ムネヲに対する辞職勧告決議案に対して、
自民党、また一部の自民党議員が、
「国会の議決で議員の身分を奪うことは憲法上疑義がある」
「民主主義の根本にもとる」
「法的効果を持たないことは意味がない」といった理由で反対や途中退席しました。なかなか興味深いことだと思います。
「議員の身分保証が民主主義の根本である」とは私には思えません。世間の疑いを晴らすことができない議員は、退場していただくのが筋でしょう。国会議員の特権を、自分の保身のみのために使うのは見苦しい。議員は誰よりも自らに厳しくないとならないでしょう。
ところがみんな、とてもやさしい人たちなわけです。「すでに自民党から離党したんだから問題ないじゃないか」と思っている。さらには「あっせん収賄なんか微罪だし、これで逮捕なら代議士は全員逮捕だ」とすら思っている。
ムネヲは犯罪者ですぜ。すくなくとも疑いが濃い。犯罪者が自分と同じ身分のままで、平気なんでしょうか? それは嫌がるのが普通の感覚でしょう。佐藤孝行の入閣の時にも思ったけど、「自分の仲間だ」と一度認識すると、犯罪者に対しても寛大だよねえ、国会議員なのに。これじゃあ精神的な共犯ですよ。
物事の「良し悪し」を考えて、かつなんのために自分たちが選出されて議場にいるのかを考えれば、「そんな微温的な態度は許されない」と気づかなければおかしいでしょう。まったく感覚が麻痺してますよ。
まあ、志の低い人間にこのロジックでいくら言ってもムダでしょうが、なぜ彼らは「正邪」を考えようとしないのか、それは各議員が、自分の利益しか考えていないからですよ。
これは功利主義の考え方ですが、もし他人の利益を真剣に考えるのならば、それは必然的に「何が正しくて、何がいけないことなのか」=「一般的効用」という価値を追求することになります。そして、「各個人の幸福・利益を最大にするために、効率的な社会改革をしよう」という動機がそこから生まれます。またこの立場から初めて、自由主義市場経済も是認されるわけです。
ところが彼らは建前では、「利益追求など浅ましい」という顔をして、「市場主義は生き馬の目を抜く世界だ」といっている。その実、道路関係4公団民営化推進委員会の人選に関して文句を言っている自民党議員は、果たして国民の利益を真剣に考えているのだろうか。彼らは自分の利益基盤を破壊されることを恐れているとしか思えませんね。
それと、「辞職勧告決議案」自体に対する疑問ですが、「出席議員の3分の2以上の多数で議員の除名ができる」わけなんで、本来はこれをやるべきですよね。それをやらないのは、政治的な妥協でしかない。「除名」したくないから(だれか偉い前幹事長クラスの人に累が及ぶのをはばかっているんでしょう)、「辞職勧告決議」なんて中途半端なことをしているから、擁護派も攻撃派も賛成しないというおかしなことになっている。
なぜこうなのか、既述したとおり、「みんな身内になってしまえば安心」「一部相手を認めておいてやらないとまずいという意識」が心の中にあるからでしょう。あほらしいので、もう繰り返しません。
「制度」は現存する。しかしそれを活かすも殺すも、当事者の心がけ次第という好例でしょうね。