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UltraVapochill 第1回稼動報告

LastModified 03/03/10

 「やらなくていいことか、やるべきことかは・・・すべては俺が決定する!!
(島本和彦著 「吼えろペン」より)

2001年11月末にUltraVapoを入手して以来2ヶ月。未だ本格的なOverclockを始められずにいる四万十川ですが、その間にも常用化を始めるべく色々と四苦八苦しておりました。まあ、初めてのP4プラットフォームという事で、BXに慣れた身としてはなかなか勝手が判らないことも多い所です。とりあえず今回は、第1回稼動報告という所で、UltraVapo入手依頼の四万十川の活動をご報告してみたいと思います。


1. UltraVapoへのマザー実装

今回のUltraVapoを製作して頂くに際しては、当初はAthlonをターゲットに考えていましたが、丁度リリースされたばかり(2001年9月)のSocket478のソケット周辺が余りに広大なスペースが空いている事を考慮して、PentiumWをターゲットとする事にしました。設計・採寸の為購入したのは、Epox EP-4B2A + Penitum4 1.8GHzです。

基本的にはSocket478マザーであれば実装は可能ですが、マザーベースを断熱ベースのサイズに切り欠いている関係上、Socketの位置が極端に違うマザー(GIGABYTEの様にSocket478が90度回転している物)については、マザーベースへの追加工が必要となります。

完成したUltraVapoに、Epox EP-4B2A + Penitum4 1.8GHzを装着して最初の稼動テストを行った所、EVAは-40℃以下なのに、CPU内部温度がBIOS読みでは80℃という訳のわからない現象が発生しました。当初は、EVAの密着を断熱ケース内に挿入した発泡ポリエチレンの圧縮にしていた為、密着不足ではないかと疑いmasamotoさんに密着用スプリングを製作して頂いたりしましたが、状況は変わらず・・・

これは、氷点下のコア温度をうまくモニターできていないだろうと結論付けてやはりサーマルダイオード出力を取り出すしかないと考えました。折しも、気が付けばIntel845Bstepがリリースされて、一気にP4プラットフォームもDDR化の兆し・・・どうせ改造するならと同じくEpox のDDRマザー EP-4BDA/2+を購入してしまいました(^^ゞ なんだかんだやってるうちに、ここまでで既に2001年も暮れになっていました・・・


2. EP-4BDA/2+ のサーマルダイオード出力

EP-4BDA/2+で使用されている温度計測チップはWinbond製のW83627HFというLSIです。機能的にはお馴染みのW83782Dと全く同じです。実は、折りよくおのさんがHPにおいてABIT SA6についての記事をUpされていたのですが、使用されているLSIが同じW83627HFだったのです。よって全面的に参考にさせて頂きました。

W83627HF

左(C4)がカソード、右(B3)がアノード

当初は、W83627HFへの接続を切り離したら何が起こるか判らなかったので、接続はそのままで出力を取り出す方法についておのさんにメイルでご相談させて頂いたりしていたのですが、別電源を用意する必要があったりとなかなか面倒な事が判ったのでえいやとW83627HFへの出力を切り離す事にしました。

ちなみに、Socket478の場合はピンが裏面に貫通していません。よって出力はモニタチップの近くのパターンから直接取る事になります。これが結構厄介です。

101pinがR38に、103pinがR38とC27に接続されています。よって、C27を除去してカソード出力を取り出し、R38を除去してアノード出力を取り、103pinをカットすればサーマルダイオード出力を取り出せます。

ただ私の場合、アノードがR38のランドに接続されていると理由もなく思い込んでパターンをカットしてしまいました、気が付いた時には後の祭り・・・・103pinのパターンに直接内部で配線されていたんです・・・・結局四苦八苦して103pinのパターンからR38のランドまでジャンパで出力を取り出すこ事で事無きを得ました。

失敗例

103pinからR38ランドまでジャンパを配線

最終的な較正ですが、マザーごと冷蔵庫に放り込んでP4のIHSに貼り付けたサーミスタで計測した温度との間で測定を行いました。これでお手軽に-23℃迄冷やすことができます。高温側は電気毛布で暖めた布団の中で入れて33℃迄とっています。プラスマイナスで、56℃の幅での較正なので精度的には少し?な部分もありますが、とりあえず良しとします。最終的には、いとうさん簡易較正法でわずか半日できっちり較正できました。

四万十川家の冷蔵庫(嫁が凄く嫌な顔をしたのは云うまでも無い)

いとうさんによると、モニタチップへの出力をカットする事でCPU速度が緩慢になるという現象が確認されています。しかし、EP-4BDA2ではその現象は確認できませんでした。BIOSメニューにThermalThrottoringという項目があり、発熱が大きい場合の動作(何%の速度でCPUを動かすか)が設定できる様になっていますが、そこをDisableに設定していた為かもしれません。


3. EP-4BDA/2+のコーティング

万一の結露に備えてSocket周りにはコーティングを施しておきます。今回は以前から買ってあったブラスティ・ディップ液状ゴムスプレーを使用してみました。以前とあるHP(URL失念)で見て買っておいたものです。東急ハンズで\2000でした。丁寧にマスキングして4,5回吹き付けします。厚塗りすると、後でも結構ペリペリと剥がせます。

今回は赤のスプレーを使ったので部分的にシ○ア専用となりました(笑)

ここまでの作業で、四万十川の2002年の正月が過ぎていきましたとさ(笑)


4. 各部温度のモニター

エバポレータの温度モニターにはOMRON製温調器 E5CNを調達して頂きました。T型熱電対(−200℃迄計測可能はエバポレータの根元(真鍮製スプリングガイドの切り欠部分)にテフロンテープで取り付けられています。

コンプレッサ用にはOMRON E5CW+K型熱電対を使用します。このE5CWもmasamotoさんから頂いてしまいました。K型熱電対については、出張のついでに秋葉原の坂口電熱で購入しました。こちらの手引きに従って加工しました。

スプリングガイド切り欠部に熱電対を取り付け 左はエバポレータ温度、右はコンプレッサ温度

最終的に、温調器はアルミケースに収めてUltraVapoの上に設置しています。


5. PentiumW 1.8GHz装着状態における稼動試験

下のグラフはUltraVapoに、Epox EP-4BDA2 + P4-1.8GHz(Vcore1.75V)を装着し、室温:22℃における起動時の温度変化をトレースした物です。(IntelのデータシートによるとP4-1.8GHzの発熱量は66Wとなっています)

コア温度は、P4のサーマルダイオード出力を、EVA温度は根元にT型熱電対を設置して計測しています。断熱 ケース 横M/B 温度 についてはサーミスタでの計測値です。

起動後10分後においては、瞬間ながらコア温度は最低-58℃にも達しています。これは、起動時の冷媒が安定して流れる前の一瞬の現象の様です。無負荷時には、サーマルダイオードによるコア内部温度がエバ温度より低めに出ていますが、これはEVA内の底面に冷媒を直噴している事によりコアの方が冷えているという事が考えられます。起動後約15分で-43℃で安定しています。

起動20分後にWindowsMeを起動していますが、Win起動後にはコアは-38℃で安定します。

下の表は、Superπ209万桁を実行して負荷をかけた場合の温度を見た物です。これを見る限りでは、負荷の有無に関わらずEVAは-42℃。コア内部温度は、負荷時-28℃、無負荷時-37℃という感じです。

時間(min) EVA温度(℃) コア温度(℃) 断熱ケース横M/B温度(℃) 蒸発圧(Mpa) 凝縮圧(Mpa)
1 -42.0 -28.0 22.1 0.00 1.15
2 -42.0 -28.6 22.1 0.00 1.15
3 -42.0 -28.0 22.1 0.00 1.15
計算終了
4 -42.0 -36.0 22.1 0.00 1.11
5 -42.0 -37.1 22.1 0.00 1.11

次の表は、3Dmark2000のデモモードを15分間ループさせて負荷をかけた際の温度を見た物です。これによるとEVAは、負荷時-38℃、無負荷時-42℃。コア内部温度は、負荷時-27.3℃、無負荷時-37℃となります。傾向的には、Superπ209万桁の場合とほぼ同様です。

時間(min) EVA温度(℃) コア温度(℃) 断熱ケース横M/B温度(℃) 蒸発圧(Mpa) 凝縮圧(Mpa)
0 -41.0 -37.0 28.2 0.00 1.15
15min loop -38.0 -27.3 30.9 0.00 1.20
ループ 終了
終了後3min -42.0 -37.1 30.9 0.00 1.20

どちらのケースでも負荷時には、EVAとコアの温度差が10℃以上発生してしまう事になります。熱伝導がIHS面積のみである事を考えればこれは致し方ないといえるでしょう。ここら辺のセッティングも今後の課題です

3Dmarkを15分ループさせた際には、断熱ケース横のマザー温度が30℃にまで上昇しています。今回は、ケースのシステム収容区画の廃熱は電源ファンだけしかしていない事が原因ではないかと思われますが、思った程CPUの冷却の影響はなさそうですね。ヒータ制御は必要ないかもしれません。

此処までの状態で、CPUコアは-28〜-37℃と極低温で安定した状態となります。このまま1時間以上、Windowsを使用してみましたが完全に安定して稼動します。


6. いよいよOverClock

此処までかかってやっとUltraVapochillにマザーをCPUを装備して安定稼動させる事ができました。ようやく本番のOverClockを開始できます。しかし、グリグリに慣れてしまった身としては今更BIOSでClockを調整する事などできません、ええ、できるもんですか!

という訳でTurboPLLモジュールを取り付けるべく改造した所このていたらく・・・・・・・結局、にっちもさっちもいかずにヒロ坊さんに泣き付いている所っす・・・・お恥ずかしい・・・・・


7. 独り言

という訳ではなはだ中途半端ではありますが、こんな形でまずは第1回稼動報告をお届けしました。折角、masamotoさんが技術の粋を凝らして製作して頂いたUltraVapoを、早速宝の持ち腐れにしている四万十川です・・・しかし、その実力の片鱗は、判って頂けたのではないかと思います。

今後も再度チャレンジしていきたいと思います。実は既に、Northwood 1.8A を購入済みなんて事は口が避けても云えません(自爆)

 「おれが面白いと考えている事はこれだっつ!!」
(島本和彦著 「吼えろペン」より)

いや、しかし面白いですねー。久々にわくわくしています。

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