I want to touch you
Kei Kitamura
<4>
そっと触れた緑の髪は、やはり柔らかくツンツン尖った感覚は殆どない。
すやすやと寝息を立てているゾロは起きる気配はなく、サンジは思う存分髪の感触を味わうことが出来た。
誰も見ていないこの隙に、サンジはゾロをまじまじと観察することにした。普段こんなに風に見ることもないし、見ているのは薄闇の中でばかりだ。
− いい具合に焦げてんなぁ…
ゾロの剥き出しの腕は褐色に日焼けし、隆起した筋肉にはうっすらと汗の玉が浮かんでいる。幸せそうな寝顔からは、海賊狩りという呼び名が付いている剣士には到底見えないが、ここでサンジが殺気を漲らせば即座に目を覚ますのだろう。
寝ているゾロの横に回り、そこに腰掛けた。胸ポケットから煙草を取り出すと、慣れた仕種で火を点ける。紫煙が空へと浮かび、ゾロへと流れていった。
一瞬ゾロが煙に反応したような気がして隣を伺い見たが、ゾロはいつもの微動だにしない座って腕を組んだ姿勢で眠っているままだった。
− クソ暑ぃのによぉ…よく寝てられるぜ
「あら?」
ゾロとサンジが座る甲板へ顔を覗かせたのは、アラバスタから同乗し始めたロビンだった。
「ああ!ロビンちゃん!どうしたんです?ナミさんの部屋に居たんじゃ…」
大仰な仕種で立ち上がるサンジにロビンは苦笑を漏らした。
「ええ。少し喉が渇いたと思って」
「そうですか。じゃ、何か飲み物を運びましょう。ナミさんの分も淹れますから、キッチンまで来てください」
慌ててキッチンに向かうサンジをロビンの咲いた腕が引き留めた。
「?…えっと、何かな?部屋まで運ぶ?」
「いいえ、お邪魔しちゃったかと思って」
サンジは首を傾げたが、すぐに思い当たり否定する。
「あのアホと?何を言うんでしょう!いいんですよ、アホな顔をちょっと拝んで呆れてただけですから。ロビンちゃんも近寄るとコケがくっつくから気を付けてください」
「そう…?」
「誰が苔だ…」
背後から剣呑な低い声が響いて来た。
サンジが振り返ると、ゾロが立ち上がり、両手を上げて背伸びをしていた。大きな欠伸付きで。
続く。next
2002/7/15UP