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フィクションはタイトルで泣け かんべえ氏 9

フィクションはタイトルで泣け 第9回

理想のタイトルを求めてその1 「動詞を使ってみる」

溜池通信編集長 かんべえ
http://tameike.net/
2000.5.7

 あらためて「いい題名とは何か」を考えるときに、司馬遼太郎作品は宝の山です。

 彼の作品は、複数の人物を追いかけて時代全体を俯瞰的に描いているものが多いですが、初期には一人の主人公に焦点を当てた物語性の高い作品がいくつかあります。なかでも、幕末の青春像を描いた『竜馬がゆく』と『燃えよ剣』は、多くのファンを獲得しています。坂本竜馬も土方歳三も30代で生涯を終えていますが、両作品に通じる若々しさは題名にもよく表れています。いずれも「ゆく」、「燃えよ」と動詞がみずみずしい形で使われていることにご注目ください。

 「竜馬が・・・」という言葉に続ける動詞を、「行く」ではなにか具体的な目的地があるように思えるし、「いく」ではちょっと固い感じが残り、「イク」ではもちろん意味が違ってくるところを、「ゆく」と柔軟性をもたせたところに作者の技があります。さらにこの動詞を、「飛ぶ」(あるいは「跳ぶ」「翔ぶ」)、または「走る」「戦う」など、ありがちな動詞に置き換えてみると、ますます「ゆく」の優秀性が理解できます。

 「燃えよ剣」もまた、土方歳三の生涯にはぴったりの題名です。司馬遼太郎にしてはめずらしくストレートな題名で、それだけに内容も直球勝負、これまた司馬作品にはめずらしく、ヒロインが最後まで登場して情感ゆたかなエンディングに花を添えています。ことによると司馬氏は、「題名に引きずられて、ちょっぴり気恥ずかしいラストにしてしまったよ」などと思っているかもしれません。

命令形を使った上手な題名は少なくありません。思い切って語感の強い動詞を使うのがコツです。『明日に向かって撃て』(ジョージ・ロイ・ヒル監督)、『風の歌を聴け』(村上春樹)などがすぐに思いつきます。そうそう、この連載『フィクションはタイトルで泣け』もこの手法を使わせていただきました。

 ただし命令形を使うときは繊細な配慮が必要です。「戦えXXX」みたいな単純な題名は、最近は午後6時台の子供向け番組でも使わなくなりました。ちょっとした差で名作と駄作の分かれ道になってしまうところが要注意です。

 翻訳のうまさも手伝い、上手な題名になっているものにサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』があります。ここでも「つかまえて」という動詞変化が微妙で、命令形のようにも聞こえるし、そうでないようでもある。作品全体を通じる口語調をうまく捉えている題名だと思います。

 ここで思わず脱線しますが、サリンジャーについて触れると、誰でも反射的に出てくるのが『バナナフィッシュにうってつけの日』("A perfect day for Bananafish")です。10代の頃にこの短編に出会ったときは、すごい名作だと感心しましたが、最近になって騙されていたんじゃないかと気がつきました。近年、サリンジャーの評価は急降下しており、少なくともカフカやカミュと一緒にして論じるお馬鹿さんはいなくなったようです。と、けなしてはみたものの、この題名は意外性といいゴロの良さといい、絶品と認めざるをえません。なお、出版社によっては『バナナ魚日和』としている訳もありますが、「うってつけ」の方がうってつけであると思います。

 話を戻して、動詞の使い方にはいろんな形があります。最近のテレビ番組でもっともよくできた題名は『踊る大捜査線』だと思います。ひとこと「踊る」とつけたことで、この番組の軽さや楽しさがひきたちました。そういえば、インド映画で『踊るマハラジャ』という話題作もありましたね。ともあれ、動詞は使い方次第でいろんな効果をあげることを覚えておきましょう。

 また、フィクションではありませんが、政治家が書いた本としては格段に面白いのが野中広務の『私は闘う』です。普通なら省略できるはずの主語を敢えて残し、さらに動詞を未来形にしてみたことが効果をあげています。さらに深読みするならば、ここまで強く言い切っておきながら、「なぜ闘うのか」が一切語られていない(本人も自覚していないのかもしれない)ところに、この政治家のユニークさを感じとることができます。

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