【黄銅色のポンティアック】

昼食はまた日本料理の「SAKURA」。今日は天ぷらそばだ。その後、歩いて町に出てみた。到着後三日目にして初めて自分の足で散策する、というのも妙なものだ。この町に対する自分の感心の薄さが窺える。そう、ここに来たのはオーロラを見るためであって、市内観光をするためではない。
 とはいうものの、おみやげを探すためと、多少の興味は持って歩き始めた。近くの土産物屋に入ってみるが、やはり大したものはない。ショッピングモールに入り、いくつか買い物を済ませる。更に歩くと、地球最北端のケンタッキーフライドチキンが、ホテルのすぐそばにあった。(この町には、同じく最北端のマクドナルドもある。が、それはここから遠い。)また、その向こうに、温度表示の付いた看板が目に入る。今は持っていないが、ここの写真とビデオは後で忘れずに撮っておこう。

その後センターモールを一回りしてから、アウトドアショップで、オーロラ観測に持って行くための水筒を買う。さらに、ドラッグストアでホットチョコレート、カップヌードルなど食糧も調達。ちなみに、この町で飲んだホットチョコレートをすっかり気に入ってしまい、自分用のおみやげとして2箱買って帰った。
 手に一杯になった買い物袋を下げてホテルに戻り、部屋にそれらを置いてから、また外に出る。まだ大事な用事が残っている。レンタカーだ。店に入り、奥を覗くと、昨日少し話をしたおばさんがやってきた。

手続きは簡単だった。VISAカードを見せ、土曜日に返しに来ること、保険に入ることなどを確認したのち、外に出て車を見せてもらった。何と、新車だった。メーターを見ると、確かに93kmしか走っていない。黄銅色のポンティアック。なかなかかっこいい。話に聞いていた凍結防止用電源プラグもちゃんと付いていた。ヘッドライトの脇からひょろっと出ているコードがそれで、使い方も教えてもらった。

ナンバープレートは、シロクマの形

じゃあ、とあっけなく譲り渡され、おばさんは店に入っていった。左ハンドルの運転席に乗り込み、シートとミラーの調整を行う。ギヤはオートマティックなので安心だ。以前、パタゴニアで借りた時には、マニュアルシフトで苦労したものだ。恐る恐る車を動かす。右側、右側と自分に言い聞かせながら車道に出る。町中とは逆方向の郊外へと向かった。
 前後に車はなく、すれ違う車も少ない。しばらく走ってみたが、滑るようなこともなさそうだ。だんだんとスピードを上げてゆく。ツアーで行ったオーロラキャビンを目指そうと思った。実際に一人でオーロラを見るのはそこまで行かずとも、少しひらけて車が止められればよいのだが、何となく目的地が欲しかったのだ。探しながら走っていると、道沿いに湖が何カ所かあって、観測に良さそうなところもいくつか見つかった。

1時間ほど走ったろうか。メーターは走り始めて40kmほどのところを指している。結局、オーロラキャビンの場所はよくわからず、引き返すことにした。もう6時近くになっている。雲が出てきているのが気になる。
 ホテルまで戻ると、坂道の頂上にある駐車場に入った。電源コンセントを探すが、みな使用中で、なかなか空いていない。一番端っこに、ようやく一つ見つけ、そこに車を止めてプラグを差し込む。これで良いのか不安にはなるが、たぶん大丈夫だろう。降りる時、キーがどうやっても抜けず、マニュアルを見てもわからなかった。しかしよく見ると、ホルダーから予備のキーとドアロックのリモコンが取り外せるようになっていたので、それを外して手に持つ。部屋に帰ると、倒れ込むようにして眠った。

起きたのは10時を過ぎた頃だったろうか。すぐに窓の外を見、愕然とする。ド曇り!!!これではオーロラは見られない。最悪だ。何のために車を借りてきたのか。半分眠りながら、しばらく晴れるのを待ってみるが、見上げる夜の空は、いつまでも変わらず分厚い雲に覆われていた。
 だめだ、どうしようもない。落ち込み、ふてくされるようにまたベッドに転がり込むしかなかった。

次へ

前へ    カナダTOPへ戻る 旅行記TOPに戻る ホームへ戻る