U−571

劇場版パンフ表紙 スタッフ
監督・共同脚本ジョナサン・モストウ
共同脚本サム・モンゴメリー/デビッド・エイヤー
制作ディノ・デ・ラウレンティス/マーサ・デ・ラウレンティス
出演者
マシュー・マコノヒー
ビル・パクストン/ハーヴェイ・カイテル/ジョン・ボン・ジョヴィ

 1942年、北大西洋上を作戦行動中のドイツUボートが交戦の結果航行不能に陥った。緊急無線を傍受した連合国は、ドイツの最高機密である暗号生成機、"エニグマ"を奪取する好機であると判断。米国の旧式潜水艦、S−33をUボートに仕立てて救援を装ってエニグマ暗号機強奪作戦を開始する。ダルグレン大佐を艦長とするS−33に情報将校ハーシュ大尉、海兵隊のコーナン少佐を加えたメンバーは首尾よくU−571に遭遇、乗員の抵抗を排除してエニグマ強奪に成功したかにみえたその時、接近していた別のUボートの魚雷によってS−33潜と乗員の大部分が失われてしまう。残ったのは副長、タイラー大尉をはじめとする9人と傷ついた一隻のUボート。最高機密が奪われたことをドイツ側に察知されぬよう、無線封止のまま、彼らは傷ついたUボートで帰還のための戦いを開始する………。

 ドイツの暗号機"エニグマ"については、その名前のヒキの良さ(ギリシャ語で"謎"という意味です)や、現実にそれを手にした英国が、その事をドイツに悟られぬよう、あえて英国の都市を爆撃させたというエピソードなどからたびたび冒険小説のテーマになったりします。個人的にお気に入りなのは、マイケル・バー=ゾウハーの「エニグマ奇襲指令」(ハヤカワ文庫、現在絶版)なんですが、この映画もエニグマネタ。ただしこの映画で語られるのは敵味方の入り乱れるエニグマ争奪戦ではなく、極限状況で戦う男たちの姿。

 昔から潜水艦映画には駄作が少ないと言われますが、これは潜水艦っていう特殊なシチュエーションが、それだけで緊迫感たっぷりの舞台装置になっているってことが大きな理由なんでしょう。密室状態の艦内、しかも外は海。船体が壊れればたちまち浸水して命が奪われるような状態で、なおかつ敵の攻撃まで受けてしまう、って状況を、「潜水艦です」って一言断るだけで全部説明できちゃうってのは、おいしい(^^;)。逆に映画のなかで、潜水艦以外の描写に割かれる時間が長いと、緊迫感がスポイルされちゃうってなデメリットもあるんですけど(「レッド・オクトーバーを追え」がイマイチな理由はこれだと思いますよ)。

 さてこの映画、ハナから極限なところに持ってきて、いきなり熟練した艦長は死ぬわエンジンが半分死んだ状態の潜水艦になっちゃうわ残りの人間はたったの9人だわという、極限に輪をかけた状態の中、今のままでは艦長には不適格、と烙印を押されちゃった副長、タイラーがなんとかリーダーシップを発揮して一人前の男になっていくってお話でありまして、これが面白くならないわけがない。実際面白い。でも抜群に面白いかというと、うーむ(^^;)………。

 潜水艦モノにはお約束の、限界深度を超えた潜航のサスペンス(アメリカの潜水艦乗りがドイツ潜水艦の優秀さに舌をまく、って描写はちょっと笑いました)とか、ワキを渋い名優(大好きなハーヴェイ・カイテルっす)で固めてフレッシュな若手俳優にのびのびやらせる、っていうよくあるパターンの映画造りとか、ちゃんとやってるのになんかこう、イマイチのめり込めないんだよなあ。理由は二つ。

 一つはあまりにも話がウマすぎる、ってこと。もちろん映画なんで、最終的にウマイ話が転がってていいんだけど、そこで「おまえそう話はウマくいかんやろ」って思わせたら敗けだと思うんですよね。で、この映画はどっちかというとそう思っちゃうほうなんですわ。次々と襲いかかるサスペンスを間一髪でかわしていくその流れを理屈抜きで楽しめないんだなあ。微妙なところで「それはちょっと都合よくないか?」って思っちゃうのね(^^;)。

 もう一点はオレの言いがかりに近いもんなんだけど、主役のマシュー・マコノヒー君。"若き日のポール・ニューマン似"なんて評価があるんだけどオレの目にはミハエル・シューマッハにしか見えなくて、シューマッハ→冷静のイメージが働いちゃって、コイツならどんな危機でも平然と乗り切るよなあ、と妙に納得しちゃったこと(笑)。オイルまみれの顔で、目だけがぎょろりと光ってる様子はもうモロ、シューマッハっす。

 CGI全盛のこのご時世に、あえてミニチュアを多用して取った水中シーンとか、やけによくできたS級とUボートVII型Cのセットとか、見所満載でなかなか良かっただけに、もう半歩、頑張って欲しかった。惜しかったなあ、とか思ったらプロデューサーがラウレンティスじゃん。惜しかった最大の理由はもしかしたらこれかもしれん(^^;)

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