「資金の流れ」を変える必要
構造全体の改革を 公的債務管理も不可欠
本間正明 大阪大学教授 4月16日
これは、経済財政諮問会議に民間議員が提示した1990年代の10年間を通してみた資金循環に関する分析をまとめた記事で、非常に興味深いです。
細かくは記事をご覧いただくとして、大ざっぱにいうと
家計部門は株式や社債などを70兆円も減額して、貯金に回しています。貯金の中で、郵便貯金・簡易保険・年金は270兆円から516兆円に激増しています。また民間金融機関も328兆円から489兆円に増加しています。
民間企業は、設備投資を抑制して借り入れを返済するという自衛策をとっています。
金融機関は、株式や社債を80兆円ほど減額し、貸付は412兆円から326兆円に絞り込んでいます。これにより株価も低迷し、貸し渋りも起こっているということです。
直接金融の比率はバブルが華やかだった90年が55%だったものが、20%になってしまいました。求められている方向性とは全く逆の結果になっています。
政府部門は、国債、地方債による資金調達は90年度は159兆円あったものが、2001年度は447兆円に拡大していて、そうした国債を買っているのは民間金融機関だったりします。融資しろ、融資!
要するに、官から民へ、間接金融から直接金融へという流れが必要なはずなのに、実際はより公的部門が資金循環に関与する比率が高まり、直接金融市場は縮小している。
かといって民間金融機関の金融仲介機能は全然あてにならないレベルであるということです。
つまるところ、この国のマクロ経済的な資金循環は、開発独裁国家並みのレベルに退化しつつあるということでしょう。多少景気が良くなったとしても、それは外的要因や循環的要因に基づくものであって、構造的な部分ではわが国の経済はますます病状を悪化させつつあると認識しなければならないと思います。やれやれ
最後に、政府のリストラについて触れている記事を2つご紹介します。
「戦略的アセス」導入急げ
公共事業を有効に 計画段階での判断必要
原料幸彦 東京工業教授 6月23日
みんな感覚的には十分承知していることなのですが、とにかく日本は公共事業が多いんです。
国内総生産に対する政府固定資本形成の比率で示した公共事業比率は、1990年代は6%前後という高い比率である。
同じ時期に好景気の続いた米国は1.8%という低水準で推移している。
米国だけでなく、欧米の先進諸国の公共事業比率は2-2%程度
例えば国土面積当たりの道路延長は高速道路だけでも米国の2倍以上もある
それで無駄な公共事業をやらないためには、
パブリック・インボルブメント(PI)
という、公共事業の意思決定に民意を反映する手続きが有効なのだそうです。
事業には政策・計画、事業という流れがあり、日本では事業を行う直前の「事業アセス」は行われていますが、欧米では戦略的な意思決定の段階でアセスが行われるそうです。
「戦略的環境アセスメント」というそうです。
その要件は、
1.政策・決定段階での実施
2.社会経済面との比較考量
3.プロセスの透明性
の3つだそうです。これを行うことによって、無駄な公共事業が少しでも減らせるのであれば、歓迎するべきだと思いますね。
政府のリストラ、市場創出
米国の強さの背景 アウトソーシング推進を
杉浦哲郎 みずほ総合研究所チーフエコノミスト 9月3日
政府部門の仕事をアウトソーシングすることで市場を創出しようという話です。政府だけ肥大化するのは許さないといいことですね。
PPP パブリック・プライベート・パートナーシップ =公共サービスの民間開放というのがキーワードのようです。
アメリカの現政権でも、
具体的には政府が実施している業務の遂行を官民競争入札によって最も効率的で低コストの主体に委ねるコンペティティブ・ソーシング(競争的調達)の推進である。それは趣旨としては最も優れた企業や組織に政府業務を担わせるもの
実際には各省庁の業務を「政府でしか出来ない業務」と「民間でもできる業務」に分類して、後者についてはその半分弱をコンペティティブ・ソーシングにかける
ということで、政府の職員総数の26%に当たる42万人を対象にするべきだとしているそうです。
日本では、国内総生産に占める公的需要の比率が24%、アメリカでは国防支出を除くと15%とのことなので、この考え方に基づいてもっとリストラを活発にするべきだと提言しています。
(この項終わり)