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スピーカーの解説と
一般的なスピーカーの音質改善



※読んでみたいと思う項目をクリックして飛ばし読みして下さい。


0.【Audioにおける再生について】

1.【一般的なスピーカー(ユニッ含む)について】

2.【一般的なスピーカーの音質改善について】

3.【スピーカー&ユニットの基本特性について】

4.【マルチスピーカーの特質について】



1.【一般的なスピーカー(ユニット含む)について】

◎スピーカーを個々のブロックに分けて、名称を簡単に解説します。スピーカーの中で音として直接出してくる部分を単体ではスピーカーユニットと言い略してユニットと言う場合もあります。スピーカーの箱(BOX)をエンクロージャーと言いユニットを取付ける箱の板をバッフル板と言います。スピーカーケーブルを接続する箇所(端子)をターミナルと言います。マルチスピーカー等で低音・中音・高音のユニット等に適した音楽信号を周波数帯域に分割する回路をデバイディングネットワークと言い略してネットワークと言います。通常ネットワーク回路はエンクロージャーの中に設けています。

◎エンクロージャーの形式は大きく分けて3系とあります。完全密閉し空気漏れのないエアーサスペンション方式や低音増強用に共振ダクトを設けたバスレフ式(ダブルバスレフ含む)又、ユニットにメガホンのようなホーンを付けるホーン式(バックロード方式/フロントロード方式)があります。

◎メーカー製スピーカーは、市場に出すまで使用するユニット(目的にあわせて専用に設計製造したユニットも有る)に合わせ、何通りも設計されたエンクロージャーを複数台用意し使用するユニットの特性を最大限引き出せるように実測と試聴を行い、ユニットに対しベストなエンクロージャーを決定し同時にネットワークもいろいろ実験してから出てきます。(音質的に同じか大差が無い場合、徹底的にコストを抑えます))

◎スピーカーを自作される場合は、どのユニットにするか、ユニットの選択がもっとも重要になります。使用するユニットが決まったらそのユニットの得意とする部分を最大限活す必要があります。又、ユニット自体に特有の癖が有る場合はその癖をを相殺するようなエンクロージャーの設計が必要になります。どんなエンクロージャーを作っても仕上げるまでにはチューニングは必要ですが、良し悪しは別にして、論理的に理にかなった設計であれば、形や大きさ・方式に関わらず比較的まともな音が出てきます。個性を重視する場合は癖も重要なポイントですが基本を無視して極端に逸脱した設計のスピーカーは得てしてまともな音は出てこないと思います。

◎ずいぶん前になりますが、オーディオブームが去った頃から、既製品としてのバックロードホーンスピーカーは全く見かけなくなりました。Kitでは見かけますが、エンクロージャーの複雑さと製造コストと出てくる音質の差からメーカーとして敬遠されたのかもしれません。又、密閉式も音質が時代に合わず一部のメーカーを除き殆ど姿を消しました。今では、唯一、バスレフ式が生き残っているぐらいです。自作において利益を伴う必要がなく自由な発想と好みの音質追求に没頭すれば良いので方式は基本的に何でも有りだと思っています。自分自身が満足できる事が重要だと考えます。

◎一般的なユニットについて簡単に説明します。ユニットの全体の骨格を形成する枠をフレームと言い、すり鉢状の空気を振動させる面積の大きな振動板をコーン(円錐形)と言います。コーンをフレームの端で支える外周部のゴムやラバーのような部分をエッジと言います。電気信号が流れる銅線のコイル状の部分をボイスコイルと言います。又それ以外に、コーンのふらつきを制御しコーンの根元にある繊維製のジャバラ状の物をダンパーと言います。コイルの周りには永久磁石(フェライト・アルニコ・ネオジュウム等)のマグネットと磁束をコイルに送るヨーク(プレート)がありコイルに磁界を形成します。・・・これらの材質や形状によりユニット固有の音色や特性が決まってきます。

◎ユニットには振動板にコーンを使ったコーン式があり、一般的には特殊な紙が用いられており化学繊維(布)・ポリエステルやプラスチック等の高分子系とアルミやチタン・ボロンを使った金属系もあります。又、各材質をミックスしたハイブリッドコーンも存在します。振動板の形状がドーム形)をドームスピーカー、振動方式がコンデンサーの原理で動作する平面波打ち形振動板のコンデンサースピーカーや振動板自体はドーム形状の金蔵系振動板ですが、音の出口にトランペットのマウスピースのように短く小さなダクトを設けその先びホーンを取付けるように設計されたホーン専用のユニット等があり、これをドライバーと言っています。

◎コーン部分の材質は理想の振動板を求めて材質以外に形状や方式を駆使して様々な物があります。三菱ではコーン部が蜂の巣状(六角形構造の集合体)のハニカムコーンが有名です、又、B&Wのケプラー繊維で作られたケプラーコーンも有名です。今や、幻のユニットですが大昔にSONYや日立(Lo-Di)からコーンに発泡スチロールを充填した平面振動板の平面スピーカーユニットがありました。松下(テクにクス)は振動マグネットを5個使い四角い平面振動板でカニの甲羅成分であるキチン?質を使ったユニットも出していました。・・・残念ながら今は無く現物も音も聴いた事はありません。(相当、製造コストを要したと思います)

◎ホーン専用のドライバーは振動板が小さいく空気を振動しきれず空気に負荷(”ロード”がかかると言います)をかけられないため、ホーンなしではまともな音は出ません。必ず再生周波数に応じたホーンを取付け空気負荷を掛けて空気を振動させる必要があります。又、ドライバーの開口サイズで1インチドライバー・1.5インチドライバーとか2インチドライバー等と言います

◎低音用・中音用・高音用とそれぞれ専用のユニットを使ったスピーカー(2個以上を使う)をマルチスピーカーと言い、1発のユニットのみのスピーカーをシングルスピーカー又は、フルレンジスピーカーといいます。フルレンジスピーカーの種類で同じユニットを複数個使い耐入力と音圧を上げる目的でシングルと同じ鳴らし方をさせるものもあります。この場合、音波を空中へ放射する時にユニットの音波が相互干渉し高域が減衰しやすくなりますのでツィーターが必要になります。

◎フルレンジユニットは低域〜高域まで再生する必要があり、コーンの構造や材質に工夫を凝らしています。メーカー製のシングルスピーカーは小型でも種類も少なく殆どは小型でありながら2WAY構成です。シングルスピーカーの中には、ユニットの特性(癖とも言います)に合わせてイコライジングし特性をフラットにする為、ユニットとターミナルの間にコンデンサー・コイル・抵抗の入ったイコライザー回路(ネットワーク回路と異なり周波数分割はしない)ものを介在させているスピーカーシステムもあります。
(BOSEの121が該当します)

◎1台のユニットで低音〜高音を再生するために高音部のユニットを低音用ユニットの中に組み込んで見た目はシングルスピーカーに見えますが、2WAYになっている複合スピーカーユニットもあります。有名なところでは、ALTECやTANNOYの同軸スピーカー(デュアルコンセントリック)です。見た目は1個のユニットですが、中央部にツィータが内蔵され2Wayになっています。当然、周波数分割用のネットワークが必要で、専用ネットワークが付属しています。



2.【一般的なスピーカーの音質改善について】

◎音質改善で一番簡単にできる方法は既にご存知の通りケーブル類の変更(グレードアップ)です。各装置間やスピーカー間は信号ケーブルが必ず介在しています。通常、付属品が有る場合はそのまま使う事が多いと思います。見るからに細くてビニール被服の安物っぽい物ならばグレードの高いケーブルに交換するだけで効果を感じる事ができます。しかしそこそこ高品質な物が使われている場合はよりグレードの高いケーブルに交換しても、たいした変化を望めない場合が多々あります。

◎メーカー付属の物は信号が通る芯線が細い物が多く見うけられます。これを芯線が太目の物に交換するだけで変わります。スピーカーケーブルは、電源ケーブルに代用できるぐらいの芯線の太さで電気抵抗が少ない物がよいです。経験上低域にパワー感が増して良い方向になります。参考にスピーカーケーブルに流れる電流(アンペア)は、インピーダンス8Ωスピーカーの場合、単純計算で”8W”出力で理論上「1A」(1アンペア)は、電流が流れます。(6Ωスピーカーだと6Wで「1A」流れます)

★電気信号の世界では「1A」の電流は大電流で、通常は数十〜数百mA(ミリアンペア)です。たとえば、8Ωのスピーカに1W(1ワット)の出力をさせた場合、スピーカーには、約354mAの電流(信号電流)が流れます。(W=I×I×R:ワット=電流×電流×抵抗)

◎マルチスピーカーでは各ユニット毎にネットワークが介在しこのネットワークの質によっては大きく音質に影響を与えます。良し悪しは別として、特にコイルとコンデンサーの構造(電解・フィルムタイプ)や質(・誤差・低抵抗タイプ)かリード線の材質(鉄か銅)が音質に影響を与えます。ケーブル以外のグレードアップの箇所として、このネットワークに使われている部品(コイル・コンデンサー・抵抗)をオーディオグレードに変更するのも効果があります。一般的な普及品〜やや中級クラスのメーカー製スピーカーのネットワーク回路は充分吟味された値でありますが、使う部品の貧弱(コスト削減)な事ったらありません。ですから、回路定数値は変更せずに部品のみのグレードアップ(例:電解コン→フィルムコン等/芯(コア)入りコイル→空芯コイル等/セメント抵抗→無誘導抵抗等)を行います。

◎マルチスピーカーを鳴らす方式には、低音域ユニット(ウーファー)と中高音域以上(スコーカーやツィーター)のユニットを別々に2台のアンプで鳴らすバイアンプ接続があります。スピーカーが最初からバイアンプ接続を可能にしてある物や、ネットワークをパスして全てのユニットを別々のアンプで鳴らせるようになってあるスピーカーもあります。ネットワークが外付け内蔵型でも介在させたり、スルーパスできるスピーカーは割と高価な超高級タイプに多くみられます。JBL4343や4344等では低音用のウーハーだけは別アンプで鳴らすバイアンプ接続を推奨してします。

◎音質改善方法で簡単なスピーカーケーブルやネットワークの部品変更について書きましたが、よほど程度の低いケーブルや部品を使っていない限りそんなに大きな変化は望めませんが、音色に関してはネットワークのコイルやコンデンサーの変更は、部分的変更の中では最も変化大きな箇所であります。コンデンサーは先にも記しましたが構造や材質により電気的特性が同じでも固有の音色を持っていますので変更する事は好みの音作りには好都合です。但しこれも変更したからと言って良くなるとは限りません。良くなる場合も有れば、悪くなる場合も有ると思います。又、全然変化を感じない場合もあります。

◎友人や他人のオーディオシステムを聴かせて頂く機会も多いかと思います。いろんな方の音を自分の耳で聴き確かめることは大変勉強になります。良いも悪いもお手本にもなります。しかし、参考にする時はそこになんらかの手が加えられている場合、改善前と改善後の音質の差を知る必要があり、「何をどうやったらこの様な音質なった」がとても重要になります。又、その改善が理論的に納得いくものかどうか、理にかなっているかどうかを自分なりに内容を吟味する必要があります。その上で自分のスピーカーシステムに取り入れるかどうか、決める必要があります。

◎他のオーディオシステムで効果があっても自分のオーディオシステムで効果があるとは限りません。装置やケーブル・部屋等の環境等が異なれば出てくる音も当然違ってきます。自分のシステムを改善したつもりが、場合によっては悪くなる場合もあります。いただけないのは、人に言われるまま訳も分らず変更し、単に変化しただけの音を良くなったと思い込む事です。改善後、「チョッと違う・チョッとヘン」・・・と感じたら元に戻す勇気も必要です。一番陥り易いのは、お金をこれだけ掛けたのだから悪くなるはずは無いと思い込んでしまう事です。音質が変わる事と、良くなる事(自分の求めている音)とは全く別の問題だと言う事です。

◎余談ですが、オーディオ専門誌や雑誌にかなり高級なスピーカーケーブルの宣伝が多々見受けられます。超がつく程の高級なスピカーケーブルへの変更は充分に検討して下さい。これだけお金を掛けたのだから良くなってあたりまえ・・・と思いたくなるのが人情ですが、私の経験では音質が変化する事自体は認めますが意外と思ったより変わらないか、金額の割には大して良くなっていない(費用対効果)・・・と、感じた事の方が多かったです。(数十万円/mのケーブルは試しておりません)

◎又、余談ですが、かなり昔になりますが当時、私の価値観としては、超高級の部類に入る約¥12,000/mのスピーカーケーブルに憧れ、さぞかし良い音がするだろうと思い・・・ついに大金をはたいて導入してしまった経験があります。結論から先に申すと、お金をドブに捨ててしまった気がしました。と申しますのは、以前に使用していた自作スピーカーケーブル(ホームセンターで¥45/m程度の安い平行2芯ケーブルを直流抵抗を低くする為、6本(線の本数:計12本)使い、容量分を低くする為、4本×3束を三つ網で編んだだけのケーブルを同一の長さの物をモニターSPと聴き比べしたことがあります。残念ながらブラインドテストでは、どっちがどっちなのか私を含め試聴に立ち会ってくれた誰もが判らなかった経験があります。その時はもの凄くショックでした・・・が、「ヒョットして自作ケーブルが優秀なのかも?」と、ウヒャッ!と、ガーン!が同時に来た記憶があります。

◎音質が良くなるかどうかは、別にして理論的にかなった変更は不思議と、どのシステムに導入しても理にかなった変化をしてくれます。ここでは、あくまでも「変化する」でして良いと感じるかどうかは別です。ケーブル選びのポイントは、直流抵抗(線の材質や太さからくる影響)や浮遊容量が小さい・ノイズに強い等、構造や被服の材質による影響を最小限にし電気特性をしっかり抑えた基本設計のしっかりしたケーブルであればまず悪くなる事はないと思っています。手の込んだ構造や、特殊な材質の物は価格だけ跳ね上がりますが電気特性は規格内の普通のケーブルと大して変わりません。

◎私がスピーカーケーブルを選ぶ時の基準は、1)直流抵抗が低い、2)浮遊容量(キャパシター)が小さい、3)被服等の絶縁抵抗が高く耐圧が高い材質(テフロン系)、4)若干見た目もやや考慮します。・・・この4つです。物価の影響もありますが、具体的に購入する価格帯の目安は、700〜3000円/m範囲内です。価格に幅があるのは物価と線径の太さや被服の材質及び作られ方の違いで変化します。実際、この範囲内の価格でこと足りるからです。低域用は芯線が撚り線で太目のもの(単線は取り廻しが悪い)を、高域用はやや細目のもの等です。(太さも程度問題で、一定以上太くしても効果は少なく、太過ぎると撚り線でも取り廻しが悪くなりますし、パワーアンプなどの端子が破損する場合もあります)

◎私の個人的な意見ですが、見るからに手の込んだ高級な作りの云万円/m・云十万円/mもする超高級ケーブルの価格は異常だと感じています。既に超度級のオールホーンスピーカーで且つオールマルチアンプ駆動等を実践しこれ以上変更するところがないと思えるほどのオーディオシステムで「ダメもと」的余裕の有る方ならば超高級ケーブルに交換する意義はあるかもしてません。一般のオーディオでも購入したいという方の気持ちを否定つもりはありませんが、その分の費用でホーンスピーカーを導入するとか、あるいはアンプを複数台用いるバイアンプ方式やマルチアンプ駆動方式に注ぎ込んだ方が金額に対する費用対効果は絶大だと思うのです。一般的なオーデイオシステムでは云万円・云十万円もするケーブルに取り換えても果たして効果がどれほどあるかどうか、心理的効果の方が強いように思います。

◎参考に、私の大型スピカーシステム(4WAYマルチアンプ駆動)は全てベルデン製(音も自然で価格も安かった為)で、高域用は800円/mを中域用・低域用1600/mを使っています。又、中型スピーカーシステム(3WAYマルチアンプ駆動)は自作三つ網ケーブルを使っています。いろいろなタイプのケーブルを実験しましたが、大差は無く今のところ、上記のケーブルで充分私好みに鳴ってくれています。

★今は、別項記載の格安なのに高音質(私好み)ケーブル「カテゴリー5/単線タイプもLANケーブル」に全て換えました。
(約¥50/m前後の価格でできました)



3.【スピーカー&ユニットの基本特性について】

◎スピーカー全体の音質を決めるのはユニット・エンクロージャー・ネットワークのトータルバランスで決まります。スピーカーの仕様項目には周波数特性(△0Hz〜□0000Hz)・インピーダンス(△Ω)・能率(△□db/w)・耐入力(連続40w)等があります。これがユニットになりますと、ユニットの有効振動板の面積S(面積のcu)又は口径(直径Φ)・振動板の質量m0(重さg)・最低共振周波数f0(Hz)・共振の鋭さQ0・最低インピーダンス(Ω)・出力音圧レベルSPL(db/w)と推奨使用帯域(f0〜△△Hz)又、再生周波数特性グラフと周波数対インピーダンス特性グラフ等があります。推奨使用帯域や推奨クロス周波数/推奨減衰率はメーカーがユニットの特性を保証する為の使い方になりす。

◎スピーカーを自作する場合、ユニットは市販品から選び、そのユニットに合わせてエンクロージャーやネットワークをオリジナルティーを加えて自作(設計・製作)する事になりると思います。このエンクロージャーやネットワークを設計する時に必要になるのがユニットの仕様に記載されている項目になります。ユニットは大小沢山あり聴き方や聴くジャンルに合わせて選択します。

◎小さい口径(10cmΦ以下)のスピーカーユニットは中高域は得意ですが低域は不得意です。又、大きい口径(25cmΦ以上)のスピーカーユニットは、その逆になります。これは、大きな団扇と小さな団扇ではゆっくり動かした時の風の量の違いでお判りになると思います。その為、口径が大きくなるにつれて低域に余裕がでてきます。中口径の12cm〜20cmの範囲のユニットは適度に高域も低域もバランスよく出るものが多くあります。このサイズにはコーンを硬く重くし、低域がより出易くした低域(ウーファー)に適したユニットも多くありありますのでフルレンジを使いたい時は間違わない様にして下さい。

◎音声領域はどのユニットでもそこそこ再生しますが、ユニットの個性は低域〜高域の間でどの帯域が強調されて出てくるかで、そ音色傾向が判断できます。中間の12cmΦ〜20cmΦぐらいの口径サイズは、音声領域に加え低域も高域もわりとバランスよく出ます。これらのユニット自体を更に工夫してより低域〜高域までカバーできる用に設計されたユニットをフルレンジユニットと称しています。この工夫の仕方により、大なり小なりの固有の癖(音色として出る)があります。基本原理は同じですので小さい口径は、高域よりの音がよくでますし、大きい口径は低域よりの音がよく出ます。

◎小口径ユニットを使った小型スピーカー(シングル・マルチ方式含む)はエンクロージャーや回路(イコライジング等)で工夫し40Hz〜20kHz迄をなんとか再生できるようにしてあります。再生帯域を稼ぐ為、音の能率(音圧/1W)をかなり押さえ込まれる為、音量を上げるにはハイパワーアンプが必要になります。耐入力の低いユニットや出力が小さいパワーアンプでは大きい音を出したくても歪んでしまい出せなくなります。

◎口径が大きくなると(25cm以上)高域方向の再生能力が極端に悪くなります。まして、口径が30cm以上になると原理的にどう頑張っても4kHzぐらいが限界でそれ以上はまともな音は出ません。・・・無理して高域まで出すと、ひどく歪み、HiFiになりません。

◎ユニットのインピーダンスには「16Ω・8Ω・6Ω・4Ω」等があります。ユニットの最小抵抗値を現している数値で周波数により変化します。ユニットに付属している周波数対インピーダンスの特性グラフを見るとインピーダンスは周波数が高くなると抵抗値が上昇し、低い周波数でも上昇します。高い周波数方向では、電気的要因で上昇し、低い周波数方向では物理的要因で上昇します。スピーカー全体ではエンクロージャーやネットワークを含めたインピーダンス特性表示になります。



4.【マルチスピーカーの特質について】

◎自作で一番簡単なのはフルレンジユニット1発を使うスピーカーの製作です。ユニットも8cm〜20cmとサイズの選択が可能ですが、シングルスピーカ(フルレンジ1発)はユニットの特性がそのまま音質となって出てきます。ただ、ユニット1発で全域をカバーさせる為、音質を極めようとすると意外と早く限界が来て好みの音質に到達できません。

◎自作される場合、ユニットの選択が一番重要です。次にそのユニットの能力をを100%活かせるかどうかにかかってきます。、エンクロージャーの材質、構造、方式、出来具合(塗装を含む)、調整、吸音処理やダクトがある場合はダクトチューニングを含めエンクロージャーの仕上がりしだいでスピーカーの性能が決まりす。

◎マルチスピーカーの場合、シングルスピーカー(フルレンジ1発)に比べてユニットの数が増える為、エンクロージャーの設計及び製作自体が大変になります。たとえば、3WAYのマルチスピーカーを作ろうとした場合、低音用・中音用・高音用と3種類のユニットを準備しなければなりません。又、エンクロジャーの設計段階で、低音を出すのに何リットルの容積が必要か、中音用には低域の音と干渉しない様に、エンクロージャー内の空間を分離し何リットルかのBOXを作らなければなりません。高音用もコーン型の場合には同様に何リットルかの空間を分離させた小BOXが必要です。又、ユニットの数だけネットワーク回路が増え複雑になります。

◎マルチスピーカーと言えども、材質、構造、方式、出来具合(塗装を含む)、調整、吸音処理やダクトがある場合はダクトチューニングを含めエンクロージャーの仕上がりしだいでスピーカーの性能が決まりす。ただしスピーカー完成後、好みの音質に仕上げるのはシングルほど限界は浅くなく、逆に奥も深いので、チューニングのし甲斐があります。それは、各ユニットの得意とする周波数領域をどう使うか等、調整箇所が沢山あるからです。マルチではネットワークの設計も重要でネットワークの出来・不出来でかなり音質が変ってしまいます。

◎ボイスコイルを使ったユニットは必ず周波数が上がるとインピーダンスが上昇する電気的現象が起きます。インピーダンス上昇は音圧を下げる要因でもあり周波数特性を悪化させます。又、インピーダンスが変化しますとクロスさせる周波数も変化してしまう事に注意しなければなりません。市販品のスピーカーで良心的に設計されたスピーカは個々のユニット毎にインピーダンスが変化しない様(インピーダンスを一定に保つ)インピーダンス補正回路がネットワークに付加されています。

◎マルチスピーカーではメーカー製・自作を問わず各ユニットのネットワークは、そのユニット単体の公称インピーダンス「RΩ」を元に再生させたい周波数帯域からクロス周波数「fc」と減衰率「-△db/oct」を計算しコイル(mH)やコンデンサ(μF)の定数(値)を決めます。能率の違いを合わせる為には、アッテネーター(抵抗式・トランス式がある/ATTとも書きます)を用いて能率の高いユニットを減衰させ能率の低いユニットに合わせなければなりません。最終的には必ず耳で聴いて確認し納得できる鳴り方をする値に調整します。

◎ユニットを複数使うマルチスピーカーは能率を合わせる必要がありますが、さらにユニット間の音の位相(単位は位相角で表すの角度:度/又は各ユニット間の音を発するボイスコイル間の距離で表すcmやmmがあります)ズレと言う厄介な問題が出てきます。位相ズレの要因には大きく分けて周波数分割による電気的要因からくる位相ズレと各ユニットの取り付け位置の差から来る物理的位相ズレの2種類が存在します。

◎電気回路理論に基づきデバイディングネットワーク(パッシブ式)やチャンネルでバイダー(アクティブ式)等で周波数分割時の電気回路においてウーファーはローパスフィルター回路、スコーカーはバンドパスフィルター(ハイパスとローパスを組み合わせたフィルター)回路、ツィーターはハイパスフィルター回路を使います。これらの回路に音楽信号が通過する時に信号のクロス周波数付近で信号の進み・遅れが生じます。これを電気的な位相ズレと言います。クロス周波数域での減衰量により回路が異なる為、位相ズレの値が異なります。クロス周波数を中心に低域側は信号の伝達速度が遅れ高域側は進んでしまいます。

◎ユニットの取り付け位置による物理的位相ズレは、極端に申しますとユニットの位置が異なる事により同一周波数が出た後、空中で干渉し弱めあったり強めあったりして変な音になります。通常、ユニットはエンクロージャーのバッフル板に一様に取付けます。しかしユニットの大小によりバッフル板からボイスコイルまでの距離が微妙に異なりますが、差は数cm以内であり物理的位相合わせは原則、無視してもかまいません。ホーンを使っている場合はかなりの差がでますので無視できません。たとえば、ウーファーとホーン式のスコウカ−で先端合わせしますと、ボイスコイルの音源位置がだいたい20cm〜40cmズレています。これでは試聴位置の耳までの到達時間に差が生じ、より強めあったり弱めあったりして正しい音として耳に届かないからです。

◎位相ズレは極力無くす必要があります。極力と申しますのは、完璧に無くすのはとても難しいからです。通常のマルチスピーカーはオールコーンスピーカーユニットやドームスピーカーユニットの為、同一バッフル板に一様にユニットを取付けたタイプが多く、これらは、ユニットの開口部を音源位置として物理的位相合せを原則、無視した作りになっています。しかし高級スピーカーの中にはユニットのボイスコイル位置を厳密に合わせ位相を一致せる努力をしているエンクロージャーもあります。各ユニットの位置ズレは音色や定位(奥行感)等、微妙に音に影響します。

◎一般的な15万未満クラスのメーカー製スピーカーのネットワークを確認してみて下さい。粗悪品は問題外ですが安物の汎用コンデンサーや細い銅線で巻かれたコイルやケーブルが使われていたりする場合があります。改善する場合は、先にも記しましたが、部品の定数値はそのままに別のオーディオグレード品等に変更してみると良い方向に変化すると思います。使われている部品がどのレベルの物が使われているか、確認するだけで精神的にも安心感を与えます。(粗悪品は、寿命が極端に短く、表記の値と実質値との差も大きく、カタログ通りの性能を発揮しません・・・聞いた事が無いような中国ブランドの部品は要注意)

◎大型のスピーカーのマルチスピーカーは、BOXも大きくネットワークには耐電圧が高い部品が使われる為、ネットワークやエンクロージャーのチューニングは大変でコストも掛かります。しかし、ビシっと決まった時の音は・・・重低音は地鳴りの如く深く沈み、低域は軽やかに弾み、中域はスカーッと晴れ渡りボーカルは口の大きさ・息使いまで見えるようになるでしょう。で、中高域は繊細で情報量が多く、録音時の天井の高さまで聴き分けられ、ベールを1枚も2枚も剥いだ鳴り方を体感できるかもしれません。

◎どんなスピーカーもセッティングを含めた鳴らし方で音が変わってきます。同じスピーカーなのに自分の部屋で鳴らすスピーカーはどうも上手く鳴ってくれないと感じる場合は、まず、お金の掛からない部屋や機器ののセッティングから初めて下さい。部屋の環境の違いや使う機器の違い、その他相性やセッティングに違いが有るように感じます。スピーカーを上手く鳴らす第一歩は、そのスピーカーの能力をできる限り引き出してあげる事が肝心です。もちろん、ユニットやアンプ等を含め機器の性能以上の音は出せません。

◎スピーカーが優秀で評価値を100としますと80のアンプ(高級と言う意味では有りません)では80までしかだせません。ただし、スピーカのノリ白が20あるわけで、スピーカー以前のどこかを改善又は調整すると音がもっと良くなる・・・と、言う事です。・逆に80のスピーカーでは100のアンプを使っても80しか出せません。これは、スピーカー以前のどこをどうしても、80以上にはなりません。つまり、アンプが優秀なら60しかないスピカーを100%鳴らしきり最大値の60の音が出せます。

◎オーディオ好きだがそれ程詳しくないので・・・といわれる方のオーディオシステム(調整を含め)を聴かせていただくと、60〜80のスピカーを70のアンプで鳴らされている気がします。総合評価は60になってしまいます。これはオーディオシステムにおいて音楽信号の入り口から出口までの間で一番低い評価の装置に足を引っ張られた音質になってしまうと言う事だと思います。

◎オーディシステムにおいてどこかをアップグレードして音が良くなる場合、それはアンプかスピーカーかどちらかのポテンシャルが高いと言う事なので、おおいに自慢してください。アンプもスピカーも非常にポテンシャルが高い場合、下手にイジルと全体のレベルが下がってしまうかも?・・・ご注意下さい。




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