Watching (現地観戦記Y)

エピソード2 シアトルは今日も雨だった(雨降って地かたまる)

8/10/2006

1.到着

 
NW0008便、シアトル・タコマ国際空港に定刻に到着しました。現地時間がアナウンスされ、日本時間のままの腕時計を直しました。午前7時、2006年1月20日の金曜日の早朝でした。機内では映画を2本も観てしまいました。帰りにも1本観ました。今回は計3本です。日本未公開作品もありました。"Dreamer"という作品で、5月にやっと封切りされました。先取りして、いい気分です。年に一回の現地観戦ですから、機内での映画も含めて目いっぱい楽しみました。早めにホテルにチェックインし、ベッドでぐっすり睡眠をとる予定でした。

 入国審査は年々厳しくなる気がします。両手人差し指の指紋をとられました。顔の前に置かれていたのはカメラだと思います。知らずのうちに顔写真もとられていたのでしょう。目的を聞かれました。チャンピオンシップ観戦と言ってチケットを見せました。係官は笑みを浮かべて、"Sunday,Good luck."とだけ言いました。

メトロバスの停留所
 時間がたっぷりあるので、ダウンタウンへはメトロバスで行くことに決めていました。一番安い方法です。帰りにグレイラインの乗り場が変更になっていることを知りました。それを機会にダウンタウンへの交通手段をまとめました。番外編として掲載しています。ぜひ参考にしてください。バスは早朝のため客も少なく、荷物があっても何の問題もありませんでした。ただ、すこしタバコくさいのが気になりました。バス内はもちろん禁煙です。タバコを吸う客層だからなのでしょうか。ちなみにグレーラインのエアポーターでは、ほのかに香水の香りがした記憶があります。天気はくもり。少し前に雨が振ったのでしょう。路面がぬれています。シアトルでは雨が歓迎のしるしです。

 "Post Office"のアナウンスで下車しました。ホテルは"Executive Pacific Plaza Hotel"。歩いてすぐでした。早朝にもかかわらずチェックインOKでした。が、部屋の準備が間に合っていないと言われました。それって、チェックインOKですか。荷物を預け、1時間ほど散歩することになりました。観光用の地図を渡されました。ベッドで寝るつもりが強制散歩になり、眠気がどっと押し寄せました。考えたら、ロビーでくつろいでいてもよかったのでした。

バンク・オブ・アメリカ・タワー(黒)
 当てもなくぶらぶらしていたら、シアトルセンターの近くに来ました。スペースニードルを見上げると、最高部に"12th Man"の旗が翻っていました。(エピソード1の写真参照)それから3日間、シアトルの街のあちらこちらでシーホークスを応援する旗や飾りを目にしました。久々にスペースニードルに登ってみようかと思いました。が、料金が高いのでやめました。


 まだ登ったことがないバンク・オブ・アメリカ・タワーに行ってみようと思いました。バンク・オブ・アメリカ・タワーの高さはシアトル1です。スペースニードルの2倍もあります。それなのに安く、しかもクエスト・フィールドが一望できる場所にあります。いい写真がとれるに違いありません。バンク・オブ・アメリカ・タワーへ行く途中にホテルがありました。時計を見ると約束の1時間が経過しています。思い立ったが吉日、すぐその足で行くべきでした。結局、バンク・オブ・アメリカ・タワーは次回送りになりました。平日のみの営業で、翌日と翌々日の土日は休みだったのです。

 部屋の準備は終わっていませんでした。ロビーでさらに1時間待たされました。2年前、このホテルに泊まったとき、コンシェルジェ用デスクのコンピューターを使わせてもらえるように交渉しましたが、ダメでした。うみねこさんの観戦記によると、1年前にはロビーに置かれたコンピュターが使用可能になったそうです。ですが、日本語での入力はまだできなかったようです。コンピューターはロビーに2台ありました。そのうちの1台は日本語入力が可能でした。便利になったものです。さっそく"Hawks Nest"の掲示板に書き込みました。無事の到着と今後の予定など。

 

2.NBA観戦

キーアリーナ
 ホテルで睡眠をとり、目覚めたら夕方でした。さっそくNBAのシアトル・スーパーソニックスの本拠地、シアトルセンター内のキーアリーナに向かいました。すこし前に雨が降ったようで、路面が濡れていました。朝も夕方も外に出る前に雨がやんでいたことになります。なんという幸運でしょう。雨上がりの澄んだ空気は、とてもすがすがしく、いい気分です。

 チケットは当日売りで大丈夫と判断していました。が、正直言って一抹の不安がありました。その不安は窓口で吹き飛びます。どんな好みの席でも残っていました。NBAの試合を生で観るのは初めてです。もしかしたらこれが最後かも知れません。すこし金額は張りましたが、窓口のおばちゃん推薦の席にしました。”Very good seat!”の言葉通りのすばらしい席でした。

シーホークス応援の寄せ書き 中央に「必勝!」の文字
 
 シーホークスへの応援メッセージを寄せ書きするコーナーが作られていました。緑のジャージ姿のきれいなおねえさん達はソニックスのチアでした。彼女たちも書き込んでいました。もちろんわたしも書きました。日本語で。それから会場に入りました。見事なすり鉢になっていました。第一印象、コートが狭い。バスケットボールですから、当たり前ですね。コートでは選手の練習が始まっていました。客の入りは半分くらいでした。カナダ、アメリカの両国国歌の演奏のあと、となりの子ども連れのおじさんが、「この会場の中にいったい何人のラプターズ・ファンがいるのだろうね」と言っていました。相手はカナダのトロント・ラプターズ。ソニックス同様、成績はかんばしくありません。

試合開始前のアリーナ内部 スーパーソニックス(白)
 

 試合開始、得点がどんどん入ります。残念ながら、どのプレーがいいプレーなのか、よくわかりません。手拍子やノイズの催促があり、いっしょにやりました。でもノイズには真剣になれませんでした。アメフトのノイズは相手チームのコールやカウントを直接邪魔します。バスケットの場合、ノイズが相手チームを困らせるようには思えませんでした。決してNBAがつまらないと言っているわけではありません。スピード感はスゴイの一言です。でも、もう一歩踏み込んで、楽しむところまでは行きませんでした。

パンサーズをぶっ飛ばせ
 ハーフタイムにはソニックスのマスコットがホークスのジャージを着て登場しました。パンサーズのジャージ姿のボウリングのピンも登場しました。ホークスのジャージを着たマスコットが、巨大なゴムのパチンコでピンめがけて跳ばされます。パンサーズのピンをなぎ倒しました。見事なストライクでした。会場は割れんばかりの大歓声でした。この夜で一番盛り上がりました。あとは恒例の「彼女にキス」のときだけでした。


 後半に入ると会場もかなり埋まってきました。ホークスのジャージ姿の客をいっぱい目にしました。試合のほうは一進一退でした。しかし、ソニックスは終盤に突き放され、ファール合戦も功を奏さない得点差になりました。試合終了を待たずして席を立つ客も出始めました。たいへん残念な結果となりました。くやしい思いは、あさってのチャンピオンシップで晴らそうと誓いました。機会があれば、まだ生観戦のないアイスホッケーの試合も観てみたいと思いました。


3.Qwest Field Tour

 翌21日の土曜日、予定はクエスト・フィールドの見学。外を見ると、雨でした。この日は出かける前にやむことはありませんでした。でも、傘をささない人もいるほどの小雨でした。心配は明日の雨です。今日降れば、明日はないだろうと勝手な予想をしていました。

 1年ぶりのクエスト・フィールドは雨の中にひっそりとたたずんでいました。まるで明日の決戦に備えて、力をためているかのようでした。パンサーズの旗を掲げた車が2台、北側駐車場の柵の外に現れました。クラクションを数回鳴らしたあと、一斉にドアが開き、中から数人の男女が出てきました。クエストフィールドに向かって挑戦的なたたずまいでした。でも、かなり疲れている様に見えました。伸びをしている人もいます。カロライナ州から直接来たのだと思いました。おそらく明日のために一度クエストフィールドまで行ってみようということだったのでしょう。ご苦労さんです。ちなみに、こちらは日本からです。

 プロショップに入り、クエスト・フィールド・ツアーのチケットを買いました。7ドル。翌日はシアトル在住のMASAさんと交流予定でした。子どもさんといっしょと聞きましたので、おみやげにチャンピオンシップ限定のピンバッチを買いました。このピンバッチがどんどん売れていきます。他の商品もどんどんなくなっていきます。選手のジャージも残りわずかになっていました。ホームジャージで、あるのは「8」「37」「23」「26」「87」だけ。客が店員に希望の番号を伝えていましたが、答えは「ソーリー」。ジャージはすでに在庫なしだそうで、店頭にない番号の入荷は当分先とのことでした。

 アウェイジャージにいたっては「8」「37」しかありませんでした。来年からのアウェイ観戦も視野に入れ、買って帰りたかったのですが、迷いました。「37」はアレクサンダーですが、オフのFAで流失必至と思っていました。もちろんその後オフに長期契約を結び、残留になりました。が、そのときは決断がむずかしい状況でした。「8」はQBのハッセルベックです。以前QBのジャージを購入したことがありました。その後着れなくなった経緯がありました。その番号は「3」です。踏み切れませんでした。結局あれこれ考えていたら、ツアーのスタート時間になってしまいました。

 12時30分スタートのツアー参加者は60名、史上最高だそうです。30名づつの2班に分かれて行くことになりました。この後の2時30分スタートのツアーは、いったい何人の参加者がいたのでしょうか。人数が少ないときは順番に出身地を言ったりするそうです。そのときに"Japan"と言えば、周囲はおどろき、注目されていたことでしょう。今回、それはありませんでした。でも、注目されました。ホームの12番ジャージの上にダウンジャケット、頭には「一番」と書かれたハチマキ、手には「必勝」と書かれたセンスという格好だったので。

いよいよツアー開始 ロッカールーム

 第2グループのツアー・ガイドは女性のマリアさん。子供の参加者も多いので、ゆっくりわかりやすい英語を話してくれました。コンコースから、いよいよ内部へ入っていきます。まずは選手のロッカールーム。普段は入れるそうです。が、その日は試合の前日、すでに選手の私物が置いてあるため、入れませんでした。出入り口から写真を撮りました。すぐ近くに80番台のジャージが並んでいました。「82」「84」「87」を見つけ、すこし興奮してしまいました。選手が出てこないかと期待しましたが、残念それはありませんでした。
 
選手入場口
 ロッカーから選手の入場口へと移動しました。フィールドに出る前に、選手がお互いを鼓舞している場面がよくテレビで中継されます。その場所でした。試合開始直前の選手の気分になりました。そしてその気分のまま、小走りでフィールドに出ました。歓声の代わりに雨を浴びました。雨は本格的になっていました。ターフにはシートがかぶされていました。天気がよければフィールドの上を歩けたのかどうか、わかりません。そんな話を聞いたような気もしますが、定かではありません。もしそうなら、もう一度参加してもいいのですが・・・。とりあえずシートから少しはみ出ているターフに触れ、フィールド・ゴールの黄色いポストをバンバンとたたいてみました。

 次は記者会見場です。テレビや雑誌で何度も見た覚えがありました。親しみやすい場所のため、ついつい羽目をはずしてしまいました。選手気分で記念撮影。みなさん無言でした。自分の番のとき、マイクに近寄ったらスイッチが入っていることがわかりました。何と言おうか迷いましたが、シアトル市民の知っている日本語はこれしかないと思いました。「イチロー、イチバン」案の定、大受けでした。


記者会見場 プレス・エリア

 プレス・エリア、アナウンス室を見学。どんどん上階に上がっていきます。途中、裏からセーフコ・フィールドが見えました。ついに南側スクリーンの上に出ました。試合前に"12th Man"の旗を掲げるところです。ダウンタウンのビル群も見え、いい眺望でした。翌日の旗をあげる人は誰かという質問が出ました。マリアさんは「知っていますが、残念ながら、教えることは止められています。」と答えていました。
「スティーブ・ラ−ジェントでしょう」と、ある人が言いました。
「今までに一度もあげたことのない人です。」と、マリアさん。「ラージェントはあります。」
「ポール・アレン」と、別の人が言いました。
「何とも答えられません。」と、マリアさん。たしかに名前は出していませんでしたが、答えているも同然でした。愛嬌のあるマリアさん、とても好かれていました。「一番好きな選手は」と、訊かれ、迷わずジョシュ・ブラウンと答えていました。
 「彼は今日のような雨の中でも、黙々とフィールド・ゴールの練習をしているの。」

旗を揚げるポールとマリアさん CLUBレベル・エリア

 CLUBレベル席とレストランを見学。このあたりの壁にはさまざまな写真が飾られていました。ホークスの長い歴史をつづってあるようでした。じっくり見たいと思いましたが、時間がありませんでした。CLUB席なら購入可能です。いつの日にか実現の可能性ありです。食事しながら観戦なんて、なんてぜいたくなことでしょう。

 さらに豪華なSUITESへと案内されました。将来ここを再訪する可能性はありません。まさしくツアーでしか入れない、縁の遠い世界です。にわかVIP気分になりました。個室に入りました。数名分のソファがあります。視界をさえぎるものは一切ない眺め、すばらしいの一言。試合を観る以外の楽しみも用意されているようです。そんなもの必要ないと思いますが。ほとんどが会社の接待で使われるとか。ツアーの人が多く部屋からあふれてしまい、満足な写真を撮ることができませんでした。公式HPのSUITESのページにリンクしておきました。興味がある方はこちらをクリックしてみてください。

SUITES

壁に貼られた写真 SUITESレベル・エリア

 以上で終了です。あっという間でした。時計を見ると1時間半近く経過していました。童心にかえり、むじゃきに楽しみました。外はまだ雨でした。雨はシアトルの名物です。雨は天の恵みです。雨が降らなければ何ものも生きられません。「雨降って地かたまる」ということわざを思い出しました。雨が多いから敬遠するなんて信じられません。雨が多いからこそシアトルが好きなのです。「雨よ、どんどん降れ。降った数だけシーホークスは強くなる。」なんて、意味のわからないことをつぶやきながら帰りました。

 部屋に入り、スイッチをオンにしましたが、明かりがつきません。停電でした。この部屋だけでした。おそらく何かの原因でブレーカーが落ちたのでしょう。フロントに連絡してからも長い間つきませんでした。電力が回復してから、テレビをつけました。パイク・プレイス・マーケットを観光するパンサーズのファンが映っていました。昼間の人たちとは違うグループでした。インタビューを受け、「ニューヨーク、シカゴ、楽しかった。わたしたちにシアトル観光をさせてくれたシーホークス、ありがとう。これでシーホークスの役目は終わり。次はデトロイト観光だ。」と応えていました。

 普段ならムッとすることが続きました。でも、まったく腹は立ちませんでした。翌日の決戦に向け、すでに気力充実していたため、何も気にならなかったのです。停電だろうが、パンサーズのファンの皮肉だろうが、ささいなことです。翌日の勝利への想いは、何ものも入る余地がないほどに堅くゆるぎないものになっていました。時差の関係で、なかなか眠れない夜でした。そのため勝利への想いはますます強くなっていきました。そして、それはやがて確信へと変わっていきました。しばらくして心地よい眠りにつきました。

 次回はチャンピオンシップ当日です。


(画像はすべてオリジナルです)
現地観戦記Y

エピソード1 石の上にも3年目の現地観戦

エピソード3 見はてぬ夢のつづき

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