雨の中、1時間で蘇州に戻る。斎藤康一さんの写真でお馴染みのこの町は、町じゅうにクリークが走り、日本人には何ともいえぬ郷愁を感じさせる不思議な町だ。史記に出てくる何とかいう人が死んだ後、虎がその墓を守っていたことから名付けられたという「虎丘」という庭園を訪れた。
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ちなみに無錫は、この時代錫の産地だったので「有錫」という名だったが、錫を彫り尽くしたので「無錫」と改名したのだそうだ。この人は刀剣の蒐集家で、墓に3000振りの名剣を埋めたという。これも、白髪三千丈流だが、それを秦の始皇帝が掘り出そうとして岩を掘った「剣池」という池がある。丘の上には、「虎丘塔」という高さ45メートルの塔があり、これが大きく傾いているので、「中国のピサの斜塔」と呼ばれているそうだ。
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ここで、ちょっと中国庭園の面白さがわかったように思う。多くの詩人が隠棲した蘇州は、中国人にとっても憧れの地で、中国王朝の高級官僚の望みは、定年後、この地に庭を造って余生を過ごすことであったという。「トゥーランドット」に出てくる官吏ピン・ポン・パンも、第2幕でそいうい夢を唱う。よく取材しているものだ。私は時間がなくてほかの庭は見られなかったが、偶然私と同じ時期に中国を訪れていた、かの『庭園に死す』の著者野田正彰先生は、南京からの帰路、ここによらずにはいられなかった由、側聞しております。
また、蘇州は絹織物の産地としても有名で、絹のパジャマがだいたい1600円くらいで買える。両面刺繍もここの工芸品である。
下の写真は寒山寺鐘楼。夜半の鐘声客船に至る……。