田中雅美選手の泳ぎ その2

田中選手は他のトップスイマーの実に1.5倍の労力を必要としています。その2ではその原因について考察を深めてゆきましょう。


原因プルと頭の上がるタイミングにあります。(A)

1.プル
インスウィープ(広げた手を内側へかくとき)で下へ押え込むだけのプル(B)になっており、前へ引き上げる力よりも上へ押し上げる力のみが発揮されているのです。

彼女はアウトスウィープ(手を広げるとき)ですでに手のひらが下を向き、ひじも下を向いています(C)。そのためアウトスウィープからインスウィープへと転換するときには手のひら、ひじが下を向いたままです。インスウィープに変わって、本来なら斜め下向きに水を押さえ、体を前方に引き上げるところを下へ押え込むことしかできなくなっているのです。

手を下に押さえるだけなので肩は「なで肩」で上がり、ひじ先の向きも下向きになっています。
また体を前に引き上げる力がないために重心が後ろに残り、わずかではありますがお尻が落ちてしまっています。
そのためにキックの打ち出す方向が「後ろ」ではなく「下」向きになっているため推進力として十分に生かされていません。

2.頭の上がるタイミング

頭の上げるタイミングも田中選手は少し早すぎます。
彼女はインスウィープが始まる前に頭を上げ始めてしまっています。というより頭を上げて、それをより高く上げるためにインスウィープをしているようです。
「頭を上げて」→「手をかいて」→「さらに頭を高く」というリズムになってしまっています。
頭が先に上げることにより体のラインから頭が外れます。
外れることによりまたひじが落ちてしまいます。

また「頭を上げる」ことの反作用でお尻が落ちてしまいます。
お尻が下がることによりプルの時と同じようにキックの打ち出す方向が「後ろ」ではなく「下」向きになってしまうのです。
プルの上手な選手はもう少し遅いタイミングで頭が上がります。
「手のかき」→「頭の上がり」というリズムです。
ここで重要なのは頭は「上げる」のではなく「上がる」ということです。
正しいプルの動作と泳ぎの中でストリームラインを作り、それを大事にしていれば頭を無理に「上げる」必要はなく、「上がる」のです。
アウトスウィープからインスウィープの始まるときまでは頭を水面スレスレの位置に保ち、インスウィープの始まりとともに頭はいったん前に進み、インスウィープをより加速させて頭が上がります。
田中選手は体を高く上げることを強く意識しているために、「頭を上げる」という意識が強すぎるのではないでしょうか?

次回は正しいプルについて考えます。



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