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あの素晴らしい愛をもう一度

<中編>


 ゾロが帰って来ない。

 チョッパーと買い物を済ませて、一旦船に荷物を置いてから宿に戻った時には夕暮れ時になっていた。食事は宿の1階で取れるようになっている。ルフィが騒ぐのでゾロを待たずに夕飯を取ることにした。
「ゾロどこ行ったんだろうなぁ」
 ガツガツと見る間に皿の上の料理を片づけている船長をげんなりした表情で眺めていたウソップが、一息つくようにビールを片手にそんな事を言い出した。
「ええ。ま、アイツの事だからまた道に迷ってるんだわ」
「あら、そんなに広い街じゃないわよ」
 ロビンが意外そうに小首を傾げる。
「それを迷うのがゾロなんだよなー」
「あんな黄緑野郎の事なんて放っておいて、お嬢さん方、デザートでも?」
 食事を終えた女性二人に、サンジは空かさず飲み物とデザートを店主に告げる。不機嫌さが見え隠れするサンジにナミとロビンは目を合わせると、小さく肩を竦めた。
「サンジ機嫌悪ィな」
「ああ?」
 他意はなく、ウソップがいつもの軽口を叩くと、一目で不機嫌と分かる表情でサンジが振り向く。
「え?機嫌悪いのか、サンジ?」
 肩を竦めたウソップの隣で、食後のデザートを食べていたチョッパーも慌てて顔を上げた。
 サンジは小さく舌打ちすると、かろうじて笑顔を作る。
「悪くねぇよ。チョッパーが買い物手伝ってくれたからな。ありがとよ。良い子だなー、チョッパーは」
 帽子の上から頭をグリグリと撫で、余計なこと言うなとばかりにウソップを睨み付けた。
「今日の片づけ当番はウソップに任命だ。とっとと皿洗いしろ」
「えー?!藪蛇…」
「それとそこのゴム!!いつまで喰ってやがるっ!!テメェは見張り当番だろ、さっさと風呂にでも入ってこい!」
 デザートの入ったボールに顔を埋めていたルフィにまで、サンジの攻撃の矛先が向いた。

「本当にご機嫌斜めね」
「傍迷惑なのよね…」
 端で見ていたロビンとナミが大きく溜め息を付いた。



 ゾロが船に戻って来たのは、見張り当番のルフィと朝食の仕込みをしているサンジの二人だけが起きていて、他のクルー達が寝静まってからだった。
 暗闇に足音を聞き、ルフィが下を覗き込むと刀を三本差した影。
「おお!ゾロ!久し振り!」
「毎日ツラ合わせてんだろうがよ。つか、でけぇ声出すんじゃねぇ。バレんだろうがっ!」
「何がバレるって?」
 ゾロは聞こえてきた不機嫌そのものの声に、やっぱり、と頭を掻いた。キッチンの扉が開かれ、煙草を銜えたサンジが仁王立ちになっている。キッチンの明かりが逆光になりその表情は伺えないが、怒っているだろう事は気配で分かった。
「サンジ〜!夜食か?!」
「まだ早ぇだろうが。今喰ったら、オマエ寝るだろ。後だ待て」
「ちぇ〜…」
「……」
「……で?」
 で?と問われたところで、ゾロには言うべき言葉が出てこない。
「で…?」
「迷子マリモはこんな時間まで、メシも喰わずにドコをほっつき歩いてたのかって聞いてんだよ。ずーっと迷子になってたとでも言うのかよ?血のニオイがすんだよ、クソ剣士。人でも切って来たか?」
「…ドコに行こうと俺の勝手だ」
 棘を含んだ言葉に、ゾロも自然突っ慳貪な言い方になってしまう。突っ掛かってこられると、つい売り言葉に買い言葉ではないが、ゾロの方もカチンと来る。
 でも、ちょっと今の言葉は不味かったと思った瞬間にはもう遅かった。
 小さく息を飲むサンジの気配。
「おい…」
「ああそうだな。じゃ勝手にしろよ。メシはねぇからな。その血のニオイ落としてとっとと寝腐りやがれ」
 バタンとキッチンの扉が閉じられた。
 マズイ。益々サンジの怒りに火を注いでしまったと、この後どうやって機嫌を直させるか考えてげんなりする。
「ゾロー!」
「んだよ」
「あんまサンジ怒らせんなよ。ってナミが言ってたぞ」
 ロクな伝言残しやがらねぇ、とゾロは眉間の皺を深くした。
「分かってるよ」
「そっか。ならイイ。サンジに夜食くれって言ってくれ!」
 さっきまだ後だと言われた事など、既にルフィの頭の中からは消えているらしい。ゾロは苦笑しながら、分かったと答えた。


 キッチンの扉を開くと、ルフィの夜食だろうか、それとも明日の朝食だろうか、美味そうな匂いがゾロの鼻を擽る。空腹の腹の虫もそれを感知して盛大に鳴きだした。
「…んだよ。早く風呂にでも入って寝ちまえって言ったろ。血臭ェんだよ、テメェは…」
「んな匂うか…?」
 クンクンと腕を上げ自分の匂いを嗅ぐ。
「ドコ行ってた、とかもう聞かねぇから、今、すぐ、ココから出てけ」
「…腹減った…」

 −− 人の話を全く聞いちゃいねぇ

 サンジはフライパンを上げ皿にルフィの夜食を盛ると、視線を合わせようともしなかった顔をゾロに向けた。
 その瞬間に視界に入ってきたモノ。

「…コレ……」
「何か喰わせろ」
「オマエ、コレ何処で…?」
「お前人の話聞いてるか?腹減った。何か喰わせろって言って…」
「おいっ!テメェこそ人の話を聞きやがれっ!!この酒、何処で手に入れて来たんだよっ?!」
 テーブルに置かれていたのは、先日ゾロが勝手に飲み干してしまい、今日酒屋でも空き瓶しかお目にかかれなかった酒。
「酒屋で。取りあえず何かねぇのかよ?」
「酒屋…って…」
 グウグウとうるさいゾロの腹の虫が、緊張感を削ぐ。
「ああ、ウルセェな。これでも喰わせてろっ!」
 ルフィの夜食用に作っていた物とは別の皿がゾロの前に差し出された。
 サンジはちゃんとゾロ用に夕食を準備していたのだ。ルフィに食べられないようにと、ウソップが片づけを終えてから作っていた食事。
「おう」
 嬉しそうに手を合わせ、出されてくる料理を食べ始めた。
「オマエこれ酒屋で買ってきたのか?」
 もぐもぐと頬張り、声を出せないゾロはコクコクと頷く。
「酒屋ってこの町には一軒しかねぇって言ってたぞ。オレが行った酒屋には空瓶しか残ってなかったって事は、オレが買う前にオマエが買ってたって事か?つか、オマエそんな金持ってたのかよ?」
 食事を採っているゾロは返事を返す事が出来ず、ただ頷くだけで、ちっとも返事になっていない。何かを喋ろうとするが、それよりも食欲の方が勝っているようで、箸を止める事は無かった。
「ああ…分かったよ。飯喰ってからでいい」
 噎せそうになっているゾロに、グラスを手渡すと、サンジは酒を手に取りゾロの向かいに腰を下ろした。

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2003/5/26UP

もう平謝りするしか無く…
早く終わらせろ!とお叱りの声もどこからともなく聞こえてくるような感じで(爆)
**Kei**