1のツボ 旅
旅する冒険ライダー 坪井伸吾のページです

 

 

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GAKUSHINから突然、依頼が来る。

「ホイヨ」と軽く引き受けたが実際、旅の楽しみって一体、何だろう。一概に旅といってもグル−プで行く3、4日の旅行から、10年以上の旅もある。短い旅行なら日常から離れて皆でワイワイ、ストレスを発散させるといい。しかし長期に及ぶものなら一人でいく方がいい。

なぜって、せっかく知らない世界に来てるのにグル−プで自分達の世界を作って閉じこもると、すべてが日本の常識という偏見を通して見てしまうから物事が純度の高いまま自分の中に入って来ないと思うからだ。当然知らない世界では予測できない事が起こる。でも解らないからおもしろいのだし、知らない事を知りたい、見たい、感じたいから旅に出る。だから僕にとっては知識を再確認するような欧米旅行より、理解不能な人達のいる国に憧れると言うとなんか重いのでメキシコでの話をひとつ。



アメリカからメキシコ、ガテマラと南下するとドンドン自分の価値観の違う深みにはまっていく。まずアメリカからメキシコに入ると言葉は英語からスペイン語に、道は4車線のハイウェイから『何それ』って感じのボロ舗装に変わる。

しかしそんな事よりそこではもっと大きな変化が始まっている。国境を越えて2日目、ガソリンスタンドにガソリンが無かった。「ガソリンがない−!!アホかおまえらは何の為のガソリンスタンドじゃー。」とおもわず切れそうになったけど良く見ると20台ぐらいの車がみんな待っている。しかもメキシカンはなぜか皆たのしそうなのだ。「バカじゃないのこいつら、なぜ誰もガソリンを手に入れる努力をしないんだ、お前らは、そんなに暇か?」と思い一人なんとかしようと怒ったり騒いだりしたが結局どうにもならなかった。

しかし良く考えてみると答はきわめて簡単、待てばいいのだ。怒っても問題が解決しないなら、そんな無駄な体力は使わないで、笑って楽しく時間を過ごせばいいのだ。ガソスタにガソがないこともあってもいいじゃない。なんだそれだけのことか、何時間かするとタンクロ−リが来て、ガソリンは無事届き、皆何事もなかったように去って行った。

しかしすべてが終わったわけではなかったガソリンを入れて金を払おうとすると、オヤジは釣りがないと言う。そして手持ちの金をすべて出して見せ「ホラ、ないだろう」と言った。「そんな事は僕の知ったことか。釣りがないなら他の店で替えてきて払えばいいだろ」と思っていると、オヤジはウ−ンと唸って、「こうなったら仕方がない。俺と勝負しろ」と言ってコインを取り出した。

「表なら俺の勝ち、釣りは払わん。裏ならお前の勝ち、ガソ代は半額でどうだ。」僕は愕然とした。何それ、こんな解決の仕方もアリなの?結局、勝負は僕の勝ち。オヤジはチッと言いながらもニヤリと笑った。僕はそれまでにも、日本、北米、オ−ストラリア、ヨ−ロッパとすでに走っていたが、こんな事件には出会わなかった。でもこれこそが知らない世界の面白さだと思う。

そしてこの感覚が分る人には、でひ実際に体験して欲しい。ただし余りの快感に深みにはまっても当方は一切、責任は取らない。まだまだ書きたい事は一杯あるが紙面の都合でこのへんで。では良い旅を!

 

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