水燿通信とは
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145号

プラハ再び(1)

旅の前のひとつのエピソード

 旅は往々にして出発する前から始まっている。
 最近、カードの引き落とし銀行を変更し、それに伴ってカード会社も新たにした。旅に出る前、そのカード会社のサービスを利用して、ホテルの予約をやってもらおうということになった。私たちはいつもホテルは予約なしでやっているが、今回はベルリン到着が夜9時過ぎになるので、それからホテルを探すのは辛いと思ったからである。そこでこれまで2度利用して気に入ったホテルの予約をお願いした。ところがカード会社からは「依頼されたホテルは予約でいっぱいなので、もし良かったら別のホテルを紹介する」との連絡が来た。しかし紹介されたホテルの宿泊費がかなり高額だったので返事を保留し、家族で話し合った結果、最初のホテルにこだわりたい気持もあり、こちらから直接当たってみようということになった。
 まず、私たちの希望したホテルに電話してみた。やはり予約でいっぱいだった。そこでガイドブックで良さそうなところを探し当たってみた。フランクフルトで泊まったことのあるホテルと同系列のところ、ここも空き室なし。更に3つ目も駄目とのこと。ベルリンの中心地にあるツォー駅から至近のホテルだけを選んだことが話を難しくしたのかもしれないが、立て続けに3つも断られたので少々焦り、この時期何かベルリンで催し物があるのか尋ねてみた。どうも銀行関係の大きな集りが予定されているようだった(後で、この時期にはドイツ祭りがあることを知った。あるいはこれも関係していたのかもしれない)。結局、ちょっと高いがカード会社で紹介されたホテルに当たってみることにした。ようやく空き室はあるとのことでほっとしたが、むこうの示す宿泊費を聞いてびっくり、カード会社の示した額よりおよそ100DM(ドイツマルク 約7000円)安いのだ。
 後日、KDDから来た請求書は次の通り。
通話日有料時間料金
9/2554秒234
1分12秒296
48秒208
5分36秒1088
(計4件 ¥1826)
 最後の1件は、当方の名前やカードの種類、番号などを尋ねられたので時間が5分あまりになり高くなったが、あとはわずかな額だ。結局ほんの数分で、旅行費用を5000円ほど抑えられたことになる。
 だが金額そのものよりも、この体験はなかなか興奮するものだった。いきなりドイツ語でまくしたてられたりして結構冷や汗をかいたりしたが(「グテンターク」とホテルの名前を聞き取るのがやっとだった)、それでも日本から遠く離れたベルリン、あの大人の風格をもった魅力的な街ベルリンと交信することができたのだから。
(1997年12月1日発行)

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発行人 根本啓子