一般的に、日本の組織のトップには、概して無能で知識のない人が座るという傾向は小渕を引き合いに出すまでもなく、皆様ご存じのことと思います。私のような小うるさい人間は、基本的に排除されてしまうからです。
で、このトップが黙って下のすることに首を突っ込まなければ、まだ組織は状況変化に対応して持つわけです(小渕の命運は、下手に自分が動かないかどうかにかかっている)。
ところが、実力がないので地位にしかレゾン・デートルがない人間というのは、そんなに物わかりが良くないのです。そこで彼は、部下の出した企画や情報が、仮に「瑕疵のない価値ある情報」であったとしても、ここに何らかの改変を加えることで自分の存在感を示そうとします。ここまででも、トップ自身が「価値を生み出す能力」を十分保持していて、彼の行う改変がよい結果を招来するのであれば、トップとしての仕事を果たしていることになるのですが……。
大概は、そうはならないのです。ではどうするかというと、そうした上司は自分が不勉強で、情報処理能力もなく部下が出した情報が理解できない分、そこに含まれる価値を自分の理解できるレベルまで減殺して、「まるめて」しまおうとする強い誘惑にかられるのです。そして、一度この方向に進むと、人喰い鮫が人間の味を憶えてしまうように、常にそうした方向の判断を示して、さも大仕事をしたかのように満足感を味わう精神構造ができあがってしまいます。彼は自分が組織目的に反した行為をしているとはつゆとも感じません。なぜなら、彼は彼が「まるめて」しまった情報の価値をそもそも判断する力がないのですか。むしろ「危なげがなくなってよかった。なにせ責任を取る立場にいるのは俺だからな」と、自分の思考回路がワンパターンに陥っていることにすら気がつきません。
で、今度は部下の方はどうするかというと、そうしたトップには情報を上げなくなってしまいます。汗水垂らして必死で取ってきた情報をまるめられて、本来発揮されるべき効果がまったく中途半端に終わってしまい、「あーあ、またダメだった。やっぱりウチはダメだなあ」とみんなに言われて、それが自分の責に帰された日には目も当てられないからです。一般的に、そうした上司がのさばる組織に限って、「責任を取る」ということが曖昧にされているものです。結果責任を問う降格は行われず、曖昧な異動でうやむやにされてしまいます。こうして、組織内の情報流通の経路は遮断されます。
また、こうした上司がバッコしていると、まともな社員から先に辞めていきます。外資に行く人間が辿った経路は、ほとんどこれです(最近は、会社が潰れてしまったので否応なしに転社するケースもあるが、その遠因をつくっているのは疑いなくアホ上司の無能)。要するに、単なるお邪魔虫中間管理職が部下の仕事をダメにしてしまうから、日本的組織には結果的に無能な人間だけが残っていく、これはほとんどの日本的組織に妥当する一般法則です。