世界のトップスイマー:Mバローマン

 下の表は1990年のグッドウイル・ゲーム男子200m平泳ぎのレースにおける4選手の1ストロークを分析したものです。
表1は1ストロークの中での水面からの腰の位置の最高点・最下点、肩の位置の最高点・最下点、呼吸時の水面と体の角度を表しています。
表2は1ストロークを4つの局面に分け、それぞれの局面での1ストロークにおける割合と1ストロークにかかる時間を表しています。
4つの局面とは

(1) プル局面      ……手を開き始めてから胸の下でかき終わるまで
(2) 無推進力局面……プルが終わってからキックが始まるまで
(3) キック局面      ……つま先を外に開き、キャッチをしてから蹴り終わるまで
(4) グライド局面……キックが終わってからプルが始まるまで
この4選手の中に世界記録保持者のM・バローマンがいますが、どれかわかるでしょうか?

まず表1から分かることはA、B,Dの選手は呼吸時の角度が大きく、Cの選手は小さいことです。
これはA、B,Dの選手は肩が最も上がる時に腰が最も低い位置にあるのに対し、Cの選手は肩が最も高い時に腰も最も高い位置にあるためです。
表2から分かることはCの選手の無推進力局面が小さくグライド局面が長いことです。
Cの選手は1ストロークの時間も短いので「無推進力」である時間はより短いことが分かります。
バローマンはどれか分かったでしょうか?
もちろんCの選手がバローマンです。
これまでのことで分かったことは
1、体は「上がる」が「起き上がって」、「立って」はいない。
バローマンのレース映像を見ると表1に表れているように、肩が非常に高く上がっています。上がっていますが水面との角度は実は小さく、言いかえるならば水面になるべく平行になっているということです。


 

したがって……

(1)上半身に伴って下半身(最も抵抗の大きい部分)も上がるために抵抗を少なく出来る。
(2)プルの力を上方向ではなく前方向に使っている。
(3)プルが終わった後に、より早くグライド(ストリームライン)に戻りやすい。


2、早いリカバリーと長いグライド
表には出ていませんがプルの時に他の3選手は胸の前で、呼吸時の最も角度の大きい時(=抵抗の大きい時)に手を一旦止めてしまいます。バローマンはかき始めからかき終わりまで手を止めることはありません。
そのため無推進力局面を小さくし、早いリカバリーを可能にしています。そして無推進力局面の代わりにグライド局面を長く取っているのです。
したがって……
抵抗の大きい局面の代わりに抵抗の小さい局面を多く取っている。

次回はどうすればバローマンのように泳げるのかです。


水泳教室インデックスへ酔水新聞トップページへ

ご意見ご感想はこちらまで