今朝はサファリはない。最後の公園、マサイマラを目指し、ひたすら走り続ける。途中、グレート・リフト・バレー(大地溝帯)と呼ばれる地域があった。死海に始まり、紅海・エチオピアからケニア・タンザニアへと続く幅35〜60kmほどの、地球の大きな「溝」である。しばらくはこれに沿って走ることになる。壮大な眺めがしばらく続く。
写真下部の暗い部分から向こうが、「溝」の中。 |
休憩で立ち寄った場所には、大きなキャンディーショップがあった。のどの痛みは相変わらずで、薬も飲み尽くした今となっては、飴だけがよりどころだった。思う存分買った後、店員にせがまれて、自分のかぶっていた帽子と店の売り物の帽子とを交換することになった。金額的には大損だが、これもまたよし。
サバンナの真ん中、地平線まで延びている一本道の途中で、2回目の休憩を取った。思わず道に大の字に寝ころびたくなるが、意外と車が通る。走り去る車を目で追うと、次第にもやに霞みながらも、地平線まで砂埃を上げて進んでいくのが確認できる。サボテンもこの辺には生えていて、さながらアメリカ西部のようだった。
ようやくマサイマラのゲートにたどり着く。途中、警察の検問みたいなのが続けざまに何カ所もあって、予定より遅れたようだ。思った通り売り子が近づいてくるが、この前ほどではない。いよいよケニア最大の動物数を誇るマサイマラかと思うと、胸が高鳴る。
ゲートをくぐる。動物の姿は見えない。ゲート付近は仕方ないかと思いしばらく見渡していたが、時折、インパラやトピなどの草食動物がちらほらするだけで、ちょっと期待外れだった。同行の吉田さんも、「もっと数いると思ったけど、こんなもんかなあ」と、後で話していた。ロッジに着き、昼食後はサファリに備えて部屋で休んだ。ここのロッジは今までで一番粗末だった。シャワーはべとべとした水しか出ず、窓はただ穴が空いてカーテンがかかっているだけ。
そしてマサイマラ最初のサファリ、体調も少しの休憩と気力で何とか持ち直したのに、小雨が降り始めてしまった。クルーアさんも顔をしかめる。「Oh!Rainy,rainy,rainy!」
出発してみると、期待していたような動物の大群、というにはやはりほど遠い。雨のせいでどこかに隠れてしまっているのだろう。しかし、僕らにとってはまだ対面していない動物がいる。ライオンだ。ライオンが見たい、みんなの気持ちは一致していた。他の動物は見慣れてきたせいもあって、もうそっちのけ。クルーアさんもそのことは心得ているはずで、道なき道をどんどん入ってゆく。1時間ほど動物の姿は全く見えず、そんな状態で走り回って少しあきらめかけた頃、クルーアさんが静かに話しかけてきた。
「You can see the lions.」