タオの月

劇場版パンフ スタッフ
製作渡辺 繁
脚本田中 徹/松本 肇/雨宮 慶太
監督雨宮 慶太

 戦国の世、とある国の山深くから天下盗りをもくろむ謎の修道士、角行。空の彼方から飛来した謎の隕鉄を手にしたときから、彼の野望は際限なく膨れあがってゆく。謎を秘めた強靭な武器の秘密を探り出すべく、麓の領主、忠興の命を受けた武士、疾風と、かつて忠興の配下にあって軍師を務めた道士酔狂は、謎のひそむ宝剣山へと旅立った。同じ頃、宇宙の彼方から密名を帯びた三人の戦士が、密かに同じ宝剣山に降り立っていたのだった………

 雨宮監督最新作。「未来忍者」などと同様の、ありそうでどこにもない戦国時代を舞台にした、異形のものとの闘いを描く作品。CGI、クリーチャーデザインなどの分野ではなんの心配もなく、安心して楽しめる作品。90席程度の小さな小屋で見たんだけど、このサイズの小屋でかかる映画としてはまことにもってうってつけの、コンパクトですっきりしたつくりの映画ではあると思いました。悪くないと思う。でもな、これで1800円とるのはちょっとエグイぞ(笑)。

 雨宮監督らしいっちゃらしいんだけど、ディティールへのこだわりとはうらはらに、最初から最後まで通して見終ったときのストーリーの薄っぺら感が悲しいところ。いくらストレートなアクション映画だからって、もう少しお話にひねりが欲しいです。テーマはあくまでストレートに、しかしそのストーリー展開が波乱万丈、てのがやっぱ楽しい映画なのだと思うのだけどな。

 アクション、とりわけ殺陣の部分にもちょっと不満があります。雨宮作品といえばやる気まんまんのエキストラさん達の大活躍がある意味見せ場といえるのですが、今回の作品ではちょっと空回り気味。時代劇の殺陣ってのは、一見ばらばらに見えててその実しっかりとコントロールされた様式美みたいなものが魅力の一つだと思うのですが、そういう部分が見られなかったのはちょっと残念。もちろんそれに代わる魅力的な殺陣を見ることが出来ればなんの問題もなかったのですけれど、残念ながら一つの見せ場とも言える、この集団での立ち回りが、単なる烏合の衆が右に左にうろうろしてるだけの絵でしかなかったのは、ちょっと悲しかったですね。

れんげのつもりなんだけど、似てねー  演技陣はそこそこの頑張り。泥丸役のジーコ内山氏(どんな人なんでしょう、この方)が、全然映画の世界観とそぐわへんのと、谷啓さんがかなりしんどそうなお芝居だった以外は、悪くなかったんじゃないでしょうか。疾風役の阿部寛さん、「成田離婚」のせいでみょーに笑えてしまって申し訳ない(^^;)。れんげ役の吉野紗香ちゃん、雨宮作品には不可欠の森山祐子さん、やっぱ軍服は似合わんかったなあの永島敏行さん、みなさんまずは破綻のないお芝居だったと思います。蛍雪次朗さんもイイ味(^o^)。

 ただ、お芝居をする人よりも、お芝居を実際にフィルムに残す時点で何か問題があるのではありますまいか。僕は違和感を感じるだけだったけど、いっしょに映画を観た友人の中には「カットが長い」と言い切る人も何人かいて、言われてみると確かにそういう側面はあると思うんですよね。ここで次のカット、ここで一発がつんとSE、ってこっちの気分がことごとく微妙なタイミングで外されちゃって、そこのところの違和感が累積していって、最後の方ではそのズレはずいぶんと大きくなってしまったように思います。

 これが単に雨宮さんの考える映画の流れってものと、僕がそうであって欲しい映画の流れってモノの見解の相違であればいいとは思うんですが、それだけじゃないなにかがあるように思えるんですが考えすぎでしょうか。ちょっとずつの余計なカットが累積して冗長になった部分、それと前述した脚本の部分での詰めの甘さが、せっかくの魅力的なツカミを相殺する結果になってしまったような気がしてちょっと残念。個々の(絵的な部分などに)パートでは大変魅力的な画があっただけに残念です。1200円だったら文句なしだったんですが(^^;)………

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