻目ですが他のやつは見たことがないので不明。MAMプロダクションの公式サイトでも詳細はよくわかりませんでした。

 収録されたアーティストは8組。最初はTRIFLEというホーンセクションを含むグループ。STONESの「SYMPATHY FOR THE DEVIL」を思わせる「DEVIL COMIN'」となんとなくPATTOっぽい叙情のある「OLD FASHIONED PRAYER MEETING」の2曲。怪しげでアングラっぽい香りに溢れている。ホーンも結構格好いい。

 次は「KITE」のヒット曲を持つ、GENTLE GIANTの前身SIMON DUPREE & THE BIG SOUNDが4曲。デビュー曲でもある「I SEE THE LIGHT」はSTEVE MARRIOTTも真っ青な猪突猛進型R&B。気合いの入り具合が凄い。後半音が悪いのが残念。その他の3曲はMANFRED MANN風でキャッチーなサイケポップ。2曲でメロトロンが聞こえる。

 3番目はTHE TREMELOES。本盤のラインナップでは、古色蒼然なビートグループに聞こえる。4番目はTHE IDLE RACE。「DAYS OF THE BROKEN ARROWS」(もちろんシングルバージョン)と「WARM RED CARPET」の2曲を収録。5番目はPAUL REVERE AND THE RAIDERS。歯切れの良い「HIM OR ME - WHAT'S IT GONNA BE」と「LEGEND OF PAUL REVERE」の2曲を収録。

 6番目はTHE LOVE AFFAIR。最大のヒット曲「EVERLASTING LOVE」とそのB面「GONE ARE THE SONG OF YESTERDAY」の2曲。そのB面曲は初めて聴きましたが、渋いバラードでめっけものです。7番目はKEITH RELF。YARDBIRD在籍時に出した2枚のシングルのうち、1枚目のAB面を収録。その「MR. ZERO」「KNOWING」ともにMOODY BLUESのJUSTIN HAYWARDを思わせるジェントルで朗々と歌い上げる曲。

 最後の8番目は個人的には目玉、CONSORTIUM。唯一のヒット曲「ALL THE LOVE IN THE WORLD」とそのB面曲「SPENDING MY LIFE SAYING GOODBYE」、次のシングルであり、爽やかな「WHEN THE DAY BREAK」(コーダ部分のコーラスはまるで「CALIFORNIA GIRLS」)とそのB面で転調を繰り返しやはり魅力的な「THE DAY THE TRAIN NEVER CAME」(これは彼らなりの「HEROES AND VILLIANS」か?)を収録。この4曲はすべてメンバーのオリジナル。彼らの曲にハズレはありません。前身のWEST COAST CONSORTIUMを含む、彼ら名義の曲をあつめたアルバムが出ることを望んでいます。(2001/12/16)



SUNDAY SUNSHINE - THE WORLD OF SNB RECORDS SUNDAY SUNSHINE - THE WORLD OF SNB RECORDS / VARIOUS ARTISTS

 YARDBIRDS等、英ロック界の有名マネージャーとして知られるSIMON NAPIER-BELLが作ったSNBレーベル曲集。CBS傘下で1968年4月から1969年9月までに25枚のシングルをカタログに残すという短命レーベル、且つチャートインした曲無し。あのMELLOW CANDLEもいたりしますが、本業は女優や俳優というシンガーも多く、芸能界臭さもあり、アンダーグラウンドやアシッドさはほぼ皆無。というものの、時期的にサイケ・ポップとしても聴ける曲も多いし、全体に漂う華やかさはソフト・ロック/ハーモニー・ポップとしても上等の部類と思います。また音質が良好なのも嬉しい。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか記載。



SOMETIMES I WONDER THE PSYCHEDELIC POP SOUND OF PRESIDENT SOMETIMES I WONDER THE PSYCHEDELIC POP SOUND OF PRESIDENT / VARIOUS ARTISTS

 PRESIDENTおよびその傘下レーベルの作品から編集されたコンピ盤。1967〜1971年、特に67年と69年の作品が中心。編集者の意図か、それともレーベルのカラーか、派手なアレンジや仕掛けのある作品は少なくて、バンドを感じさせるストレートな演奏ながらもポップさを感じさせる曲が多い。

 以下、気になった曲をピックアップ。



SWEET FLORAL ALBION SWEET FLORAL ALBION / VARIOUS ARTISTS

 23 POP & PSYCH GEMS と銘打たれた、「WE CAN FLY」コンピ盤シリーズと同じPAST&PRESENTレコードから出たコンピ盤。大まかに言って、R&B〜モッズを経たロック・グループがシングル向け発表したメロディアスな曲達を集めたという印象。そして英だけでなく、オーストリアやニュージーランドのアーティストも割と多い。いくつかKEVIN AYERSやTHE SWEETといった似つかわしくない「大物」もいますが、なかなか良い曲が揃ってます。

 以下、気になった曲を羅列します。



SWINGING IN THE 60S SWINGING IN THE 60S VOLUME ONE/VARIOUS ARTISTS
SWINGING IN THE 60S VOLUME TWO/VARIOUS ARTISTS

 再発レーベルREPERTOIREが出した「THE SOUNDS OF SWINGING LONDON」とコピーをつけたオムニバス。VOL.3があるかは不明。観光パンフような安げなジャケットがちょっと恥ずかしいが、気軽に聴けば結構楽しめるリーズナブルなコンピ盤。収録曲は有名ヒット曲ばかりですが、いくつか気になる曲もあります。

 VOL.1ではまずMARQUIS OF KENSINGTONの「FLUSH」、インストだけど当時西ドイツのみでリリースされた曲。DAVID & JONATHANの「LOVERS OF THE WORLD UNITE」はソフトロック関係では有名なCOOK=GREENAWAYコンビ作の、清潔感あふれる爽やかな曲。CHRIS ANDREWSの「YESTERDAY MAN」は後にROBERT WYATTがカバーした曲のオリジナル。透明感あるROBERT WYATTのバージョンより、こちらの方がイギリスな臭みがあります。

 VOL.2ではNEIL CHRISTIANの「THAT'S NICE」。この人はPYEから「YOU'RE ALL THINGS BRIGHT & BEAUTIFUL」というサイケ・ポップなシングルを出してますが、これはそれ以前のモッズな曲調。ソウルフルだけど、ちょっと甲高く少々コミカルなボーカルです。HONEYBUSの「I CAN'T LET MAGGIE GO」はRIPPLESのコンピ、特にVOLUME 3に入っていそうな秋っぽい曲調。PLASTIC PENNYの「EVERYTHING I AM」はしわがれ声と室内楽的なストリングスの組み合わせがおもしろい。(2001/02/04)



SWINGING LONDON SWINGING LONDON / VARIOUS ARTISTS

 廉価盤専門のレコードレーベルSAGAから1968〜1970年に発表した曲を集めたオムニバス。「A TRUNK FULL OF 60'S POP EXOTICA」および「THE ACCIDENTAL GENIUS OF SAGA RECORDS 1968-1970」と副題がついている。

 収録曲はサイケ・ポップ、ブルージーなものから、ラウンジ、エキゾチックぽいインストまでかなり雑多ながら、それらがどれも当時の空気をパッキングして伝えるようで、まるでサウンドトラック盤のようでもあり、「SWINGING LONDON」というやや大それたタイトルも、けして誇張ではないように聴こえます。当時のシーンの中下層あたりを図らずも体現しているのではないでしょうか。

 このCDのジャケットにもオマージュされたFIVE DAY WEEK STRAW PEOPLE、はじめてSOFT ROCKという言葉をタイトルに使ったKATCH 22、それとTHE MAGICAL MIXTUREあたりが斯界で比較的知られるアーティストですが、ここで初めて聴いた匿名的インストも(期待していなかった割には)非常に味わい深い。

 またライナーによると、廉価盤レーベルだけあって、残されたレコードはどれもプアなジャケット状態にプアな音質だそうですが、ライナーにあるジャケのデザインは今から見ると興味深いし、音質もこのCDを聴く限りはさほど問題ないようです。

 以下、全収録曲を記載。



VOYAGE THROUGH THE SUGARCUBE VOYAGE THROUGH THE SUGARCUBE / VARIOUS ARTISTS

 BRITISH SIXTIES ACID OBSCURITIESと副題がついたコンピ盤。1998年にCDとLPで出たみたいです。ラリって倒れた?女性のイラストのジャケットですが、その裏は真っ白でライナーなし、トレー裏に曲目とアーティスト名と発表年度のみという無愛想さ。

 収録アーティストはR&B/モッズ・バンド上がりが殆どのように思えます。うっとおしいストリングスなど皆無。SIXTIESとありますが、1966年が2曲、1967年が5曲、1968年が9曲。ストレートなビート・ナンバーはそろそろ卒業したけど、ハード・ロック風やアンダー・グラウンドな暗く重い曲にはまだ手を染めていないという、時期的には私の好みとぴったりです。

 以下、全収録曲とコメントをいくつか。



WE ALL LIVE ON CANDY GREEN - ELECTRIC SOUND SHOW VOLUME ONE WE ALL LIVE ON CANDY GREEN - ELECTRIC SOUND SHOW VOLUME ONE / VARIOUS ARTISTS

 SOUND SHOWというレコード会社から出されたシリーズもの第1集。インナーには第5集まで予告されています。「RARE & OBSCURE SOUND FROM THE BRITISH SIXTIES PSYCHEDELIC ERA」とジャケットには記載されてますが、確かに無名なアーティストばかりで、しかもPREVIOUSLY UNRELEASEDの曲も多く、よく発掘してくれた、という感じです。第2集以降も楽しみです。

 以下、気になった曲をピックアップ。オルガンが目立つ曲が多いのは、選曲者の好みなのでしょうか。



WE CAN FLY UK PSYCHEDELIC OBSCURITIES WE CAN FLY UK PSYCHEDELIC OBSCURITIES/VARIOUS ARTISTS

 レーベルをまたいだコンピュレイション盤。ディストリビューション元は記載なく不明です。ソフトでおサイケな曲も幾つかありますが、ファズやオルガンをフューチャーした曲が多く収められてます。おそらく出自はモッズなグループが多いのではと思われます。

 では、オムニバス盤なのでまた、佳曲を拾っていきます。1曲めTHE PENNY PEEPSの「MODEL VILLAGE」はFLEUR DE LYSを思わせる、出だしにふさわしい軽快な曲。3曲めTHE MOVING FINGERの「PAIN OF MY HEART」は、まるでREMのマイケル・スタンプのような声質とストリングスの絡みが心地よい。5曲めTHE PEEP SHOWの「MAZY」はダルなボーカルとベースのリフ、間奏のジャカジャカしたカッティングが盛り上げてくれるが後半の展開はいまいち。8曲めTHE NEAT CHANGEの「I LIES TO AUNTIE MAY」はその昔SEE FOR MILESのコンピにも収められてました。YESのPETE BANKSが在籍してたとは思えないほどの室内楽的なアレンジ。

 11曲めはBRINSLEY SCHWARTSの前身、NICK ROWEがいたKIPPINGTON LODGEの「I CAN SEE HER FACE」。まるでLOVIN' SPOONFULのSUMMER IN THE CITYのようなハモンドのリフが出てくる湿っぽい曲。12曲めINFANTES JUBLIATEの「EXPLODING GALAXY」の安っぽくも大袈裟なとこには笑えます。トレモロなファズが大活躍する13曲めTHE SMOKEの「THAT'S WHAT I WANT」は意外にも本盤で唯一70年代の曲。15曲めAPPLEレーベルのTRASHによる「TRASH CAN」は主旋のメロディーは良いが、オルガンによる長く白熱した間奏はプログレを思わせます。

 16曲めTHE ORANGE MACHINEの「REAL LIFE PERMANENT DREAM」はTOMORROWの「人生と見果てぬ夢」のカバー。シタールは入ってないが、コーダでのMY WHITE BICYCLEのリフにはニヤリとさせてくれます。17曲めSERENDIPITYの「CASTLES」は大仰なイントロの割にはハープシコード(チェンバロか?)に乗ってなかなかキャッチーなメロディーが歌われる。19曲めKYTESの「RUNNING ON THE WATER」はほぼ全篇でテープ逆回転を使用。

 20曲めPORTBELLO EXPLOSIONの「WE CAN FLY」は本盤のタイトル曲ながら何ともなよなよした曲。途中(飛び立ったという歌詞の後で)ボサノバ調になるのが面白い。24曲めTHE FRUIT MACHINEの「THE WALL」はCIRCUS DAYSのコンピ盤シリーズに収録されていそうな曲。ラスト27曲めPETER COOK & DUDLEY MOOREの「THE L.S. BUMBLE BEE」は随所に挿入される語りも絶妙なスカした曲。ファルセットになるとこは後の10CCを思わせます。(2000/04/29)



WE CAN FLY 2 UK PSYCHEDELIC OBSCURITIES WE CAN FLY 2 UK PSYCHEDELIC OBSCURITIES/VARIOUS ARTISTS

 「WE CAN FLY」コンピュレイション盤シリーズ第2弾。第1弾にはクレジットがなかったのですが、PAST&PRESENTレコードというところがディストリビューション元のようです。第1弾同様、ファズやオルガンが前面に出たガレージ/R&B風の曲が多め。そして、まるでNUGGETSのBOXパート2を意識したかのように、イギリス以外の他ヨーロッパ諸国出身グループも割と多く収められています。

 1曲めSHY LIMBSの「TRICK OR TWO」はSTONESの「SYMPATHY FOR THE DEVIL」を快活にしたような、コンピ盤トップバッターにふさわしい曲。2曲めBRAINBOXの「AMSTERDAM,THE FIRST DAYS」はCREMEやJIMI HENDRIXの影響が濃厚。このグループは後のプログレグループFOCUSの前身だそうで、意外。3曲めTHE CEDARSの「HIDE IF YOU WANT TO HIDE」は本盤では比較的フォーキーで、一息つけられます。

 荒くれた音が続く中で、8曲めTHE THE MONTANASの「DIFFERENCE OF OPINION」はギターソロは割とフリーキーだし、最後にお茶目にGREENSLEEVESを弾いているけれど、行儀正しい音に聞こえます。9曲めTHE JULIAN KIRSCHの「CLEVER LITTLE MAN」はクラシカルなピアノが異色。

 12曲めWEST COAST CONSORTIUMの「COLOUR SERGEANT LILLYWHITE」はフランジャーがかったイントロを持つ、タイトル通りのサイケ・ポップ。しかし、メロディーが彼らにしては若干凡庸なのが残念。それに比べれば13曲めTAGESの「FUZZY PATTERNS」の方がサイケ・ポップとして完成度が高い。

 15曲めTHE PETARDSの「TARTAREX」はストリングスとバンド自身の演奏の絡みがなかなかスリリング。17曲めA.P.DANGERFIELDの「CONVERSATIONS」は曲調もメロトロンが入るとこもFLOWERPOT MENの「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」もどき、と思ったら同じ作者JOHN CARTERが書き下ろした曲のようです。18曲めに同じA.P.DANGERFIELDの「FURTHER CONVERSATIONS」は17曲目のB面だったと思われる続編のような曲。このあたりも「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」と同じ構造。21曲めJOY UNLIMITEDの「MR.PSEUDONYM」は収録曲中唯一の女性ボーカル。たおやかに朗々と歌い上げてます。いい曲ですが、本シリーズには似合わない気もします。(2002/01/27)



WE CAN FLY VOLUME 3 WE CAN FLY VOLUME 3 / VARIOUS ARTISTS

 「WE CAN FLY」コンピュレイション盤シリーズ第3弾。どうでもいいことですが、今回のサブタイトルはPSYCHEDELIC OBSCURITIES VOL 3 25 TRACK COLLECTION OF PSYCH RARITIES 1966-1971となっています。若干ガレージ寄りだった第2弾よりはソフトな聴きやすい曲が目立ち、聴きどころは多いように思えます。

 以下、気になった曲を羅列。(といってもほとんどになってしまいました。)



WE CAN FLY VOLUME 4 WE CAN FLY VOLUME 4 / VARIOUS ARTISTS

 「WE CAN FLY」コンピュレイション盤シリーズ第4弾。今回のサブタイトルは25 PSYCH RARITIES 1966-1971となっています(どうでもいいことですが半ばお約束(?)なので)。他のコンピレーション・シリーズで聴ける曲も結構ありますが、頑張ってレアでそれなりに聴けるものを集めました、というラインナップですね。

 以下、気になった曲を羅列。



WE CAN FLY VOLUME 5 WE CAN FLY VOLUME 5 / VARIOUS ARTISTS

 ねばり強く続く「WE CAN FLY」コンピュレイション盤シリーズ第5弾。今回はサブタイトルがありません。それなり(あくまでもそれなり)に知られたアーティストが多いので、今までのようなPSYCHEDELIC OBSCURITIESとか、RARITIESとかのサブタイトルをつけなかったのかも知れません。また、収録アーティストを紹介するライナーも無いという無愛想さですが、このシリーズは奇数巻の方が比較的当たり曲が多いという、セオリーは今回もあてはまったように思えます。

 以下、気になった曲を羅列。



WHITE BICYCLES WHITE BICYCLES ・ MAKING MUSIC IN THE 60'S THE JOE BOYD STORY / VARIOUS ARTISTS

 プロデューサーJOE BOYDのイギリス時代(1966年〜1971年)に手がけた代表的作品を集めたコンピレーション。曲はほぼ制作順に収録され、本人による曲解説はどれも内情が伺えて、興味深い。同名の書籍も出ている。

 彼は英サイケの発信地となったUFOクラブを運営し、初期のPINK FLOYDやSOFT MACHINEをプロデュースしたり、THE INCREDIBLE STRING BAND、FAIRPORT CONVENTION、NICK DRAKEを発掘したり、業界を去っていたVASHTI BUNYANのアルバム「JUST ANOTHER DIAMOND DAYS」のお膳立てをしたりと、米国出身ながらも英サイケやフォーク・ロックのまさに立役者。

 このコンピ盤を一通り聴いてみると、ライナーノーツで彼がTHE INCREDIBLE STRING BANDに関して述べた表現である「伝統音楽の読み直し」「世界を見る新鮮なやり方」「ありふれた事物の表面下に潜んでいる気分への感覚」は彼のプロデューサーとしての姿勢とも読み取れます。