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FSB133over への道

-あるいは高FSB地獄の恐怖-

LastModified 02/10/14

「ことのおこりは四月の波止場だ。
若いし陽気はいい、おまけに懐もあったけぇ。波止場には海がある。
女がいる。酒がある。みんな、集まってこねぇ方がどうかしてる。」
(by
エースの錠

という訳でKatmai最後の輝きとばかりに大ブレイクを見せてくれたSL35Dです。WEBを見てると、36週フィリピン産が凄い事になっており、FSB150やら155 で常用という話がボロボロ出て来ます。(1999.10現在) 私も懲りずに22週コスタリカ産を購入していましたが、[今更のP3]におけるAbit BX6rev2での検証では635MHzが限界でした。

果たして本当にFSB150等で常用が叶うものなのか? BX6rev2のメモリ周りに愛想を尽かした四万十川としては、懲りもせず新しいマザー(BXだけでもう6枚目でっせ^^;)でトライしてみる事にしました。果たしてFSB150の壁を越え、未踏の 700MHz@FSB155.5の光は見えるのでしょうか?

「世の中思った通りにいくことなど、そうそうないものだが、思った通りにいくことだって確かにある。
やってみなけりゃ分からんのだ。・・・・・・・やってみるか!?」
(島本和彦著 「新約 炎の言霊」より)


1 SL35D

という訳でSL35Dです。素性については、[今更のP3]をご覧下さい。

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SL35D 99220245-XXX COSTARICA
     L2     NEC D432836ALGF-A40
    Tag     S324594D L914IC72 SL3F5 INTEL


Aopen AX6BC Type-R VspecU

さて、理想のマザーの条件とは何でしょうか? 以下は四万十川の独断による条件です。

1. 高clock が安定して稼動する事。
2. Vcoreが可変である事。
3. Vio が電源より直接供給され、CPU-L2cash 及び メモリに喝入れ可能な事。
4. SLOT1-DIMM 間が広い事。
5. FSBの設定種類はいらんが、PCI 1/4 設定は必須。
6. AGP 2/3 設定が手動で設定可能な事。
7. IRQ の明示的な割り振りが可能である事。
8. CPU内部温度が直読可能な事。
9. できればSB-LINKもつけといてくれい(笑)

まあ、こんな所でしょうか? Abit BX6rev2 は、DIMMこそボード上のレギュレータから電源供給されるもののこのほとんどの条件を満たしてくれました。一番肝心な 1 の高clock の安定性を除いては・・・・・

最近の実績で高clockが廻るマザーといえば、ASUS P3B-F, Abit BH6 rev1.1, Aopen AX6BC Type-R系の様です。今回私が選んだのは、

Aopen AX6BC Type-R VspecU

です。 理由としては、ASUS は昔 TX97 で痛い目に会って一生使わないと心に決めているのと、Abit は連続4枚購入してさすがに飽きたのも大きいのですが、やはり[廃人の庵]のヒロ坊さんに「後悔させませんから、Type-Rを試してみて下さい」とお勧め頂いたからです。m(__)m Type-R VspecUにしたのは、単に私が新し物好きだからです^^; ま、これでISAともお別れできるし。

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Type-R VspecUです。当然、Turbo.PLL01を装着しています。使用されているPLLは ICworks W164G で BX6rev2と同じ物ですし、ボード上の実装パターンもほとんど同じです。440BX North Bridge についてる金色シンクは凄くいい加減な付け方で、手で捻っただけでポロッととれてしまいました。代わりに田川アルミのチップ用シンクを熱伝導両面シートで固定しています。写真ではついていませんが、SouthBridge にもつけています。

Type-R VspecUはBIOSからVcore をデフォルト+0.2Vまで設定可能です。しかし、+0.2Vというのはいかにも中途半端です。今回は、ヒロ坊さんにお願いして、Vcoreをロータリースイッチで設定可能な様に改造して頂きました。改造の詳細はこちらです。おまけに、DIMMスロット手前のでっかい青色のコンデンサまで寝かせて頂きました。ヒロ坊さん、ありがとうございます。

さて、上記条件のうち問題となるのは以下の点です。

4. SLOT1-DIMM 間が広い事

Type-R系の場合、間隔は7cm程です。TAKA100を使う場合は、DIMM3しか利用できないでしょう。しかし、これは、[巨大クーラ頂上対決]の結果を持って、P3125を使う事で解決できます。

8. CPU内部温度が直読可能な事。

実は四万十川にとっては、これが一番の問題でした。しつこく、BX6rev2に固執してきた理由でもあります。しかし、CPUのB14,15pin より直接サーマルダイオード信号を読み出す回路を作成した事で解決できました。

7. IRQ の明示的な割り振りが可能である事。

これは、Spec的にはBIOSからPCIスロット単位で設定可能です。しかし、AGPに単独でIRQを割り振る事がどうもうまくいきません。PCI-1 にカードを挿して指定すると固定できますが、その場合はIRQをPCI-1と共有してしまいます。手持ちのPowerCapturePCI 等が独立したIRQを設定しないとうまく動かないので、結構拘ってしまうポイントです。 また、PCI-6 に3com 900-COMBO を挿した場合、IRQが重複していないにも関わらず動作しませんでした。
どうやら、PCI周りには若干問題がありそうです、しかし、PCIスロットを変える事でコンフリクトを起こさずにIRQを割り振る事ができました。まあ、FSB150を目指そうってのに、拡張カードを5枚(SP5400, 2940U2W, 3com900, PcapPCI, 3DS724)も使おうって方がずうずうしいですな。^^;

とまあ、こういった次第で条件は全てクリアできました。

1999.10.31追記
Abitのマザーだと違うCPU(SL3CCとSL35Dでも)に交換するとBIOSの再設定を求めてきます。しかし、Type-R VspecUの場合、SL35DからCeleron300A に交換しても何事もなかったかの様に起動しようとします。私の場合は、Turbo.PLL外部コントローラでクロックを変更するので、却って便利なのですが、無改造で使っている人の場合には、動作限界の低いCPUに交換する際には注意が必要でしょうね。うーん、普通はこんな物なんですかねえ? 長いことAbitばかりだったんでわかんないっす^^;


3 まずは小手調べ

準備は整いました。まずは、小手調べといきましょう。

P3125を装着して、Vcore=2.0V, Vio=3.5V でどの辺りまでいけるか確かめてみます。BX6rev2での限界だった 630MHz からTurbo.PLL01外部コントローラで各種ベンチが安定して通る限界をグリグリと捜していきます。嗚呼、楽しい・・・・

結果としては、660 MHz までの安定動作を確認できました。凄いですねー、マザーを変えるだけで25 MHz のUpですよ。ま、ここからが腕の見せ所です。

腕と一緒にハジキが鳴るんだ。
(by エースの錠

ペルチェユニットを装着して、Vcore=2.4V, Vio=3.85V まで昇圧。メモリ設定を3-3-3にした上で、当然 AGP と SCSI 以外の拡張カードは外します。

ところがここから先がどうにもあきません。Windows の起動程度なら680MHzまで可能ですが、安定してベンチマークが流せません。はっきり言って、空冷・定格電圧の時とほとんど変わらない有様です。L2-OFFでも状況は変わらず、流石にこれにはまいってしまいました。


4 高FSB地獄の恐怖

どうもこれはCPUじゃなくてメモリっぽい気がしてきました。今迄は、SpeedMasterU(9914 MT48LC8M8A2-75B)を DIMM1 に挿して使ってきましたが、以前の[ファントムメモリ]の様に、DIMMスロットによって耐性の変化があるんちゃうか? そこで、手元にあった下の2枚のメモリを各DIMMスロットに挿して、限界に変化が起こるか 試してみました。どちらもマイクロンチップのPC133メモリです。素人目には、CCG基板のSpeedMasterUの方がスルーホールも少なく、良さ気に見えるのでですが・・・

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SpeedMasterU
9914 MT48LC8M8A2-75B
PD168G-126.jpg (16512 バイト)
プリンストンテクノロジー PD168G-128
9932 MT48LC8M8A2-75B

例によって、Turbo.PLL01 + 外部コントローラでFSBをグリグリと上げていきます。今回は 5MHz単位でCPUclockを変化させました。Superπ 52万桁を安定して実行できるかのチェック結果です。

Vcore2.4
Vio3.85
3-3-3

SpeedMasterU

PD168G-128

DIMM1

DIMM2

DIMM3

DIMM1

DIMM2

DIMM3

670
675 ×
680

×

×

685 × ×

×

690 × ×

×

695 × ×

×

× ×

×

 な・・・・なんじゃこりゃあ!
(by 松田優作 「太陽にほえろ!」より)

あ・・・SpeedMasterUへの信頼感が・・・しっかし、同じチップを使っているのに差がありすぎですね。どうなってんでしょ?どうも相性という嫌な2文字が頭に浮かんできました。

そこで、親類縁者の所を駆け回り、もう3枚メモリを掻き集めてきました。プリンストンの3枚は、メモリチップも全く同じでシリアルナンバーも近くです。特に、No.1,2 は連番です。

No.

製品名

メモリチップ

備考

1 プリンストンテクノロジー PD168G-128 9932 MT48LC8M8A2-75B S/N 992470○
2 プリンストンテクノロジー PD168G-128 9932 MT48LC8M8A2-75B S/N 992470×
3 プリンストンテクノロジー PD168G-128 9932 MT48LC8M8A2-75B S/N 992481△
4 USHIYAMA PC100 CL2 HY57V658020A TC−10P 9846B

今回は、Superπ 100万桁が安定して実行できるかチェックしてみました。

Vcore2.4
Vio3.85
3-3-3

No.1

No.2

No.3

No.4

DIMM1

DIMM2

DIMM3

DIMM1

DIMM2

DIMM3

DIMM1

DIMM2

DIMM3

DIMM1

DIMM2

DIMM3

670
675 × ×
680 × × × ×
685 × × × × × × ×
690 × ×

× × × × × × × ×
695 × ×

×

× ×

×

× × × × × ×

はぁ・・・・思わず溜め息が出てきますね。なんなんでしょう。No.4 の TC-10P はまあ仕方ないにしても、プリンストン3枚のこの差・・・(まあ、CPUclockで20MHzといっても、FSBでは4 MHz程度なんで個体差と言われればそれまでですが・・・・)

全く同じメモリモジュールで、No.2,3はシリアルでたかだか100番程度しか離れているだけでこの差です。個体差といってしまえばそれまでですが、ほとんどくじ引きですね。WEB上では、よく高耐性のメモリはどれだという議論がされていますが、この結果を見てしまうと・・・・・それともマザー固有の問題で BH6 rev1.1 とかではこの様な相性(嫌な言葉・・・)はないのでしょうか?

とりあえず、DIMM3(Slot-1 と反対側)が一番具合が良いみたいです。DIMM3 に No.2 のメモリを使用する事にします。(貸してくれた友人は、FSB133で平和に使用する主義なので、無理を言って交換してもらいました。あとのツケが恐い・・・^^;)

 


5 常用安定化への道

690MHz で Superπ100万桁は通る様になりましたが、安定常用となると話は別です。各種ベンチマークを完全に安定して流す限界は680MHz でした。ここから、電圧・メモリ設定を詰めていきます。

試行錯誤の結果、PCIスロットに拡張カードをフル装備のまま

Vcore=2.15 V, Vio=3.6V メモリ設定 3-2-3

で安定常用が可能となりました。700MHz には今一歩及びませんでしたが、それでも、FSB150MHzです。 心配していたSPECTRA5400PEのAGP耐性も問題なく、各種D3D系のオールナイトテストも問題ありません。FinalRealityのループ時の各部温度を以下に示します。

SL35D 680MHz

室温

ケース

シンク

バッファ

コア横

コア内部

P3125+ペルチェ
Vcore=2.15V
Vio=3.6V

計測温度

20.8

25.5 33.2 12.4 24.4 21.4
室温との相対温度   4.7 12.4 -8.4 3.6 0.6

考え様によってはペルチェは不要かもしれませんね。CPUコア自体はまだ余裕がありそうな気がしますが・・・

 


6 考察

結論です。はっきり言ってもう、訳がわかりません。ApploPro133 等を使って、平和に FSB133 程度でメモリに優しく使うのが一番賢いと思います。(爆)

controll_680.jpg (11969 バイト)

「今はこれが、精一杯」

(宮崎 駿監督 「ルパン三世 カリオストロの城」より)

 


7 独り言

さて、如何だったでしょうか? まあ、考え様によってはマザー交換で45MHzの底上げが効いたのですから、大成功といえるかもしれません。700 MHz に今一歩及ばなかったのは勿論残念ですが、FSB=150MHz の世界に突入できたのは確かに貴重な経験でした。

しかし、どうも楽しくありません。

はっきりいって、運というか偶然の要素が大き過ぎ、個人の腕の見せ所がないせいでしょうね、きっと。OverClockがCPUの個体差というか、当たり外れに左右される以上繰り言ですが、それにしても酷すぎます。ある意味、偶然で動いて果たして OverClocking と云えるのか? ただのマグレじゃないのか?

やはり試行錯誤とその末に、(へ理屈による)対策を見出す事こそOverClocking の楽しさではないかなどと思ったりする今日この頃です。

 

「手品と同じさ。種を明かしちゃ、誰もこの腕に銭を払っちゃくれねぇ。」

(by エースの錠

種も仕掛けも無いOverClockってのも詰まらないですよね。

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