「あれ、今日3日か。ひな祭りだね。」
「そうだよ。」
「じゃあ男の子がそうじで女の子はなしね。」
「ヤッター!」
女の子の歓声をうち消すように
「えーそんなのずるいよー。」
と男の子達のブーイング。
「1年に一回なんだからいいでしょ。」
と私。
「絶対ダメ!」
「俺掃除やらないもん。」
「いつもさぼってばっかりなんだからたまにはいいでしょ。」
と女の子。
「何だよ!そんなの関係ないだろ!」
「わかった。わかった。じゃあさ。男の子は5月5日はなしということでどう?」
「イェーイ!」
5月5日は祝日です。
「お休みの人に【元気になってねカード】を書いてあげてね。」
帰りの会で休んだ子供のために連絡カードを書いています。
「先生にも書いてあげようか?」
わたしも体調が悪く一日ぐったりしていました。
「ありがとう。優しいね。でも、先生には書かなくていいよ。」
「ちがうよ!先生【元気になってねカード】じゃなくて【ベンピになってねカード】だよ。」
やはりその夜熱がでました。
「今日、ホワイトデーだからクッキー買ってきたよ。」
「やったー!」
「何喜んでいるの?男の子にはないよ。」
わざと意地悪を言って男の子をかまいます。
「先生、いい男はちがうね!」
「先生優しいじゃん。」
女の子のうれしそうな声。
「あ〜一口でいいからちょうだい!」
「ダメダメ!今日は女の子にあげる日。」
と言いながら女の子だけに配っていきます。
「いいでしょ〜。」
女の子も意地悪く男の子に見せびらかしています。
もちろんそのあと男の子にも配りました。
そしてみんなで食べはじめると
2口ぐらいの大きさのクッキーを
チビリチビリ30分もかけて食べている子がいます。
男の子がクッキーを食べながらぼそっと一言。
「あ〜あ。毎日こんな日が続けばなぁ。」
「先生、このクッキー2組だけ?」
「1組にもあるの?」
矢継ぎ早に質問をしてきます。
「もちろん1組にだってあるよ。」
と返事をすると
「えーずるい!」
「何で1組も食べるの!」
と口をとがらせています。
「ずるいって2組だけで食べる方がずるいでしょ。」
と私。
「だって先生2組の先生じゃん。何で1組に買ってくるの。」
「そうだよ。」
「俺達だけが食べるのがいいんだよな。」
「先生わかってないよな。」
「先生手洗った?」
「洗ったよ。たしか3年ぐらい前に1度洗ったことがあるよ。」
と適当に返事をしました。
「何だよ先生きたないなあ。」
みんな一斉に声をあげます。
元気な男の子が勝ち誇ったように
「先生俺なんか最低1日1回は手を洗うぞ!」