9月10日に『カルロス・ゴーン経営を語る』という本を日本とフランスで同時発売するみたいです。
版元の日経新聞が見本を送ってくれたので、ひと足先に読みました。
出版前にあまり細かく書かない方がいいとは思いますが、最初の印象としては、この本はフランス向けに書かれています。彼が、ルノーの社長の座につくための地ならしなんでしょうね。フランス人記者のインタビューと執筆によるものですし(『ルネサンス』では、日本の自動車記者の経営観のなさを指摘していますから、少なくとも経営のわかったジャーナリストなのでしょう)。
要するに、フランス企業(特に国営企業であるルノー)の文化はある部分、保守的だったり行きすぎた社員の権利を主張したり、日本企業に似たところがある。ゴーンはそこでの経営の経験があったから、日産という組織をうまくコントロールできたのかもしれないなと思いますね。つまり結論は、ゴーンはルノーの社長に向いているということになるのでしょう。
『ルネサンス』に比べると、前半は重複する部分もありますが、後半はあの本に書かれた後のことについても十分スペースがとられています。
その中で、日産がなぜダメになってしまったのかという5つの要因の分析。それをどのように具体的に変えていったかを経営側の視点から語っているのは非常に面白い。
また彼が、来日前から「日産が自主的に変わるのであって、自分たちは手伝うだけだ」というコーチング的視点を持っていたことは興味深いです。
それから「結果が重要であって、会社にいた時間で評価されるわけではない」とか、さんざんこのサイトで言い飽きて、最近はもう書かなくなってしまったことについても、彼は実践していることがわかります。やることなすこと「利益を上げるため」という点で一貫しています。
後半では、彼の自動車会社の経営に対するかなり真率な見立てが述べられています。この辺は掛け値がないかも。業界に対するグローバルな見通しも、(ちょっと商売気が見えますが)感心させられます。ちゃんと、経営について語っている本ではあります。彼自身、日産再建の過程で得てきたものを、自信を持ってまとめたという感じですね。
告白すると、わたしは彼の「日産リバイバルプラン」の成功をかなり疑っていました。彼がやってくれたのは、「経営」という、日本では軽視されているノウハウとスキルに対する信頼の回復もしくは獲得だったのかもしれませんね。