一言で申し上げると、郵便貯金は可及的速やかに金利を下げて、縮小していただきたいと思います。民営化は当然の前提として、それ以前にできるだけ図体を小さくしておくというのが正常な経済センスを持った人間の判断だと思います。
郵便貯金には現在249兆円が積み上がっていますが、これだけ巨額のお金を単体で積み上げている経済主体は世界を見渡しても郵便貯金以外にないと思います。
「250兆円もの金のまともな運用が果たして可能か」と考えますと、「不可能」という回答以外が考えられるでしょうか。リスクを考えると、あまりにも危険な存在であるとしか言いようがありません。
250兆のうち毎年1兆円は郵政事業特会に組み入れられて郵便局のコストを負担しています。特定郵便局は世襲制であり、郵便局の建物の所有などを含めて極めて不明朗な存在ですが、そこに毎年毎年1兆円が流れているのも問題です。
一般会計にも2000億円ずつ流れています。これは国鉄債務返済のためですが、これも政治的な判断によるもので運用の透明性とはほど遠いものです。
それ以外は、資金運用部特別会計に預託されますが、この預託金利が3%弱のため、ここ2年は毎年1兆円以上の赤字が特会収支に発生している。預託金利は10年前の6%からほぼ一直線で毎年引き下げられてきています。引き下げられていることが問題ではなくて、預託金利が恣意的に決められており、市場性が介在する余地がないというのが問題なのです。
さらに資金運用特会は国債を購入したり、地方交付税特会や特殊法人に対して貸付を行っています。この貸付のうち戻ってくる当てのないものが多額に上るという観測があります。郵便貯金250兆のうちのなにがしかの部分は、毀損しているのです。
郵政事業庁は、「資金運用部への預託は面白くない」ということで、自主運用のために「金融自由化勘定」というのをつくっていて、自主運用の比率を高めるつもりらしいです。財務省が郵便貯金を喜んで手放したところから見ても、「やはり郵貯は含み損を抱えているのだな」と考えるのが普通の神経です。
が、彼らに国際分散投資のノウハウがあるか、もしあったとして250兆もの巨額のカネを回していくことができるのか、その能力は極めて疑わしいと思います。もしそんな運用能力を持っているのなら、役人にならずに民間金融機関に行った方がいい生活ができるというものです。
そもそも郵貯の資金を外国に投資できるのかという疑問もあります。もし国内だけへの投資しかできないのなら、250兆もの運用は絶対に不可能でしょう(現状は外国債権での運用5兆円、外国株式1兆円のみ)。
結局、自主運用するにしても250兆の振り向け先は国債や財投債、財投機関債が大半になるでしょう。こうした債権に信用力がどれだけあるでしょうか……郵便貯金の顧客としての私には全く信じられません。政府が発行する債券を政府系金融関が保有するということには、明らかな利益相反が存在すると思います。この意味で、民営化は必須です。