「かききる」べきか「かききらざる」べきか、それが問題だ
その1
ロン・ジョンソン)

今回はロンジョンソン氏のフリースタイルの分析を和訳してご紹介いたします。
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フリースタイルの「フィニッシュ」については昔から変わらず、今でも同様に教えられています。しかし世界のトップスイマーの泳ぎをよく見た後には今までの教え方を考え直さなければならないと感じることでしょう。

1970年代から今日まで、フィニッシュは「最後までかき切りなさい」と教えられ、今でもプールサイドでは「親指が太ももの真ん中をさわるまで、最後までかき切りなさい。」とコーチが選手に声をかけています。
しかしトップスイマーはそういう様に、腕を伸ばしきってフィニッシュしてはいないのです。そしてそれが私には不思議でたまりませんでした。

なぜ私たちが教えられたようにしていないのに「彼らは速い」のかと。

1985年、私がアリゾナ州立大のコーチだったときにカリフォルニア大バークレー校との対抗戦で、あのマット・ビオンディを初めて見ました。最終種目の400ヤードリレーで私のチームのアンカー、Aジェームソンは100ヤードを44.0秒で、当時としてはかなり速いタイムで泳いでいたのですが、当時1年生だったビオンディは並ぶ間もなく彼を抜き去っていきました。42秒後半から43秒前半で泳いでいたに違いません。私はビオンディのコーチ、ノート・ソートンの所に行き「彼は史上最高のスイマーになるかもしれないね」と声をかけたものです。そしてその後の彼が世界最速の男になったのは皆さん知ってのとおりです。
ただそのとき私は「もう少し後ろまでかけばもっと速くなるだろうに・・・・」と思っていました。私には彼が腕を伸ばしきる前に、かき切る前にリカバリーを始めてしまっているように見えたのです。



水中でトップスイマーの泳ぎを見るとひじを伸ばしきっていないことがよくわかります。手のひらを「後向き」かつ「上向き」、「外側」に動かしながらフィニッシュしていますが、手は水着の下のところかもっと手前で水から抜けていきます。

△画像はA.ポポフのフィニッシュを水中から見たところ)

ロシアのアレクサンドル・ポポフは非常に早く水から手を抜いているような、フィニッシュが短い印象がありますが、その印象とは逆に他のどの選手よりも少ないストローク数で泳いでいます。(フィニッシュの最後ではひじから先に出て、そのひじも伸びきってはいません)


つづく

※文中の私とはロン・ジョンソン氏のことです。

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