さて、2002年の私は、ギリシャ、イタリア旅行からスタートします。市民社会という、私にとってあくがれの世界を紀元前に成立させた人びとの世界に遊びます。
わが国は市民社会ではありません。市民社会でありうべき法制度と、恵まれた経済的条件を備えながら、共通意識として心の中には江戸時代以前からの封建制が残っており、それは社会的に教育されるし、組織の中では各人に強要するしくみになっています。自分たちの心の中に壁をつくって、個々人の創発性を閉じ込めて喜んでいるのがこの国の社会です。
それでは生産性が上がらず、国際競争に負けるのは当然だと思います。深刻化する不況で、そうした認識は広がりつつあり、日本人全体が精神的な脱皮を遂げざるをえなくなる日が近づいてきているような気がします。
去年は1年中取材執筆に明け暮れていて、もうまったく精神的に余裕がなく、会合のお誘いもお断りする方が多くて心苦しかったのですが、今年はもう少し外に出ていけるようになるでしょう。と申しますのも、年末に脱稿した次回作において、私が物書きになって「これだけはどうしても書いておかなければ気がすまない!」ということはほぼ網羅してしまったからです。
今まで出版した『あのバカ』(文藝春秋)、『慮る力』(ダイヤモンド社)、それと竹中平蔵さんの名前で出ている『決定版「日本再生」へのトータルプラン』(朝日新聞社)の4冊をつなぎ合わせると、私の主張すべきことは全て出揃っています。頭の中から絞りだして書き尽くしたという感じです。過去2年間は、自分の考えを確立するために必要な時間だったと実感します。
今年からは、これらをいろいろな形で、スタイルにこだわらずに展開していきたいと思います。毎度恐縮ですが、ご指導よろしくお願い申し上げます。
2002.1.1