運営者 確か田中角栄は小学校の時も働いていて、学校で授業を聞いているときに眠くて眠くてしかたがなくて、眠気を冷ますために手のひらに鉛筆の芯を突き刺していたら、頭をこくりとやったはずみで鉛筆が折れて芯が中に残った跡が今もある、といったことを書いてあったと思うんですよね。
それが妙に頭にこびりついていて。そういう浪花節ですよ。
飯坂 そもそもはそんなに貧乏な家じゃなかったけれど、親戚の破産で上の学校に行けなくなったとかいう話ですよね。
そんな人がいまどきの日本のどこにいますかね。中国人留学生くらいなもんじゃないですか。
運営者 だからそれは、70年代の日本人を感動させるに足るストーリーであったということなんでしょうね。
飯坂 正確には、70年代における親世代ですね。親が勝手に子供に与えて読ませているわけですから。「この人が今太閤」ってね。
運営者 「あなたも角栄さんみたいな人になりなさい」ってなもんですよ。それがあっという間に首相の座を追われて、逮捕されちゃうんですから幻滅ですよね。
飯坂 「おしん」に近い話かもしれませんよね。最近再放送やっているけど、1回分見ればストーリーは分かるからね。
運営者 僕も見たことないんだけど、見ておこうかなぁ。
昔ね、「Yの悲劇」だか「Wの悲劇」とかいうドラマがあって、1回目をたまたま見て、最終回をたまたま見たら、話が見事につながって、「はーよかった、他の回を見なくて」と思ったことがありますよ(笑)。
飯坂 「真珠夫人」もそうですよ。たまたま1度だけ見て、「話題のドラマ」というふうに雑誌で紹介されていたのを読んで、「ああ、なるほどそういうもんね」と、見なくてもだいたいわかりましたよね。「へえなるほど、菊池寛が書いたのか」とね。
運営者 しょせんソープオペラですからね。
ミラノで、トリムの切符をニューススタンドで買いに行ったら、売り子の黒人の兄ちゃんが「お前、日本から来たのか」と聞くんですよ。それで「そうだ」と答えたら、親指を立てて見せて一言、「おしん!」だそうですよ。「おしん!」って言われてもねえ、オレ見てないから、わかんないっつーの(笑)。
あっけにとられましたね。
飯坂 日本人観光客にはとりあえず「おしん」と言っておけば喜ばれるというリップサービスかもよ。
運営者 そうか、そこで合わせちゃいけなかったんですね。「おしん? SO WHAT?」とでも言うべきだった。
飯坂 だから、条件反射しちゃった時点で負けですよ。「オレは知らないぞ」と言ってやればよかった。
この話は2003年の話で古くなっているかも知れないし、そもそも酒飲み話だし・・・