明け方目を覚まし、カーテンの向こうの異変に気付く。雪だ。柔らかい、細かな細かな粉雪が、音もなく舞い落ちている。当分は止みそうにない。頭を抱えた。−絶望−。
10時過ぎ、再び目が開く。やはり雪は降っている。まだまだ絶えることはなさそうな気配に、うめき声が口から漏れる。今日も駄目なのか。僕はここに何をしにきたんだろう。このまま、大したオーロラも見えないまま帰っていくのか。帰った後で、誰に、何を話すことがあるのか。いや、もしそうなったら、誰とも話したくない。誰からも話しかけられたくない。「どうだった?」なんて言われたくない。きっと、たくさんの人がそう話しかけてくるだろうけれど。
ベッドの中で、しばらくうずくまっていた。11時頃、何とか体を起こし、一階にあるレストランに食事を摂りに出掛けた。ここには、初めて入ることになる。バフェ形式なので、少な目に取り、ゆっくりと食べる。食べながら、溜まっていた日記を書く。
そのうち、ふと顔を上げると、空が明るくなっているのに気付く。雪はまだ降っているが、さっきまでのどんよりと重い鉛色の空とは明らかに違ってきている。よし、そのまま晴れてくれ。心から願い、日記を書き続ける。
またしばらくして顔を上げる。さらに明るくなり、見たところ、雪も止んだようだ。よし!やった!!晴れる。大丈夫。そう確信する。
食事を終え、車の様子を見るため、駐車場まで歩く。外に出ると、明るくなってはいるが、まだ雪が散らついていた。車のそばへ行き、見ると、どっさりと雪に覆われていた。レンタカー屋で貸してもらった大きなブラシで雪下ろしをした。昨日は何のためにあるのかわからなかったこのブラシだが、このためだったかとうなずく。びっくりするほどうまく雪がはらえるのだ。気温が低いせいか、雪はさらさらと砂のようにこぼれ落ち、見る間に車の脇に柔らかな白い山を築いた。すぐに走行できる状態になる。念のためエンジンをかけてみるが、何のストレスもなく、かかった。電源プラグはちゃんと動作していたようだ。安心し、とりあえず部屋に戻る。今日は、午後に犬ぞりに乗るのだ。