3/13(月)

【アザラシのいない島】

朝一番、係員の方に、昨日決めた内容を伝える。それにしても、この女性の態度、少し腹が立つ。人がこれほど落ち込んでいるそばで朝食をバクバクと食べ、のほほんとした顔でいる。客の人生をしょいこむ必要はないと思うが、もう少し何とかならんものか。それとも、これぐらいの性格じゃないと、この手の仕事はやっていられないのか。

午前中、旅立つ客と一緒に空港まで行く。日本人ばっかりだ。これもうんざり。離陸後の空いた時間に、航空券の変更を行う。115ドル取られるが、普通なら変更の効かないチケットなのだ。仕方がない。

午後2時からは、仕方なく、島内観光に出掛けることにした。飛行機は夜に出発となるため、それまで何もしないよりまし、という程度で気は入らない。この島には景色を見に来たわけではない。
 客は自分一人だった。名前は忘れたが、背の高い気さくな青年との、二人きりのドライブだった。アザラシがいなくて残念だ、せめてこのドライブだけでも楽しもう、と話す彼に、フォークランドで出会ったロブのことを思い出した。あの時も同じ構成、ドライバーとの二人旅だった。旅の高揚感は全く違っていたが。

買い物はいい、景色が見たい、という僕の願いに、大きな断崖や氷片の浮かぶ海岸などへ、彼は案内してくれた。それらはなかなか見応えのあるものだったが、心の中には寒い風が吹き続けていた。海は、場所によって凍っているところもあれば、もう溶けて水面が見えているところもあった。先週までは水面など見えず、どこも一面真っ白に凍り付いていた、と聞き、またも心は沈む。各場所ごとに車を止め、写真とビデオを撮っていたが、最後に訪れた海岸でフィルムの残枚数を確認した時、フィルムが入っていなかったことに気が付いた。そんなことも、この旅全体のイメージを象徴しているかのようだった。悲しかったが、ショックはなかった。もうそんなことはどうでもよいことだ。
 案内してくれた彼は、本当にいい人だった。僕が、キツネを見たいと言うと、荒れ地を無理に走って何とか見つけようとしてくれた。結局、それも一匹も見つかりはしなかったが。終わって部屋に戻ると、少しだけ気分が晴れているのがわかった。

島内各所で見られる流氷群 海辺近くの草むらでは、
地面からつららのような氷柱が出来ていた


夕方、事前に聞いていた通り6時半にロビーに行くと、あの日本人係員も小原さんも姿が見えず、運転手だけがそこに来ていた。暗くなりかけた道を空港へと向かう。24時間もいなかったこの島。来年、休みが取れればまたここに来たい。そして、その時こそ。

飛行機は、マドレーヌ島からハリフォックスという、また聞いたことのない空港を経由し、モントリオールに到着した。ハリフォックスは意外に大きな空港で、モン・ジョリのようなところを想像していたら全く違った。しかも、そこからモントリオールまではジェット機だった。
 空港から、2日前に泊まったラマダホテルに電話をかけた。空港近くのホテルで知っているのはここしかなかったからだ。空きを確認し、また同じようにタクシーでホテルに入った。急いでチェックインを済ませたが、もう12時近くなっていた。

明日は6時15分の飛行機に乗る。

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