スパイダーマン

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監督サム・ライミ
製作ローラ・ジスキン
イアン・ブライス
脚本デビッド・コープ
原作(マーブル コミックブック)スタン・リー/スティーブ・ディック
音楽ダニー・エルフマン
キャスト
トビー・マグワイア
ウィレム・デフォー
キルスティン・ダンスト/ジェームズ・フランコ
クリフ・ロバートソン/ローズマリー・ハリス/J・K・シモンズ
公式サイト
http://www.spider-man.jp/

 友達にはバカにされ、好きな女の子には声もかけられない高校生、ピーター。だが、ハイスクールの課外授業で大学の遺伝子研究施設を見学に行ったその日から、ピーターの運命は大きく変貌する。施設で実験中だった遺伝子組み換えによる新種の"スーパースパイダー"にかみつかれたピーターの体には、蜘蛛の持つ特殊な能力が何倍にも増幅されて備わることになったのだ………。

 えー、のっけからなんなんですが、わたしゃどうも"等身大ヒーロー"という存在に心から燃えられない体質でありまして、その分を割り引いて読んでいただきたいわけであります、はい。以下ネタバレが多いんで注意してください。さて。

 何度か映画化の噂がありながらその都度立ち消えになっていたアメリカン・コミックスのスーパーヒーローの一人、スパイダーマン、堂々の映画化。監督はクセ者、サム・ライミ、主役級ははっきり言ってのっぺらだけどその分は脇に回った"プラトーン"のウィレム・デフォーがしっかり締める。視覚効果スーパーバイザーにはジョン・ダイクストラなんてぇ懐かしい名前も。映像的には中途半端な時期に大金かけなくて良かったね、といえるゴージャスなものに仕上がっていると思う。夜景や雨などでなるべく目立たないようにしているけど、やはりCG役者のアクション部分の"軽い"部分は気になるけど、まあこの辺は勢いで。敵も味方も、あのコスチュームには強化や防護の意味はほとんどなく、単なるコスプレだ、ってのはなんだか面白かった。

 お話的にも大きな破綻もなく、決して悪い映画じゃないんだろうと思う。でもこれ、個人的に全く乗れないままエンド・クレジットを見る結果になってしまった。つまらなくはない。でもどこが面白いのかわからん。

 "乗れない"と感じた最重要ポイントは、たぶん敵の造形なんだと思う。アメコミには詳しくないんだけど、昔読んだ何かの本で、スパイダーマンやシルバー・サーファーってのは、自らの存在に悩む、それまでの脳天気なヒーローとはちょっと違う存在なんだ、てなことが書いてあったように記憶してて、そこが今風にどう料理されるのかってところには興味があったんだけど、ここはずいぶんあっさりとした悩みっぷりでしかない。でもこれは予想できてたんでまあいい。SFX大作映画の主人公なんてこんなもんだ。ヒロインがただのバカなわがまま娘なのも許す。大根ヒーロー&ヒロインを脇がびしっと締めてくれればいい。なのになのに。

 敵方のグリーン・ゴブリンになるのがウィレム・デフォーなんだけど、この悪役の設定はかなり魅力的なものだ。究極の悪党と、それなりに善良な人間性を備えた人格が一人の人間の中に収まってて、それが時にせめぎ合い、時にどちらかが優位に立つ、みたいな構造になってて、ここが上手にできていれば悪役にぐっと深みが出るんだけど、残念ながらこの映画でのウィレム・デフォー=ノーマン/ゴブリンはその辺の描写がかなり拙い。デフォー自体の芝居はうまいと思うけど、ノーマンとゴブリンの間の葛藤がもう一つピンとくるものになっていないので、ラストバトルが盛り上がらない。それに続く重要なシーンもなんだかとってつけたようなものになってしまっている。観客が誰を憎めばいいのかわからない映画になっているように思うんだな。

 ついでに、ノーマンがゴブリンになる過程もなんだかうまくない。ノーマンが自らに潜む悪の人格を分離するのは、ノーマンの解雇が告げられた後に来るべきなんではないだろうか?最初の実験は、途中で中止するんだが、ここで初めてノーマンは自分の中のゴブリンの存在に気づく、という伏線に止めておくべきだったんじゃあないだろうか。最初の実験の時点ですでにゴブリンが世に放たれていながら、しばらく何もしない、って流れで妙に収まりの悪いものを感じてしまった。

 さらに言うなら、ノーマンの中にいるゴブリンの存在を、もっと早めに観客に見せる必要があったんではないだろうか。それはもう初登場時に、すでにどうかするとノーマンの中にいるゴブリンが、一時的にせよノーマンを支配しかかってしまう、みたいな描写があっても良かったのではないか。

 その辺がうまくないので、(おそらくパート2では重要な役回りを演じるであろう)ノーマンの息子でピーターの親友、かつピーターが思いを寄せるメリージェーンの現在の恋人であるハリーとノーマンの関係、ハリーを仲立ちにしたノーマンとピーターとの関係とかがもう一つピンと来るものになっていないように思えてしまって、そこで「おいおいピーター、そいつは悪いヤツなんだぜ」って気になれないし、その結果「がんばれスパイダーマン、なんて悪いヤツなんだグリーン・ゴブリンめー!」って気にもなれないうちに映画が終わっちゃったんだよな。

 なんて言うかな、こう、個人的に自分の中のドライブ感をことごとく削がれてしまったというか、そういう感じのする映画でありました。うーむ。

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