今朝で、マサイマラ最後のサファリとなる。そんな日に、見事な青空が初めて顔を覗かせた。6時の朝焼けに照らされて、今までになかったほど多くの動物達が姿を現していた。シマウマが、ヌーが、インパラが、トピが、昨日までとは比べ物にならないぐらいの数で群れている。振り返れば、ゾウがいる。キリンもいる。見渡す限りの大平原に、自分達の車と、数え切れないほどの野生動物達。これが正に思い描いていたアフリカの姿、野生の大国。思い切り大声で叫びたかった。サファリ5日目にして、やっと会えたこの景色。重ね重ね他のツアーメンバーには申し訳ないが、この朝のサファリはこれまでで最高のものだった。
何とも言えない澄んだ空気、さわやかな風、そして静寂。ゾウの群れに近づいてエンジンを切ると、彼らの草を食む音がガサガサと聞こえてくる。BGMは要らない。このかすかな音の中で、全ての生き物達が、それぞれの生を全うしている。厳粛な気持ちになる。朝の空気はまだ少し冷たかった。
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ブチハイエナ | インパラ(メス) | トピ |
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イボイノシシ |
マサイマラからは飛行機でナイロビまで帰ることになっていた。公園内の空港までサミーに送ってもらう。空港に着くまでの道も当然公園内を走るので、ちょっとしたサファリになった。またゾウの大群がいる。イボイノシシも滑稽でかわいい。そして、寝ているライオンの群れもいた。サファリカーがまた固まっていたのですぐにわかった。しばらく止まって写真を撮る。しかし、もう時間がない。11時出発だが、もう10分前ぐらいになっている。それでもまだのんびり走っている。時間が変更になったのだろうか。焦ってくるが、もうここはまかせるしかない、と開き直った。そしてたどり着いた空港、それはやはり同じような平原に、ちょっと平らなところが続いているというぐらいの場所で、一応オフィスだと思われる掘ったて小屋のような建物もあった。飛行機はまだ姿を見せていなかった。
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お世話になったサミー |
出発まで、サミーと少し話をした。彼の家は、マサイマラから少し離れた、ケリチョウというビクトリア湖の近くの小さな町にある。そこに、奥さんと子供がいるらしい。僕の腕時計に興味を示し値段を聞くので、ケニアシリングに換算して教えてあげると、信じられない、という風に首を振った。日本円で3万円の品である。
それから、僕の持っていた本「地球の歩き方」に興味を示し、いろいろと聞いてきた。記事の中に、ケニアの様々な部族語のあいさつがカタカナで書かれた部分があって、サミーの部族名を聞き、その部族語のあいさつをするととても喜んでくれて、「この本は素晴らしい」と繰り返していた。
やがて、小さなセスナ機が静かに降りてきた。他の乗客もいつのまにか集まっていた。サミーに別れを告げる。いい出会いだった。笑顔で手を振った。
簡単な手続きの後、すぐに乗り込んだ。20人乗りぐらいの大きさか。飛び立つと、かなり揺れる。下の景色が見たかったが、気持ち悪くなりそうだったので、ずっと眼を閉じていた。1時間ほどでナイロビに着く。日本からたどり着いたジョモ・ケニヤッタ空港ではなく、国内線のウィルソン空港である。そしてここで、冷や汗ものの体験をすることになる。