日常の中の異界 利根川・江戸川分流点 |
初めて地図帳を手にして、自分が生まれた地域がどのようなかたちをしているのかを見たとき、利根川と江戸川の分岐点が特に印象に残りました。何時の日かその突端に立ってみたいという思いにかられたのです。 その思いが実現したのは、それから数年後の昭和40年のことです。当時私は中学2年生、父にせがんで我が家に来たばかりの自家用車で連れて行ってもらいました。 その頃は、今と違って分流点の突端近くまで車で乗り入れることができ、その突端も砂州になっていて護岸ブロックなどもなく、本当に足元で利根川と江戸川が別れていく様を見ることができたのです。当時2、3度その突端に立った記憶がありますが、そのたびに何か人が侵してはならない場所にいるように感じられて5分といることはできなかったように思います。 その後、この場所のことは記憶の底に沈んだまま月日だけが過ぎていきましたが分流点を望むスーパー堤防上に関宿城博物館ができたのがきっかけとなって当時の記憶が甦り、再びこの地を訪れるようになりました。 下の写真では見ることができませんが、実際にこの関宿城博物館の天守閣に立つと分流点を頂点とした三角形の外側には人々の営みとその日常の世界が取り巻いているのが見えます。しかし、たった一人でこのトライアングルに身を置けば、ここが異界であることをひしと感じることができるでしょう。 |
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![]() 平常時の分流点、画面上部の中央から右に利根川が弓なりに流下し、左に江戸川が分岐しています。 画面左側上部の木立は中ノ島公園、この向こう側に江戸川の流量を調節する閘門が設置されています。中ノ島公園へは徒歩で渡ることができます。 分岐点の突端は利根川の本流に突き出しているような状況で、突端に立ち上流を見ると江戸川側に流れてきた水が、利根川に押し戻されているように見えます。 この分流点自体が非日常的な空間ですが、その突端はその非日常感が凝縮されたポイントです。ただし、ここには増水時に上流から流されてきた蝮が棲息している可能性があり、足場も悪く危険な箇所が数多くありますのでご注意ください。 2001年8月29日撮影 |
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![]() 台風15号通過翌日の様子、最高水位時よりも約1.7m下がっていますが、画面左側上部の中ノ島公園との間の高水敷にはまだまだ大量の水が入り、江戸川へと注いでいます。最高水位を記録した時点では流れの中にある葦原は完全に水没していたはずです。 2001年9月12日撮影 |
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![]() 分流点を望むスーパー堤防上の千葉県立関宿城博物館 上の2枚の写真は、この博物館4階の展望室から撮影した |
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中ノ島公園 分流点突端 異界の中の日常(1) |