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ハジマリ [2009.]

  嗚呼… これはこれは随分と、また古い記憶ですね。

   "彼女"との出逢いが全ての始まりなのです…



 ~†~ ハジマリ ~†~


暗い、深い、樹海。
視界を遮る樹木。

何処までも続く冥界に迷い込んだのは、赤い頭巾を被った幼き少女。
その歩みは凭れ、倒れそうなほどに息も切れ切れに。

氷色の細い髪は水汗により、小さな顔に張り付き、幼女ながらも艶かしさに、
恐らくその姿を見た誰もが恥心を仄かに抱かずにいられなかっただろう。


 そう…私でさえも
 其の美しすぎる造形に
 身震いが止まなかったのだから



果実を採りに、森に足を踏み入れたがためか、
運悪くも獰猛な獣に出くわしてしまった彼女は、命からがら、この凍てつく樹海に逃げ込んだのである。
しかし、獣から逃れるためとはいえ、長時間 感覚も狂わされるような樹海を彷徨い続け
流石に疲労困憊となった彼女は、そのか細い膝と手を地に倒れた。

(だれか……せめて…お水……咽の渇き…だけでも……)

そんな虚しき願いを零した時。

ちょうど、その時だった。


「紅茶は いかがかな? お嬢さん」


タイミングを見計らったのか、それとも単なる偶然なのか…。
彼女が上げた視線の先には、樹海を青白く照らす月に映える美しき紳士の姿。

差し出された手を取ると、人肌の温もりに少女は安堵の溜息をつくと同時に、疲労かそれとも安心からか…
彼の腕に眠る様に小さな身体を預け凭れた。



青年は、幼いながらも整った顔立ちから彼女の将来を確信し、
口元に薄ら笑いを浮かべ小さな身体を腕に抱いたまま、樹海の奥深く…古びた館への帰路に着くのであった。


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   モチーフ:赤頭巾
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