次に自民党の小泉改革宣言「政権公約2003」です。自民党はマニフェスト論議に巻き込まれたくないので、あえて公約という言葉を使っています。
この内容を一言で括れば、新しいことは何も約束していない、すでにできることがわかっていることしか書いていない、と言えると思います。
しかしその中で注目すべきは、
郵政事業と道路公団を民営化し、行政サービスをなるべく民間移譲する考え方が示されていること
2006年度に名目2%の経済成長を達成すること
2004年度までに不良債権比率を半減させること
2010年にプライマリーバランスを均衡させること・・・これに関しては民主党よりも早いのでたいへん好ましいと思います。
以上の点については、評価できます。公約に霞ヶ関用語は通用しません。どんなに逃げ科白を仕込んでいても、国民の目にこのように読めるものであれば、これはコミットすべき約束であり、評価の対象となるものです。どうやってこれらの約束を実現させるかという各論は、自民党の中で勝手に考えてくれればよい。
むしろ、ここでの問題は、これらの項目は「達成可能である」とすでに一般的に目されていることにあります。そう思っていないのは、自民党内の抵抗勢力だけなのです。
さらに、その他ごちゃごちゃと書かれている政策については、すでに発表済みのものばかりが並んでいます。各役所から「できそうなもの」をあげてもらって並べただけに見えます。つまりこのあたりは、全部見せかけの改革なのです。
なぜなら、役所が自分の手でやっている改革というのは、自分たちの権益を守ったうえで、切り離しても痛くもかゆくもないことを書いているだけだからです。そんな改革案は全部骨抜きであることをわれわれは知っています。
だからこそ、数値目標が大切なのです。マニフェストは、各政党が改革のために新しく大胆な案を示して、国民がそれを選択することで、社会を前進させるためにつくるものであって、その機能を無視した公約であるならば、まったくのナンセンスです。
その意味では、今回の自民党の公約には、「小泉政権の従来の方針に対する信任を問う」という意味はあっても、さらに改革に大きく踏み込むという勢いはありません。この公約の中にも、さらに踏み込んだ改革案がこっそり目立たないように織り込まれてはいますが、「見直す」とか「検討する」という文言になっていて、とてもコミットしているようには思えません。ここのところをどう考えればいいのかということです。
有権者はもっとどん欲であってもよいはずなのですが。