関空の赤字の大きな原因は、伊丹空港が存続していることにあります。「伊丹の廃止を前提として」というのが関空建設の条件でした。ところが関空が完成間近になると、地元からは「存続して欲しい」との声が次々と。
まず「伊丹の方が便利」との声が財界人から上がりました。お前らが関空の工事で懐を肥やしたんだろーがっ! まったくむかつきます。
次に地元住民。彼らは騒音訴訟で6000億円以上の対策費を得ていました。「空港がなくなれば静かになって喜ぶだろう」と思ったら、対策費がなくなると困るから空港にはいて欲しいということだそうです。
そして運輸省。「伊丹の廃止を前提として」というのは「存続させるという意味だ」という不可思議な日本語を国会で展開し、利権の確保に成功しました。よかったですね。
かくして伊丹空港は存続し、発着が減った関空の収益は減って借金の山が築かれ、地方から関空経由で海外に行く人は、伊丹から関空への移動にトランクを抱えて難渋することになります(そんなことをせずに仁川で乗り換える人も少なくないのですが)。しかも神戸沖で神戸空港の埋め立ても進んでいます。みんな空港が好きですねえ。日本人は空港が大好きなんだ。
もう一つの赤字の原因は、ふくれあがった建設費負担。広島新空港の建設費は710億円。滑走路1キロあたりで比較して、関空の1/6以下です。水深14メートルの沖合埋め立てをして空港を作るなど、常識外のことなんです。しかも最終的な建設コストは当初計画の50%増しになっているのですが、この大部分は漁業補償費らしい。みんな頑張ったんだなあ。
軟弱な土地を急いで造成しているため、地盤沈下が激しく、設計者は7メートルの沈下まではジョッキで調節できるようターミナルビルを設計したらしいのですが、それでもカバーできないほど沈下が進んでいると聞きます。いまのところちゃんと飛行機が発着できているようですが、事故が怖いので私はあの海上空港を使いたいとは思いませんね。。
94年に関西の記者に関空会社から配られた初年度の損益計算予測、500億円超の赤字だったんだけど、私がそろばんを入れてみると10億円も違ってたんですよ。これにはホントに驚きました。「10億ぐらいは誤差の範囲」という計画なんですね。バカにしてますよ。すべてが杜撰でした。
この時の記事は大反響だったんだけど、運輸省関空課から記事の37カ所に抗議する抗議文が来ました。先輩と二人で書いたので、彼の書いた部分は穴だらけだったみたいですが、子供みたいなことしますよね。その時驚いたのは、横書きの抗議書だったのですが、運輸省の人間の名前が一番上に書いてあって判子が押してあり、こちらの編集長名が紙の一番下に書いてあるんですよ。宛先が一番下にある書面というのは、後にも先にもそれしか見たことがありません。よほど運輸省は自分たちのやっていることに正統性があると思っているのか、それともメンツを潰されることは許せないと思っているのか……。あんまり腹が立ったので、私はその2ヶ月後に3ページ取って、また攻撃してやりました。
まあ、もう何も言うことはありませんけどね、これは日本で行われてきたでたらめのホンの一部分でしかありません。財界と役人と政治家は世の中なめてますよ。おそらくなめ馴れちゃって、自分たちがいかに異常なことをやっているかを理解できなくなっているんでしょうね。
「目を覚ませ」といっても決して醒めませんから、せいぜいいい夢見ていてください。