どうやらこれは、解党的出直しどころか、本当に解党になっちゃったみたいですね。今の派閥がそろった状態での「自民党総裁」と呼ばれる人物は、おそらく後もう1人か2人で終わりになるでしょう。
加藤君は惜しかったですね、風は十分に吹いていた、彼は本当は主役になれるはずだったのに。しかし人材が払底しているので、頑張れば彼も再浮上することができるかもしれません。
これでもし、自民党が小泉純一郎支持でまとまり、参院選やその後のピンチを乗り切ることができれば、大変なもんだと思いますね。
ところで、ワールドビジネスサテライトで4人の総裁候補者の主義主張を聞いていると、違いが際立っていて、面白いと思いました。
えせ改革派は、野中さんと麻生さんですね。橋本さんは、改革を標榜しながらも、自分の利権についてはかたくなに守るという方針を崩さないというのが明瞭でしたが、自分が守っていたつもりの集票マシンが全く自分を支持してくれないという現実に直面すると、さすがに考え方を変えざるをえないのではないでしょうか。
小泉さんが、今の状況で当選して総理大臣になったとして、たいしたことができるとは私には思えませんが、しかし他の3人よりは明らかにまともであることは間違いがありません。
亀井さんの発言で一番面白かったのは、「政府はもうすでに十分構造改革のための手を打っているんです。これ以上何かできることがあるならば、ぜひ教えてください」という開き直りです。
麻生さんも基本はおんなじで、「民間はバブル崩壊後、1200兆円もの資産を失ってきたが、それでも政府は毎年1%程度の経済成長に成功している、これで一体何が不満なんだ」という御説です。これもまた亀井さんと大同小異と言えるでしょう。
この人たちは、本心から改革の必要性を感じていないので、自分たちの利権が削られる、すなわち自分たちが妥協することをもってして、すなわち改革と同義であると解釈しているのでしょうか。
亀井さんは、先月の末にもワールドビジネスサテライトで、高橋進さんに、「先生は構造改革、構造改革と言われますが、構造改革っていったいなんなんですか」という無邪気な質問をしていました。要するに、全く理解できていないということです。それに対して高橋さんは言葉に詰まってしまって、こっちもまったく格好悪かった。
「構造改革とは、市場主義を徹底することです」と、スパッと切り換えせなかったのは残念です。
私の美学からいうと、「これ以上何が出来るんでしょうか」というのは口が裂けても言えないことです。
なぜかというと、われわれは常に新しい価値を提供して生きているわけであって、「価値を自分で作ることができない」と宣言した時点で、世の中の前面に出る資格はないということを自ら認めたことになるからです。
ところが、どうやら亀井さんたちはそう思っていないらしい。そうすると、彼らは自分たちで政策を作る能力、すなわち概念的思考力や、情報収集力、また他の人が作った選択肢を批判して選びとる能力も持たないということが明かでしょう。そもそも、自分自身が価値を作ることことができない人間は、正しい価値判断をすることができないから、新たに作られた政策に対する判断能力も持っているはずがないのです。
そしてこのように価値創出力を持たない人は、一般的にどのような行動をとるかというと、「衆を頼む」というのが価値基準になってしまいます。これすなわち「寄らば大樹の蔭」というわけです。民主主義という大義名分をたてにして数を頼む戦略も結構ではありますが、危機を回避するために現状を否定し改革を行うリーダーとしての資質からは大きく外れているということは疑いのない事実だと思います。
しかしこうしたタイプの人間がホイホイと出世をしていくというのは、日本の組織の中では一般的なことだとは思います。なぜならばそうした人間の数の方が、今までは多かったからなのです。