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TANNOY同軸ユニット
マルチアンプ駆動化の
解説と注意点



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1.【TANNOY同軸ユニット:マルチアンプ駆動化の解説と注意点】

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1.【TANNOY同軸ユニット:マルチアンプ駆動化の解説と注意点】

★タンノイの同軸(デュアルコンセントリック)スピーカをマルチアンプ駆動化してみようと思っている方の必見内容です。

※私がタンノイをマルチアンプ駆動化した動機はタンノイのあの定位感と弦楽器の潤いのある音色を残しつつもJBLの歯切れのよさを加えた丁度タンノイとJBLの良いとこ取りの音色を出したかった(近づけたかった)からです。又、私の所有しているTANNOYの38cm同軸ユニットの欠点は、クロス(1kHz)近辺の音が若干凹み気味に聴こえる事です。TANNOYの純正ネットワークで巧に補正しているようですが、JBLの4343や4344と比べると、その帯域の音が、私には、なにか物足りない気がしてしょうがなかったのです。(タンノイとJBLの音色は互いに双璧にあると思っておりますが、私には2種類を所有する余裕は全くはありません・・・)

◎タンノイを既にお持ちの方は、たいていの方が多少なりとも思い抱いていいるのではないかと思います。タンノイのスピーカエンクロージャーはデザインと言い、仕上がりといい、質感と言いどれもこれも芸術的なスピーカーばかりです。一度、手に入れますと、鳴らさないで置いておくだけでも、高級家具の様で絵になり満足してしまいます。したがって音色に少々不満が出てきた場合でも、そう簡単には処分する気になれません。

◎TANNOYの音色に大変満足されていば気にならないと思いますが一度、気になりだすと、なんとかスピーカーは換えずに不満と思える部分を改善できないものかとスピーカー以外のアンプを入れ換えて見たり、ケーブルを換えてみたりしながら四苦八苦しされていつのではないかと思います。

◎TANNOYの音の良さは、曲自体に立ち上りが鋭く刺激的な強烈サウンドの音が入っていてもタンノイ独特な抑え方で聴き易く、且つ潤いを与えたように音楽性豊かな音色に仕上げてくれる事です。又、一番の良さは、同軸ユニットから来る演奏者や楽器の位置関係が見えるような定位感にあると思います。

◎タンノイを長年お使いの方でクラッシック専門と言う方はこの音色に満足される方は多いと思います。ただ、いろいろなジャンルを聴かれる方には、聴くジャンルによっては音質に不満が出てくると思います。その不満は量感はあるものの、音の立上り・立下りが遅くボケた感じがしてしまい物足りなくなるのではないでしょうか。又、製品としてのタンノイは時には、ドンシャリにも聴こえるかもしれません。

◎特に、JBL系の音と比べてしまうと、ドラムや太鼓等の乾燥した皮がピーンと張っているところを叩いた時の質感、金属系のシャープな音、唾がほとばしるサックスの音色など、JBLより劣っていると思われる部分があるように思います。逆に、JBLでタンノイの様な定位感のある、又潤いのある音色は、買ってきたままJBLを鳴らしたのでは決してJBLはタンノイには勝てません。JBLで潤いのある音質に仕上げるには並々ならぬ工夫と努力が必要です。

◎同軸ユニットの弱点と申しますか、音色に少々不満が出てきても、ある意味どうしようもないのが、まさにタンノイのスピーカーシステムなのです。この不満箇所をタンノイのスピーカ側だけで改善しようとしますと、せいぜいネットワークに使われている部品や内部配線の材質をよりオーディオグレードの高い物に交換するぐらいしかありません。ネットワークに手を加えるにしても回路を変えたり、間違ってもネットワークの定数値を変更してはいけません。(間違いなく前より悪くなると思います)

◎JBLの低音域楽器の歯切れ良い質感はウーファーユニットの基本仕様がタンノイと全く異なっているからです。JBLは強力なマグネットでコーンを制動し特定の帯域を強烈に放出する感じです。タンノイの38cmユニットはサイズの割には非力なマグネットで重たいコーン紙を低域から中域(約40Hz〜1.5kHzが可能)まで再生させ,それ以上をホーンツイーターが受持つ2Wayです。ウーハー自体ワイドレンジな使い方になっています。

◎タンノイの同軸ユニットには、10インチ、12インチ、15インチの3種類がございます。どのユニットも純正ネットワークが付属していますが、どのサイズのユニットもこのネットワークをなくしてタンノイの音色は語れません。と申しますのは、タンノイの音色はユニットの特性(裸特性)が単体では強烈な癖を持っています。特に同軸に組み込まれたツイーターは曲者です。これらの癖を充分に制御しているのが純正ネットワークなのです。

◎ネットワークと一言で申し上げましたが、ただのネットワークではありません。タンノイのンネットワークは天才的ともいえる巧みな技術陣により独特な回路を用いタンノイのユニット特性に合わせたイコライジングしているネットワークなのです。このネットワークのお陰であの素晴らしい音楽性豊かな、なんとも言えない艶の有る弦の音をかもし出しているのです。

★代表的な15インチのK3808タンノイのネットワークを通さない裸特性につきまして少々解説いたします。

◎この同軸ユニットのウーファー部は普通のウーフハーーユニットの特性を示します。むしろ、38cmなのにワイドな特性で優秀です。100Hz以下は自然なダラ下がりで音圧レベルのピークは150Hzあたりにあり、そこの音圧は約95db/wです。上側(高域方向)を見ますと、エッジの反射で600Hz近辺に急激な落ち込みがありますが、音としては判らない範囲だと思います。さらにその上側の周波数特性は1500Hz位から分割振動をしながら2000Hz(約91db/w)近くまで伸びています。本来、このウーファー部の特性を見る限り理想的な繋がりを得ようとするならば500Hz〜800Hzぐらいからスコーカーに受け継がせて、ツイータを加えた3Wayで鳴らした方が良さそうな特性です。

◎次にツィーター部の裸特性を見ますと、音圧レベルは最大で約105db/w、ハイエンド方向の16000Hz近辺で約96db/wです。(HPD385ユニットと周波数特性はウーファーもツィーターも大変酷似してます。K3808ユニットの方が能率として約1.5db/w程度高いだけです) 

◎ツィーターはウーファーのコーンカーブをホーンの一部として利用され、ホーンのフレアー延長の役目をしてフルサイズホーンに近似しております。トータルのホーン曲線は、ハイパボリックに近いカーブになっています。計算しますと、おおよそ500HzのカットOFFのホーンになります。又、本来の金属部分のホーン開口部は、直径が約50mmですので、カットOFFは約2000Hzになりウーハーーのコーン部をホーンの一部として利用しておりますがカットOFF500Hz程度なので低い周波数は充分なホーンロードが掛かり難いと思われます。つまり、あまり低い周波数では利用できないと推測できます。

◎ツィーターの周波数特性からウーファーのコーンカーブの役割はおそらく2000Hz以下で、2000Hz以下〜800Hz程度までダラ下がりの特性です。2000Hz以上が本来のツィーター部のホーンによる特性かと思います。これらの技術的考察を踏まえながら、ツィータの特性について分析してみたいと思います。

◎ツィーター本来のホーン部分で充分なロードがかっている為か、1500Hz〜4500Hzの間が急激に盛り上がり、2000Hz〜3000Hzでは105db/wに達します。その後18000Hzまでダラ下がりで音圧は92db/wまで落ちてきます。このことは、カタログや仕様に掲載されているクロス周波数を鵜呑みにして、そのままのクロス周波数で上下に分割してマルチアンプ駆動をしてはいけない・・・と、言うことなのです。

◎そのまま、1000Hzから1200Hz前後でウーファーとツィーターに分割し、マルチアンプ駆動化しても中高域(2000Hz〜5000Hz)が出過ぎてマトモナ音が出てきません。マルチなのでチャンデバ等で出力レベルを下げられますが、ツィーター領域全体が下がり、クロス近辺の重要な帯域と倍音を司る高域のレベルが下がってしまい、これまた低域のもモコモコ指向域は妙に大人しい変な音になります。そのままのクロスで2Wayで再生しますと、レベル調整だけでは、どちらもバランスが崩れた音色です。具体的に音色を表現しますと、バイオリンの音色が鼻詰まりの様な”屁のおらび”に聴こえ、管楽器の高い音だけがいきなり耳のそばで演奏しているように聴こえてきます。

◎ツィーターの周波数帯域で約2000Hz〜5000Hzの突出して高い音圧特性を純正ネットワークはイコライジングして抑え込みあの滑らかな、しかし、ややドンシャリともとれるるタンノイの独特な周波数特性カーブを作っています。原則、「タンノイはネットワーク無くして音色を語れない」と言っている意味が、お判り頂けたと思います。

★では、どうすればノーマルのネットワーク付タンノイより良い音質(不満を解消する音質)のマルチアンプ駆動に出来るか、今までに、試行錯誤した経験を元に記してみます。

◎間単に書きますと、イコライザーアンプ(グラフィックイコラーザー等)を導入する(ツィーターの突出した領域をイコライジングします)。又は、純正のネットワークのイコライジングされた高域のみを利用し、バイアンプ方式で鳴らす。かと言って、イコライザーやネットワークの一部を用いた使い方したのでは、あまり意味がありません。なぜならそのまま純正ネットワークを使っていた方が音質的に音が良いからです。(まさに純正ネットワーク・・・恐るべし!)

◎ネットワークを使わなず、又余分にグラフィツクイコライザーも用いずにマルチアンプ駆動化するには、ツィータの受け持ち領域の約1500Hz〜5000Hz帯域を使わない(再生させない)ようにする事です。具体的には、この帯域はタンノイのツィーター部ではなく、別のユニットで中高域を持たせると言う事です。又、周波数分割にはチャンネルデバイダー(周波数分割専用アンプ)をプリアンプとパワーアンプ部の間に接続してパワーアンプに入れ、パワーアンプに入力される手前で信号を周波数分割処理を行います。(ステレオ3Way以上/減衰率設定は-12db/oct以上の機能を持った機器がポイントです)

◎別のスピーカーユニットを使うと申しましたが、JBL4343の様に中低域にミッドバスを使い、1500Hz〜5000Hzを別のユニットで鳴らしますと、実際に実験してみましたが、もうタンノイらしい音は出なくなってしまいました。全く異なる別のスピーカになってしまいます。タンノイらしい音色を残しつつより高みの音を追求したい場合には、向きません。(これはこれで、好みの音質で有ればかまいませんが、私の目的とする音質とは異なっています)

◎ウーファーの特性は一般的なウーファー(コーンが重くて硬いタイプ)と差ほど変わらないので特に気を使う必要はなくクロスを1000Hz前後で-12db/oct以上の減衰率でカットしたローパスで特に大きな影響は出ません。強いて上げるとすれば、約800Hz程度まで下げて使う方が締まった低音になります。(理想は、約650〜700Hzです)

◎あまり低い周波数(500Hz以下)での使い方は、高域との繋ぎが難しくJBL4343の様にミッドバスを用いる必要が出てきます。ホーンで繋ぐとすると、割と低い周波数まで出せる2インチ以上のドライバーとカットOFF200Hz前後の大型のホーンを導入する必要が出てきます。

◎ミッドバスの追加はタンノイのエンクロージャー加工を伴い芸術的な作りのタンノイエンクロージャーに傷を付ける事になります。タンノイは箱も鳴らすと言われているので本来のタンノイの音から外れてしまいそうで心配です。経済的にも大型ドライバーは急激に価格が上昇しますので多額の出費を強いられます。又、投資金額の割には目的の音色が出せるとは限りません。それより、好みの音質のスピーカーに買い換えた方が安上がりでその方が早い気がします。

やはりポイントはツィーターの上記裸特性の解説にあります通り「約2000Hz〜5000Hz」の帯域は使いたくありません。しかし、実際に実験した結果、これまたタンノイの同軸ツィーター部を完全に使わない様にしますと不思議と、あのタンノイ独特の潤い感や定位感がなくなってタンノイらしさがなくなってしまします。高域に少しでも導入する事により潤い感や定位感が戻ってきます。

◎したがいまして、タンノイのツィーターを生かした活用方法がポイントになります。ツィーターの癖のある帯域が全体の音色に悪さをせず、且つ潤い感や定位感を保つ為にタンノイのツィ-ター使用帯域を約7000Hz以上(7000Hz〜9000Hz位の間でハイパス)で且つ、-12db/oct以上の減衰率を用いてこの周波数から上の帯域に追いやると良いようです。チャンネルデバイダーは急激な減衰カーブ(-18db/octできれば-24db/oct以上)を設定できるタイプが理想で、-18dboct以上であれば6000Hzぐらいから使っても大きく影響を与えないと思います。

◎デジタル式のチャンネルデバイダーは急激な減衰率が設定できる物が多い様です。代表的なアキュファーズのかなり高額のハイエンド向けチャンネルデバイダーや手ごろな価格のべリンガーやdbx(Pro用機器)等があります。Pro用機器のチャンネルデバイダーはメチャクチャ価格が安く、導入されている方も多く見受けられ、それなりに好評価も得ている様です。 

◎タンノイのツィーターの突出した癖のある約2000Hz〜5000Hz帯域を使わずに、その帯域を補うには。中高音帯域の裸特性の良いスコーカーを用います。タンノイのツィーターで再生させる帯域は再生音が下の帯域に悪さをしないようにクロス周波数をやや高目の高域に追いやります。具体的には先に述べましたとおり、7000Hz〜9000Hzの間に追いやり、追加するスコーカーの再生帯域としては約1000Hz〜7000Hz(又は800Hz〜9000Hz)迄の帯域を再生させます。(どの様なスコーカーを用いるか、ここも重要なポイントになります)

◎芸術的なあの美しいタンノイのエンクロージャーを傷つけることなく行うには、エンクロージャーの上に設置するしかありません。しかもタンノイのツィーター部と音質が似ているユニット(ホーンドライバー式がベスト)が必要です。音質が異なり過ぎると音の繋がりに違和感が出てきます。スコーカー用のドライバーには1インチスロートクラスのドラーバーで、中域〜高域までカバーできるドライバーユニットを用いました。(ドライバーは新品でもリーズナブルな価格の物〜高額な物まであります。国産は種類が少ないのですが海外製を含めれば沢山有ります。(中古でも数多く見受けられます)

ホーンはオールウッドホーンタイプが好ましく、タンノイの音色に大変マッチし易いです。金属ホーンやプラスチックホーンはホーン自体の音色に癖が多く、潤いに欠ける傾向が多々ありタンノイとは音質的に合いません。又、ホーン自体のチューニングに大変な労力を費やす事になりかねません。

★上記の解説を踏まえ、参考例として私のタンノイに行った具体的な変更後の構成を記してみます。

<元になる条件>
 ・タンノイの15インチ(38cm)同軸ユニットを用いてマルチアンプ駆動方式に変更する。
 ・タンノイの純正ネットワークは使わない。

<追加で必要なユニット及び装置>
 ・3Way/-12dboct以上タイプ/ステレオチャンネルデバイダー:1台
 ・ステレオパワーアンプ:3台(元々ノーマルで鳴らしていた時のアンプも含む)
 ・1インチドライバーユニット:2個
 ・1インチ用ウッドホーン:2本(約400Hzから500Hzで充分にロードが掛る物)

<実際のセッティング参考例>
 ・タンノイのウーファーは、800Hz(-12dboct以上)以下を再生します。
 ・スコーカーは1インチドライバーとウッドホーンで800Hz(-12dboct以上)〜7000Hz(-12dboct以上)をで再生します。
 ・タンノイのツィーターは7000Hz(-18dboct以上)以上を再生します。

<調整が必要な項目と箇所>
 ・各ユニットの音圧レベルを合わせます。
  (基準音圧は最も低いユニットのウーファーにレベルを合わせます))
 ・追加ユニットの位置合わせ(物理的位相)をします。
  (スコーカーの置く位置を簡易位相合わせ方はBOXのバッフル板を基準にホーンの位置を合わせます)
   ※ホーン先端の開口面積の約80%面積になる位置(仮想音源)がバッフル板と同じ位置になる様にします。
 ・各ユニットの電気的位相合わせ(論理的位相)をします。
  (各ユニットに接続するケーブルの極性反転を行います)
   ※ウーファー(正相接続)を基準にしスコーカー・ツィーターでは正相か逆相接か、が良い方を耳で確認します。

<その他>
 ・実際には耳で聴いて確認しながら調整します。
 ・減衰率を換えますと位相特性も変化します。
  (正相接続がよいか逆相接続が良いか等は理論通りにはいきません)
   ※原則、ハイ側・ロー側共に-12dboct:クロス周波数で約180度・-18dboctの場合約270度の位相がズレます。

タンノイが素晴らしいスピーカーに蘇えるはずです。・・・タンノイのマルチアンプ化に是非チャレンジしてみて下さい。



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