宇宙貨物船レムナント6【劇場版】

スタッフ
監督万田邦敏
プロデューサー仙頭武則/金森保
脚本仙頭武則/麻生かさね
総合監修押井守

 2046年、火星より帰還中の宇宙貨物船「レムナント6」、行程の約半分を終え平穏無事に見えた航海に突如として予想もしないアクシデントが発生する。直径わずか一mの小惑星がブリッジを直撃、全システムが不調となり船のエンジンは暴走。このままでは宇宙船は自爆してしまう。居住区にあって小惑星の直撃を逃れたクルーと乗客たちのサバイバルにむけての闘いが始まった………

 もともとはwowwowでの「J・MOVIE WARS」なる一種のコンペティションのために造られた作品で、どちらかと言えばテレビドラマ的なスタンスで造りあげられたもの。最初から「大作」として造られたものではありえないわけで、我々もそんなところを期待していったわけではない。SFマインド、あるいはSF映画マインドとでも言ったものが感じられるかどうか、ってのが最大の興味だったわけであって、そこに限って言えば一応平均点をつけてあげてもいいかな、とは思う。

 ただしこれはあくまで「気持ち」の問題(苦笑)。お金をとってお客さんに見せる映画としたときには少々辛口のコメントをせざるをえないのはご勘弁を、ってところか。

 まずはお話。宇宙空間を航行中の宇宙船を襲ったトラブルからの脱出劇、というシチュエーション自体は悪くない。映画としては意外にやってない分野ではないかと思うし、限られた予算のなかで精一杯の密度を実現しようとしたときに、一種の密室劇仕立てという切り口は正解であろう。見える範囲のセットや小物なども悪くないし、総じて人間のまわりに関してはさほど文句はない。よく限られた予算のなかでそれらしい仕事をしたと思う。

 ただし、人間がらみのお芝居はかなり難あり、といったところだろうか。登場人物がみな非常にエキセントリックな描かれ方をしていて、しかもそれがお話の雰囲気からものの見事に乖離してしまっているように感じたのは僕だけだろうか。火星生まれの男の子がなぜ貨物船の船客でなければならないのか、とか、大和武士扮する護送中の自衛官が犯した「罪」の描き方があいまいだとか、総じてなぜそこにいるべきなのかにちゃんとした説明がされないものだから、「レムナント6」という船の性格までもが曖昧なものになってしまい、もう一つ「ああコイツは大変だ、いったいどうなってしまうんだろう」という気分にさせてもらえなかったような気がするんだな。

 ここらの、登場人物の書込みの妙なアンバランスさ(動機が良く判らないくせに、各登場人物の個性の表現にはやけに時間を割いてたりする)に加えて、密室パニックをどう描くのか、って所に芸がなかったのがあまりにも残念。結局既視感ありまくり(私はひっじょーに、「エイリアン」的なものを感じたんですが、ご覧になった方はどうお感じでしたでしょうか?)の映像に終始してしまったのが残念至極。パニックにどうオトシマエをつけるのか、って部分も、まあありがちだったし………。

 この作品をさして「日本映画史上はじめての本格宇宙SF映画」と呼ぶことに、だから僕はちょっと違和感を感じてしまいます。確かに設定にも考証にもあまりにもひどい破綻のようなものはないのですけれど、なにかこう「な、こうだよなやっぱ宇宙は!」的な造り手側の意識が感じられなかったんだなあ。結局最初に戻ってしまうんだけれど、「SFマインド」というか「SF(トクサツ)映画マインド」に欠ける宇宙SFであったような気がします。惜しいなあ、小粒でぴりりと辛い佳品になる可能性のあった作品なんだけどなあ………

 ところでヒロインの西航宙士役の田村翔子サン(モデル出身だそうでたしかにキレイっす)、なぜ声優さんを使ってるんでありましょうか(^^;)?

D.N.A (Prev)   「来た、観た、書いた」メニューに戻る (Back)   スター・ウォーズ<特別偏> (Next) トップに戻る (Top)