ブランド 買取 【蒼天・Party Room】神様、お願いっ!

神様、お願いっ!<2011時期はずし過ぎな大晦日小説>


「全く……男同士の会話ってのは、終わったの!?」

 あったかい緑茶を淹れてやりながら呆れたように私が言うと、寒そうに鼻を赤くした男連中がはぁはぁと寒そうな呼吸をしながら部屋の中に入ってきた。あれ、一人足りない?

「ねぇ、宮司は?」
「あぁ、先輩? なんかちょっと……まぁすぐ来ると思うよ」
「そう。帰ったわけじゃないのね?」
「何よ、帆波は諒太郎に帰って欲しくないわけ?」

 諒太郎、ですって? 何、このおっさん……なんでいきなりあいつとそんな仲良くなってんの? いったい何を話してきたんだか……。思わず笑ってしまった。

「料理をあいつの分まで頼んだから言っただけよ」
「な〜んだぁ。つまんねーの!」

 そう言いながら脱いだコートを航に渡す。航は何も言わずに二人分のコートを置きに自分の部屋に入って行った。

「ほら、これ飲んで。寒かったでしょう。何を話してたんだか知らないけど、立ち話なんかじゃ風邪ひくわよ? 言ってくれれば私がここ空けてあげたのに」
「ここは姉ちゃんちだろ? 姉ちゃんが出てってどうすんだよ」

 戻ってきた航がそういいながら椅子に腰掛ける。
 手にしたお茶はすぐに飲まず、湯呑みを両手で持ってかじかんだ手を温めていた。

「ほら、これ。おっさん」

 航がそう言っておっさんの方に湯呑みを一つ差し出した。
 おっさんがぺこっと頭を下げて、それを片手で持ち上げる。熱そうに、指先だけで……。

「なぁ、帆波。料理まだ来てないよな?」
「来てないわよ? 何、そろそろ?」
「あぁ。そのハズなんだが……」

 そう言われてやはり確認したくなる。また……会えないだろうか。

「ねぇ。料理持ってくるのは誰?」

 その言葉に答えようと、おっさんは熱いお茶を顔を歪めて無理矢理喉の奥に流し込むと、そのまま少し首を傾げて言った。

「さぁな。誰かな。でもお前のご両親なら今、俺んとこいるぞ。どういう仕組みになってんだか知らないが、まぁこの世で言うところの人材派遣会社から派遣されてきたってとこかな。俺んとこで働いてる」
「え? おっさん、マジで!? また会えんの?」

 航が喰い付いてきた。いや、私もそれ、気になるんですけど!!

「さぁな。何かあれば会えるかも知れんが……あれ、おじさんよりかあっちに会いたいカンジですか?」
「当たり前じゃない!!」

 あ、ちょっとかわいそうだったかな? ……ぷっ、おっさん、ちょっといじけてるよ。

「こ、今回は来ないと思うよー。おじさん、来いって言ってないしー。諒太郎もいるからいろいろまずいんじゃないかって思うしー。別にいいけどさぁ……」

 その時、外階段を勢いよく上ってくる複数の気配。何? ナニゴト!? そして次の瞬間、玄関のドアが勢い良く開いた。

「おい、帆波!」
「帆波! 俺のかわいい帆波はいるか!?」
「何よ、大声で! いるわよ、ここに!!」

 その声は……一つは宮司だけど、もう一つは……。

「おい、帆波。ちょ……おい。なぁっ、なんでお前んとこのおじさんとおばさんが来てんだよ!?」

 え? 何!?

「ちょっと帆波、いいか? お前、なんでここに宮司んとこの息子がいるんだ? こいつ、祥太郎んとこの息子だろう? このムカつく面構え。そっくりじゃないか!」

 え? 祥太郎? って、何? って、あれ? お父さん???
 来ないんじゃなかったの!? 言ってる先から、思いっきりご対面してるじゃない!!

「何? おじさんとおばさん生きてんの!? え? 何これ?」

 まいった。『みやじはこんらんしている』だわ。あー、なんか大変なコトになってる。ちょっとこれ……どうすんの? 頭抱える私、玄関でいがみ合う宮司とお父さん。そしてその背後に……。

「ちょっと、あなた。そして諒太郎君。私に重たいもん全部持たせて、男二人で何やってんのかしら?」

 怒りが頂点に達してる……お母さん。何なの、この状況!?

「だって、お前。こいつ、うちの帆波に……まったく親が親なら子も子だな」
「祥ちゃんとこの子は関係ないでしょう! だいたい私は結局あなたのところに嫁に来たんだから、もういちいちそういう事グダグダ言わないの! そういうの、何とかの腐ったのって言うのよ、知ってる!?」
「あの野郎……母親がダメだったからって、息子を送り込んでくるたぁいい度胸だ。俺が死んでいねぇからって、ナメたマネしやがる」
「そんなわけないでしょう!! いいから早くこれ持って! 重たいのっ!!」

 そう言ってお母さんがスーパーの袋みたいのとかいろんなのを宮司とお父さんに押し付けてる。な、何やってんの、あの人達は……。

「おー、遅かったじゃねぇか。あれ、何? 二人は諒太郎と面識あんの?」

 おっさんはさも知りませんでしたってな言い方してるけど、あれは知ってたな。まったく!

「そうなんですよ、友達の息子さんで……あ、帆波ちゃーん!」

 お母さん、すっごい笑顔で手を振ってるけど……私はその手前の宮司とお父さんが気になって仕方がないんデスガ! なんかものすっごく険悪なんデスガッ!! なんなの、いったい!?
 あれ、そういやさっき宮司ってば私の事を帆波って言った?

「おぉ〜! 俺も手伝う手伝う〜!!」

 のん気な航が私を追い越してみんなの荷物を取りに玄関に飛び出していく。それぞれにすごくいいニオイを漂わせた袋や包みを持って、どやどやと部屋の中へと押し寄せてきた。私は一人玄関に残って、めちゃくちゃに脱ぎ捨てられている靴を揃えていた。そこにふらりと戻ってきた人が一人。

「おい……どういうコトか説明しろよ、帆な……望月」

 宮司! まぁ、そうだよね。思わず溜息を一つ。

「いいよ、帆波で。そうね……どっから話したらいいのかわかんないし、とりあえずみんなと一緒に何か食べない?」

 そう言って立ち上がると、目の前の宮司は何だか困ったような何とも言えない顔をしていて、目が合うと思いっきり逸らされた。

「何それ、カンジ悪っ」
「……うるせぇよ」

 なんだ? なんだなんだ???
 去年以上に賑やかな我が家。航と二人で過ごすハズが何とも賑やかな大晦日。
 気が付くとダイニングはもう大騒ぎで、お父さんとお母さんと、宮司と航と、おっさんと……そして私。みんな笑ってて本当に楽しくて。それは本当に、神様がくれた素敵な時間って言ってもいいくらい。あ、そういえば本当に神様がいるんだったわ、おっさんだけど。時々宮司が話はどうしたと言いたげにこっちを見てるけど、何を話してもきっと全部作り話って思うんだろうな。


 さて、まずは何から話そうか。
 それはもう、こんな夢の続きみたいなホントの話……――。



== The End. Thank You!! ==

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