松茸の季節である。
松茸と昆布をことこと煮る、といえばぜいたくなものとなったが、
何といっても、これはつくだ煮の王者だと思う。
昆布もよく吟味していいのをこまかく切って、
松茸も虫の喰わぬのをより、日がなトロ火にかけて煮つめるのだが、
こういう手のかかる仕事をやる人は少なくなった。
ぼくが好んでいるのを一つあげれば何といっても手さき松茸だ。
よく焼いたのを手ざきにして、柚、橙をふりかけるだけのことで
これを王者としている。
茶碗むし、土瓶むし、すまし汁の実、松茸めし。
いろいろあるが、これはどの家庭でもやるもので、
べつにこれといった特技はない。
手ざきがいいといったのは、松茸はとにかく、
その鮮度にあるのだから。
風味が消えては、どうにもならない。
これは、松茸だけにかぎらず、しめじ類にもいえることで、
軽井沢でも、山庭で収穫したのを、ながく放置しておいたことがない。
収穫したら、すぐ、よく洗って水を切っておき、
その日の夕食に楽しむ。