【犬ぞり】

部屋ではゆっくり休む暇もなく用意をし、ロビーに顔を出す。既にかなりの人数が集まっている。本当に日本人だらけだ。また同じように専用バスに乗り、2日前市内観光で訪れた犬舎に向かう。雪はもうすっかりあがり、日も射してきていた。

そりには6人が縦に並んで乗りこみ、1台ずつ間をおいてスタートしてゆく。まあ最後のほうで乗ろうかな、なんて考えていると、2台目のそりでちょうど一人足らなかったので、名乗り出てそれに乗ることにした。急いでカメラとビデオをリュックから取り出す。そりには、先頭に乗せてもらった。リュックを胸に抱え込み、後ろの人に気を遣いながら、おずおずと乗り込む。これがまた狭いのだ。各人は、足を開いてそりの外に出し、前の人がその足の間に入るように乗った後、後ろの人の足がそりの中に畳み込まれる。蛇足だが、もしカップルでこの犬ぞりをやってみようと思うなら、女性の前に男性が乗るか、あるいは女性は一番前に乗ることをお勧めする。何故か。もしカップルのうち、女性が前になり、その前に別の男が乗るなら、彼女の広げた足の間に、その男が入り込むことになる。これは誰でもいい気はしないだろう。

僕の後ろは女性で、背中に当たる部分が妙に生暖かかった。カメラを渡して写真を撮ってもらうと、すぐに出発となる。
 ビデオを構える。そりを引くのは、10頭ほどの犬達だ。マッシャー(操縦士)がそりの後ろに立ち、声をかけてブレーキを緩めると、そりは勢いよく飛び出した。がくん、という衝撃の後、かなりのスピードでそりは走り始めた。小さな雪片が体の全面に浴びるほど降りかかってきて、目が開けられない。雪はやんでいるので、犬達が走る時に立てるはねが一番前の僕にまともにぶつかっているのだとわかる。コースには随所にアップダウンがあり、そりが上下に大きく揺れるたび、皆から声があがる。坂道を下るところまでは、スリル満点だった。そりの底は案外薄く、地面の感触がもろに伝わってきて、はねると痛い。しかし、登り坂にさしかかった途端、急に勢いが衰え、遂には止まってしまった。マッシャーがそりを降り、犬達のそばに寄って、体を触りながら声をかける。そして、テレビ番組の「グレートジャーニー」で関野吉晴氏がやっていたのと同じように、手綱を緩めて犬達を走らせ、初動の勢いを付けさせている。何回かそれを繰り返し、やっと坂を登りきる。

坂を越し、平坦な道に出た。実は道ではなく、ここは凍った湖の上だ。見晴らしが良く、気持ちがいい。ただし、スピードはそれほど出ていない。スリル満点のスピードは最初だけのようだ。犬達を見ていると、どうもちゃんと走っているのは一部だけで、後は横を向いて走ったり、明らかに力になってないだろう、という奴もいる。そしてしばらく走ると、何と、そのうち一頭が、ウンコをし始めた。走りながら、やっている。後でガイドの人に聞くと、犬ぞり用の犬は、何時間も休まず走ることもある訳で、走りながらできるよう、訓練されているとのことだった。

スピードもちょうど良かったので、ビデオもうまく撮影することができた。しかし、後ろの人に乗っかからないように手と腰で体を支えていたので、かなり疲れた。走り終えた後、犬達を撫でてやった。ここの犬達は、よく吠えるが、決して噛みついたりはせず、大体人なつっこくてかわいい。一通りかまってやり、写真を撮って、犬舎を後にする。やっぱり動物はいい。

  

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