春先は山菜の宝庫なので、軽井沢に住むことのありがたさを
感じるのである。
たらの芽、アカシアの花、わらび、みょうがだけ、
里芋のくき、山うど、あけびのつる、よもぎ、こごめなど、
わが家のまわりは、
冬じゅう眠っていた土の声がする祭典だ。
収穫したものを台所へはこんで、
土をよく落とし、水あらいしていると
個性のある草芽のあたたかさがわかっていじらしい気持がする。
ひとにぎりのよもぎの若葉に、
涙がこぼれてくるのである。
冬の厳寒は、春を待ちくたびれてくらした者でないと
この涙はでてこない。