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あの素晴らしい愛をもう一度

<前編>




「出てけーーーーっっっっ!!!」
 けたたましい音を立ててキッチンのドアが開き、勢いよく飛び出して来たゾロがメインマストにぶつかった。
 飛び出したというより、サンジに蹴り出されたというのが正しい。
「…ってぇ…」
 マストに沿ってズルズルと落ちてきたゾロが、頭を押さえつつキッチンを仰ぎ見ると、蹴り出したサンジが怒りも露わに見下ろしていた。
「何しやがるっ」
「何しやがるだぁ…?テメェは暫くキッチンに立ち入り禁止だっっ!!!」
 サンジはクルリと踵を返し、開いた時と同じ勢いでキッチンの扉を閉じた。
 訳も分からず頭を押さえているゾロを、またか…と言った風情でナミとウソップが眺める。船長は我関せずとばかりに、定位置でバクバクとオヤツを貪り喰っていた。ロビンとチョッパーの姿は見えない。二人ともそれぞれに部屋に籠もって本でも読んでいるのだろう。
「またサンジくんを怒らせたみたいね、ゾロ」
「今日は何やったんだよ…。あんま怒らせんなよ、ゾロ。とばっちりが俺に来るんだからよぉ。あの高さのマスト…誰が修理すると思ってんだよ」
 ニヤニヤ笑うナミと、同情するような顔のウソップが次々と声を掛けてきた。
「何でもねぇよ。つか、俺か?!俺ナンもしてねぇ…」
「アンタがそう思ってても、サンジくんの逆鱗には触れたんでしょ。相変わらず無神経な事でも口走ったんじゃないの?」
 もう興味が無いと言った風情で、ナミは広げていた新聞に目を落とした。

(俺が何したってんだよ……)




 キッチンではゾロを蹴り出したサンジが、それでも怒りが抑えられないとばかりに、ガチャガチャと音を立て食器を洗っていた。

−− 信っじらんねぇっっ!!!

 あンのクソハラマキと、毒づきながら皿を重ねていく。
 サンジの怒りの原因は間違いなくゾロだったのだが、ゾロにはその自覚が無く、そのことでも更に怒りが込み上げてくる。

−− そりゃ…自分でも妙な拘りだったと思うケドよ…

 そう思うけれど、簡単に許してしまえる程にサンジは大人ではなかった。
 暫くして、腹立たしさと苛立ちは落ち着き、食器に当たっていた事に多少の居心地の悪さを感じ、洗い上がった皿を丁寧に布巾で拭き上げる。山になった食器を片づけようと足を踏み出した時、サンジの怒りの原因となった物を軽く蹴る形になってしまった。蹴られた其れはコロコロとキッチンの床を転がり、壁に当たって止まる。
 一つの酒瓶。
 手にした食器を一旦テーブルに戻すと、サンジはその酒瓶を拾い上げた。愛おしそうな手つきで瓶のラベルを一撫ですると、酒棚の一番上に無造作に置き、小さく溜め息を付いた。





 暫くの航海を終え、ゴーイングメリー号は小さな島に着いた。減ってしまった食料の補給と少しの休養を兼ねて、その島で1泊することになった。小さな島なので、宿屋の部屋数も少なく、数名づつ違う宿に泊まる事になり、ナミとロビンは当然二人で、後の残りはルフィとウソップとゾロ、サンジとチョッパーという部屋割り。チョッパーがどうしてもサンジと同じ部屋がいいと言い張るもので。
「くれぐれもっ、騒ぎは起こさないようにっっ!!特にそこのゴム船長!!分かってんでしょうねっ!あと、刀馬鹿。アンタもよっ。喧嘩はダメよ!あと…サンジくん」
「はいっ!何でしょうっ!ナミさんっ♪」
「ナンパ禁止」
「オレにはナミさんが居るっていうのに、ナンパなんて〜」
 目の前に突き立てられたナミの指を掴もうとして、ぱちんと手を叩かれる。ナミに、はいはい、と軽くあしらわれ、それぞれの宿に向かった。
「おし、チョッパー買いだしに行くか」
「おう。おれ荷物持つ」
 部屋に荷物を放ると、サンジはチョッパーを誘い買い物に行くことにした。明るく元気な返事をするチョッパーに、サンジはそのふかふかの身体を抱え上げ、よろしく頼む、とニッコリ笑った。





 サンジと離れ、ルフィとウソップの二人と一緒に宿に付いたゾロは、三本の刀を手に出かけてくる、と言い残し、また宿を出ていった。
 ゾロとしては、サンジの怒りの原因にまったく思い当たらず、頭を抱えていた事もあり、少し頭を冷やそうという事と、鍛冶屋に立ち寄る用があって、街をフラフラ歩く事にしたのだ。
 酒屋の前を通った時、ショーケースに見覚えのある酒瓶が目について、ゾロは立ち止まる。その金額を見て思わずガラスに手を突いた。

−− 何だ、この値段はっ…

 いつもサンジが買ってくる安酒とは桁違いの値段が付いているのを見て、ゾロは驚きでマジマジとそのゼロの数を数える。凶悪な顔の、腰に刀を三本も下げた男が、更に眉間に皺を寄せガラスにへばりついているのを見咎めた店主が、慌てて飛び出して来た。
「ちょっ…お客さんっ!困りますよっ」
「おいっオヤジ!」
「はっ!!はいっ!!」
 バッと振り返り、ゾロが店主の方に詰め寄ると、驚いた店主は硬直したように両手を上に上げて固まってしまった。
「この酒…なんでンな高ぇんだ?ドコでもこの値段なのか?」
「は?」
 質問を捲し立てるゾロに、店主は一瞬何を問われているのか分からず、ソロソロと指されている先へと視線を移す。
「あ、ああ…。それは……」





 一方、大きく変化したチョッパーに荷物を持たせ、まだ買うのか?という問いに、もう少しだけと、サンジは買い物を楽しんでいた。大食いの船長の為に食料は大量に必要だし、長い航海にならないとも限らない為、長持ちしそうな食材も購入しておく必要がある。
 後は酒だな、と思った時、今朝の喧嘩の事を思い出し、サンジは眉間に皺を寄せ、煙草を取り出した。
「サンジ、もう終わりか?」
 手一杯に荷物を抱えたチョッパーが、立ち止まり煙草を吸い出したサンジに問いかけた。これ以上は持てないと、言うチョッパーに酒は自分で抱えるとサンジは、笑ってみせた。
「酒だけだから、ちょっと買ってくる。そしたら船に一旦戻ってから、宿に戻ろうぜ」
「うん。おれ行かなくていいの?」
「ああ、ここで待ってろよ」
 いつもの姿に戻り、淀みない足取りで人混みをスルスルと抜けていくサンジを見送った。


 酒屋に到着したサンジは、樽酒を2個注文しその他の瓶酒を1ケース見繕っていた。どうせゾロの口に入る物だと、一番安い酒と発泡酒を適当にケースに詰め込んでいく。
 ふと視線を巡らせた先に、見覚えのあるラベルがあった。
 ムッとした気分のままその瓶を手に取ると、それは空き瓶で、どうやら飾ってあるだけのようだった。
「なぁ、オヤジ。この酒ねぇのか?」
「ああ、それはもう無いな。今し方売れちまったよ。すまんね」
「…そっか…」
 残念そうに瓶を元に戻すサンジに、店主は言葉を続けた。
「その酒は造られた本数が少なくてな。高いんだけど、本当にいい味しててな」
「ああ…知ってる」
 口角を上げニッと笑うと、サンジは棚に並ぶ酒を取りケースに入れると、精算してくれと頼んだ。
 樽二つと酒のケースを持ったサンジがチョッパーのトコロに戻って来た時には、夕暮れ時に差し掛かっていた。
「サンジ、重くないか?おれ樽一個持とうか?」
「オマエはもう持てねぇだろ」
 平気だ、と笑うサンジの後を、チョッパーが付いて歩き、ゴーイングメリー号に向かった。

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2002/9/23UP

あああ〜…長々と書いては止め、書いては止め、とかしてたら、前後編とかになってしまいました(汗)
うっ…今暫しお待ちくださいっ。トホホ
しかし…何か外してませんかねっ?!うわ〜ん(T_T)スミマセンっっ!!
*kei*