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「この1曲聴き比べ!!」 第1回
Jacque Ibert
"Concertino Da Camera"
pour Saxophone Alto et Onze instruments
J.イベール
「アルト・サクソフォンと11楽器のための室内小協奏曲」
サクソフォーンのための協奏曲は数あれど、J.Ibertのこの曲は、
古典的名曲の中で難曲中の難曲と言えるでしょう。
研究し尽くされたフレーズ&パッセージを演奏するための卓越したテクニック、
全く反対で表情豊かさを求められる優雅なメロディ…などなど。
もちろん曲の随所に生粋のパリっ子であるイベールらしさがふんだんに
盛り込まれており、至る所にユーモアさ、エスプリが感じられます。
曲の構成としては、
- はっきりとしたソナタ形式で書かれた躍動的なフレーズが印象的な第1楽章
- 次にアルトサックスのどことなく怪しい序奏から始まる美しい第2楽章
- attaccaで軽快なロンドの第3楽章
と続き、後半に短いCadenzaを経て華やかに終わります。
もともとこの曲はSigurd Rascherの委嘱によって作られています。
が、イベールは曲を作る際ソロ楽器について研究しすぎるほどの性格であったため、
どこかで聞いた話では、できあがった曲が難しすぎ、
委嘱者自ら初演演奏することを断念してMarcel Muleへ初演をお願いした…とか。
いずれにしても、テクニック面ではフレーズやパッセージの難しさのほかに、
標準音域の1オクターブ上までのフラジオ演奏
(フラジオ自体はadlibとなっており標準音域内での演奏も可能)があります。
また最近では、Cadenza部にSlapタンギングを使ったり…とソリストにとっては
かなりの難曲であると同時に個性をアピールする場もたくさんある名曲でしょう。
しかし、ソロ楽器以外の全パートも1パート1人(弦楽器も!)となっており、
演奏者全員がソロ楽器のように難しいことも忘れてはいけません。
このようなことから、「名演」と呼ばれるにはソリストはもちろん、
バックの演奏者もすばらしくなくてはならないかと思われます。
この曲が入っている所有CD
私の所有するCDの中で、オススメ順に並べてみました。
- Arno Bornkamp "A Saxophone in Paris"
個人的に、一番好きなアーティストだから…というのもありますが、
曲全体の流れがもっとも美しく、フレーズ解釈・演奏全てにおいて
録音されている中では一押しです。
- 須川展也 "Cyber Bird"
こちらも曲全体は美しいのですが、もう少し冒険してもよいかな、と思ったりします。
ソリストがぐいぐい引っ張っていく…というより、ついていっているような
演奏のように感じられるのが少し残念です。
- John Harle "Saxophone Concertos"
曲全体の流れが美しいのですが、時々語尾とかで気になるところがあります。
Cadenzaが他のCDとは異なるversionなので聞いてみる価値はあるでしょう。
- Marcel Mule "Marcel Mule"
- Marcel Mule "La legende"
- "Le Saxophone Francais"
全て同じ録音が収録されているようです。
ソリストの演奏としては僕個人の中ではA.Bornkampに続き2番目なのですが、
オケと今一つかみ合っていないところが多かったため、
少々オススメ度としては落ちてしまいます。
- Eugene Rousseau "Saxophone Concertos"
曲全体を通して速度の変化が多く、個人的には不必要なaccel. や rit.なように感じます。
さらに一番悔やまれるのが、オケがあまり上手くないことでしょうか。
このアルバムに入っているFantagiaは結構オススメなんですけど…
- Harvey Pittel "Moving Along"
オケ伴奏版が多い中、珍しくピアノ伴奏による演奏です。
「ピアノ伴奏でやるとどんな風になるんだろう?」と興味があったり、
「今度演奏してみたいので、実際ピアノ伴奏での雰囲気をつかみたい」とか
言う方には止めませんが、演奏自体あまりオススメできません。
全体的にモタモタしている上に、rit.のかけ方などが不自然なところが多いです。
上手い人はオケバックにできるほどの人になってしまう…のでしょうか?:-p
- Neal Ramsay "Sax 5th Ave."
こちらは弦楽のみの伴奏にアレンジされています。
ロングトーンで拍を数えているのを感じてしまうような
吹き方をしていたり、rit.の後でソリストが1人だけ先に飛び込んでしまっていたり…と
演奏全体がぎくしゃくしています。また、木管やTrp、Hrのパートを弦楽器に
移しているため、曲全体の色彩が減ってしまっているのもいまいちで
こちらもあまりオススメできないです。
- Lynn Klock "Aria"
こちらもピアノ伴奏版なのですが、
「ピアノ伴奏版を聴きたい」と言ってもこのアルバムはあまり薦められません。
ブレスの取る位置もあまりよくないですし、フレージング解釈もいまいち、
さらに1楽章の終わりと2楽章の頭はともに実音Cなのですが、2楽章頭の
Cの音程がやたら高くなっています。
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