昼前に起き出し、迷わず、一階にある日本食レストラン「SAKURA」に入る。頼んだのは親子丼。みそ汁もついて、そこそこおいしい。でも量が多く、残す。頭痛がし、気分もすぐれない。嫌な心持ちで、1時半、市内観光に出発。
やはり日本人で一杯のバスに乗り込んだ。町中には、思った通り、めぼしいものはほとんどない。それでも、係員の話に耳をこらし、言われる方向を見やる。この係員の方も、非常に感じの良い男性だった。
犬ぞりが催行される場所でいったんバスを降りた。鳴き声が遠くからでもよく聞こえる。犬達は、顔は怖いが、みんなかわいい。頭を撫でてやり、写真を撮る。もちろん、ビデオも。ここには2日後、実際に犬ぞりをしに来ることになる。動物はやっぱりいい。心がなごむ。少し体を動かしたのもあって、気分が高揚してきた。
次に降り立ったのは。アイスロード。グレートスレーブ湖の凍った湖面が、そのまま1本の道となっている。れっきとした国道だそうだ。眺めはなかなか壮観だ。すべりやすい路面に立ち、写真を撮ってもらう。
1時間半ほどで市内観光は終了し、ロビーでオリエンテーションを少しだけ行った後、解散となった。係員の方に、国際回線の電話のつなぎ方とレンタカーのことを聞いてみた。電話はよくわからないが、レンタカーは近くに店があり、そこで借りられるらしかった。ホテルの駐車場を使うことができ、停めている間、電源プラグをつないでおくことを教えられた。これは日本で、インターネットを通じて知っていた。極度に寒いこの地域では、車を停めっぱなしにしておくと、凍り付いてエンジンがかからなくなる。そのため、駐車場には必ずコンセントが設置してあり、そこに車から出ているコードを差し込んでおくと、エンジンに熱が与えられ、凍り付かなくなるのだ。
道が滑りやすいのではないかと聞いたが、これも大丈夫らしかった。滑る、というのは凍った雪や氷がタイヤとの摩擦で溶けて水になるからで、あまりにも寒いこの町では溶けることがないため、雪は砂と同じことになり、滑らないとのことだった。とにかくこれで、一人で車を運転してオーロラを見に行くのは可能なことがわかった。
早速ツアーデスクに行き、オーロラツアーの変更をお願いする。当初、到着後3日間、昨日のようなオーロラツアーが組まれていたのだが、今日と明日の分のツアーをキャンセルし、レンタカーで行くつもりだった。が、今日の分のキャンセルはもう無理で、明日の分をキャンセルし、最後の夜にツアーを入れることで決着した。最終日は朝早く出発するため、前日に車を返さなくてはならず、その日の夜は、やはりツアーに頼らざるを得なかった。
変更が完了したので、次はレンタカー屋を探しに行く。と、それはすぐに見つかった。ホテル前の坂を下りて大通りに出ると、道をはさんで向かい側にあった。実際に借りるのは明日なのだが、話だけでも聞いておこうと、店の中に入った。レンタカーオフィスには初老とおぼしき女性が座っていて、借りるのは明日なんだがと前置きしたのち、話を伺った。料金も思っていたより安く、何も問題はなかった。立ち去る前に、その女性は僕に向かい、発音がいいと誉めてくれた。嬉しかった。
部屋に戻ると、また急激な眠気に襲われた。目を覚ました後、オーロラツアーのため、急いで用意をする。昨日と全く同じだ。夜9時、というのはなかなか落ち着けない時間である。