ニュージーランド
野生ペンギンと大自然を巡る旅
2023年9月29日~10月16日(18日間)
■ 海岸沿いをオアマルへ
10/12(木)
■ ダニーデンを去る
ダニーデンを去る日。6時に起きて支度をする。あでりーはオクタゴンにあるポストにハガキを投函しに行き、その間に僕は車を宿の前まで移動させる。荷物を積み込み、7時すぎに出発。朝の静寂につつまれたダニーデンの町並みに別れを告げる。自然や文化を堪能し、町は大きくて便利。ダニーデンは素晴らしいところだった。
気持ちのいい空気を抜け、ひたすら1号線を走る。すぐにきれいな海岸線が見えてきた。曇っていた空が、走るにつれどんどん晴れていく。ほぼ高速走行なので、昨日のように途中で車を停めることはできないが、ときおり見かける鳥を楽しみつつ進む。
■ モエラキ・ボルダー
カーナビのとおりに走り、1時間ちょっとで最初の目的地、モエラキ・ボルダーに到着する。ここはあでりーが来たがっていたところだ。浜辺に降りていくとすぐに、特徴的な丸い石が見えた。ウイスキーのロックに入っている丸い氷のような、直径1メートルほどの球形の石がごろごろと転がっている。ほんの一部が砂から出ているもの、半分が出ているもの、まるまる球のまま出ているものなど、様々な様相を見せていて面白い。遠景、近景をくまなく撮影する。

丸い巨石がごろごろと
林の遊歩道があったので、いったん受付あたりまで戻り、遊歩道を進む。ひんやりしていて気持ちがいい。ふたたび岩のある海岸に出たので、海岸を歩いて入口訪問へ戻る。途中、写真を撮ってあげると声をかけてくれた人達と、二人の写真を撮り合う。空はきれいに晴れたので、景色が本当に美しくて気持ちがいい。受付まで戻り、売店でブルーペンギンの木彫りの置物を見つけたので買う。さらにあでりーはポストカード、僕はモエラキ・ボルダーのしおりも買った。

売店の屋根も石の形

ズアオアトリ(雌)

ズアオアトリ(雄)
■ カティキ・ポイント
次に、近くにあるカティキ・ポイントを目指す。ここでは、ニュージーランドオットセイとキガシラペンギンが見られるという。1号線に戻ってからふたたび海岸線に入り、未舗装道路を進むと、昨日のオタゴ半島に似た絶景が広がっていく。やがて、目印の灯台が見えた。駐車場に車を停めて歩き始めたものの、観察ポイントまでどれくらい歩くかわからないため、少し早いが先に昼食をとることにした。車に戻り、弁当を広げる。昨日焼いて残ったラム肉が美味しい。デザートは、昨日作っておいたピーナッツクリームのサンド。
食事を終え、灯台の脇からつづく遊歩道を歩いていく。小鳥が飛び交っているが、なかなか詳細種はわからない。キガシラペンギンが歩いているかもしれないと思うと、心がはやる。海岸が見えて、キガシラを探していると、オットセイが見えた。歩くにつれ、オットセイがどんどん姿を現す。仕切りがなく海岸まで降りられるので、すぐ近くまで行ける。絶壁の岬の突端あたりに着くと、本当にオットセイだらけで、ぼんやり歩いているとすぐ先にいたりするから気を抜けない。あまりにも楽しくて、強風のなかビデオと写真をばんばん撮ってしまう。(このとき、少し離れた場所にいたあでりーは、僕が絶壁のぎりぎりまで行って海に落ちてしまうのでではないかと本気で心配していたらしい。)けっきょくキガシラペンギンは見られなかったが、オットセイ欲は十分に満たされた。これほど大量のオットセイをこんなに近くで見たのは今回初めてで、海獣という意味ではフォークランドで大量のアザラシを見て以来だった。

遊歩道の入口

遊歩道を進んでいく

海岸に出た

オットセイがごろごろいる
■ オアマル到着
モエラキ・ボルダーとカティキ・ポイントでかなり時間をとってしまったが、今日はさらに進む必要がある。12時半過ぎにレンタカーに戻り、一路、目的地のオアマルを目指す。道中、あでりーと二人で、モエラキ・ボルダーとカティキ・ポイントの素晴らしさについて語り合った。
カティキ・ポイントから1時間くらいでオアマルに到着した。インフォーメーションの前に車を停める。まずは夜のブルーペンギンコロニーの予約を試みるが、予約は不要で、今日の20時に現地に直接行けばいいことを教えてもらう。
その後、近くにある店を覗いて回る。オアマルはスコットランドの文化を色濃く残している町で、これまで訪れた町とは趣が異なっていて面白い。スチームパンクのメッカにもなっているようで、そうしたファッションや商品もあふれている。パン屋さんがあったので覗いてみると、ハード系のパンが美味しそうだ。昨日焼きのパンが3ドルで売っているのを見つけ、明日も朝9時から開いていることを確認し、店員にその旨を告げて出る。

オアマルの町並み
宿のチェックイン時刻は13時だが、すでに14時になっていたので、宿に向かう。宿の前の道路に車を停めてスタッフに訊くと、駐車場は裏手にあるらしい。行ってみるとそれらしきスペースがあったので停める。そこから表通りの入り口までスーツケースを引く。気のいい若者が受付をしてくれた。部屋はやや狭いが、悪くはない。キッチンもきれいで、トイレとシャワーは部屋のすぐそばだ。
いったん部屋のベッドで休憩をとる。その後、シャワーを浴びてから、買い物にでかけた。まずは夕食のメイン食材を買うため、あでりーの調べたフィッシュアンドチップスの店に行く。着くと、フィッシュアンドチップスだけではなく肉のメニューもたくさんある。魚は、スチュアート島で食べた「BLUE COD」の名前が書いてある。他の種類があるかを尋ねると、もう1種類を教えてくれて、絵でみるとヒラメのような形だった。その2種類を注文する。次にスーパーの「カウントダウン」に行き、ハム、ポテトサラダ、カット野菜など、明日の昼食くらいまでの食材を買う。
宿に戻り、あでりーがサラダの用意をしてくれて、メインの魚と共にいただく。魚のフライは思ったより大きく、すこし値段が高いと思ったが、ボリュームがあるので納得だ。そして、どちらも美味しく、明日まで残すつもりが二人とも全部食べてしまった。
宿の若者が、ブルーペンギンとキガシラペンギンの見られる場所を教えてくれて、キガシラを見るなら朝6時がいいよと教えてくれた。また、キッチンにいた老人もペンギンの情報をくれた。あの老人は宿のスタッフなのかどうか、最後までわからなかった。

本日の夕食
しっかり寒さ対策を施し、19時前に宿を出る。ブルーペンギンコロニーまでゆっくりと歩く。運がよければ道中でも見られるらしいので、海岸沿いを注意しながら見ていく。途中、有名な白いペンギンの像と、ペンギンに注意の標識を見つけ、写真を撮る。

ペンギンに注意、の看板

ブルーペンギンコロニーに到着
ブルーペンギンコロニーに到着。普通席が1人43ドルで、特等席はさらに高い。悩んだすえ、普通席にしたが、これが最良の選択だったことがあとでわかる。
しばらく売店のグッズを見ながら時間を過ごす。20時開始だが、19時半過ぎに人が中に入り始めたので、僕らもついていく。受付近辺にも席のあたりにも、写真やビデオ撮影は不可と書かれていた。海岸に柵があり、柵の後方に段差のある席がもうけてある。海岸の近くで見られるよう、柵に寄りかかって立って眺める。柵の向こう、すぐそばにはオットセイがごろごろいて、興味を惹かれる。それでも僕らは、浜辺に目を凝らし、ペンギンが上がってこないかを観察し続ける。
やがて時間になると、席につくよう指示があったので、従う。アナウンスが始まり、よく聞き取れないが、この施設の歴史やペンギンの現状などを話しているようだ。中国人観客が多いためか、合間に中国語訳が入っていた。
しばらくすると、100mほど沖合にやってきた、というアナウンスが聞こえたので眺めていると、数十ほどの頭が海面にゴマ塩のようになっているのが見えた。いよいよ上がってくるようだ。待っていると、ついに浜辺に立つ姿が見えた。少しずつ斜面を上がっていく。高額の席のほうに通路があり、ペンギンたちはそこを走り抜けていく。僕らの席からはやや遠いが、それでも愛らしい姿がよくわかる。何度かそうした群れを見送るうち、3羽ほどが立ち止まって動かなくなった。彼らは道を離れ、僕らの席のほうを向いている。やがて、僕らのほうに向かって歩き始めた。あれ、あれと思ううち、すぐそばの柵の向こうまでやってきた。柵からこちらには通れないので、また向こうへ戻っていくのだろうと思っていたら、なんと、柵の細い隙間を抜けて、3羽のペンギンが僕らのいるスペースに入って来たのだ! まったく予想外のできごとだったので興奮してしまった。座席スペースの中央あたりに裏へ抜ける通路があり、ペンギン達はそこを歩いていった。
引き続き、ペンギン達は次々と浜から上がってくる。そしてやはり、数羽が途中で止まってはこちらにやってくる。僕らはそれを待ち受け、かわいい姿を至近距離から眺めた。高額の席のほうはそこまで近くに来ないため、こちらの席のほうがよほどいいことがわかった。
同じことが何度か続き、1時間近く経過すると、徐々に客が帰り始める。僕らは粘り強く待つ。周囲の客が少なくなったので、好きなように席を移り、いちばんよく見える場所で観察を続けた。あいかわらず、3~4羽ずつが柵を越えてやってくる。もう触れそうなくらいだ。じっくりじっくり観察することができる。本当にうれしい誤算だった。
ふと気づくと、もう僕らくらいしか客が残っていなかった。あでりーは21年前にここに来ているが、席のそばまでペンギンが来た覚えはないらしい。アナウンスをしていた男性がいたので、話しかけてみた。こちらの席の近くにも巣が設置されたため、こちら側にもやってくるようになったこと、その数が増えていること、今夜は165羽が来たことを教えてもらった。
すっかり満足し、僕らも引き上げることにする。体が冷え切っていたが、心は満足感でいっぱいだった。はしゃぎながら帰っていると、通路に人が止まっている。見ると、ペンギンの小さな姿があった。その後も、3~4回は同じように海岸にいるペンギンを見た。この町ではこれが普通なのだろうが、テレビで見たり本で読んだりした光景が本当に目の前にあることに感激する。
宿に戻ると、22時を過ぎていた。早々に歯磨きをし、眠る。明日はキガシラを見るため、4時半に起きるのだ。