梅の季節がきた。
つまり保存用の梅干を漬ける月でもあり、
青梅をかりかり漬けにしたり、ふくめ煮したりする月である。

ぼくは梅干しが大好きだし、つけるのも毎年のことで、
軽井沢には早や四年この方、
地方差別に漬けた壺が五つ六つある。


ぼくは十歳ごろから、六月の梅の収穫期がくると
梅干つくりに精出したのだ。
子どものころに習ったことは、
ちょうど、般若心経や観音経が
頭の中に入りこんでいて、還俗した今日でも、
もう五十年近く経っているにかかわらず、
枯れすすきをうたうようにとび出てくるのと同じで、
梅干漬けも、堂に入ったといえば、
自慢げにきこえるけど、
松庵和尚流の漬け方でやってのける。 

六月の章

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